ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 まだまだ残暑、いや酷暑の日々が続いていますが、夏競馬は残すところ、あ…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 まだまだ残暑、いや酷暑の日々が続いていますが、夏競馬は残すところ、あと2週。今週は、秋のGIシリーズ第1弾となるスプリンターズS(10月3日/中山・芝1200m)の前哨戦のひとつ、GIIIキーンランドC(8月29日/札幌・芝1200m)が行なわれます。

 キーンランドCの週というと、例年であれば海外騎手招待レースであるWASJ(ワールドオールスタージョッキーズ)が行なわれていましたが、コロナ禍にあって、今年も昨年に続いて開催中止となりました。

 夏競馬を活気づけるひとつのイベントでもありましたし、WASJがあることでキーンランドCも一段と盛り上がりを見せていました。僕も海外の一流ジョッキーとJRAの一流ジョッキーとの共演を毎年楽しみにしていただけに、開催されないのはとても残念です。でも、現在の状況を考えれば、それも仕方のないことだと思います。

 ところで、こうしたイベントと同様、コロナ禍になってからは短期免許を取得して来日する外国人騎手もいなくなりました。ただ、そうした状況になって1年余り、その間、日本の若手騎手の台頭が目立っているのは、とても明るい兆しではないかと感じています。

 現在は短期免許で来日する騎手がいないとはいえ、今の若手騎手は昔の騎手に比べて、海外の一流ジョッキーの騎乗を目の当たりにする機会がふんだんにあります。おかげで、海外遠征に挑む志の高い騎手も以前より増えています。そうした成果が今、徐々に実っている感じがします。

 コロナが明ければ、再び短期免許を所得して、海外からトップジョッキーがやって来るようになるでしょう。その時、彼らに対して若手騎手たちがどう立ち向かっていくのか、とても楽しみです。

 少し話題が逸れてしまいましたが、キーンランドCの話に戻しましょう。今年はWASJもなく、新潟でも重賞が行なわれるため、トップジョッキーが分散した感があります。クリストフ・ルメール騎手をはじめ、川田将雅騎手、福永祐一騎手といったリーディング上位の騎手は新潟に集結したので、こちらでは名手・武豊騎手に期待が寄せられます。

 つまり、まず注目したいのは、同騎手騎乗のメイケイエール(牝3歳)です。これまでに重賞3勝。2歳時のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)では4着と奮闘しています。

 同レースでは、先週の札幌記念を勝った1着ソダシからコンマ2秒差、のちにオークスを制す3着ユーバーレーベンからコンマ1秒差。能力だけなら、世代屈指の存在だと見ています。

 しかしながら、前向きすぎる、走ることに一生懸命すぎる気性が災いして、折り合いが極めて難しい馬です。前走のGI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)でもどんな走りをするのか注視していましたが、案の定、鞍上が抑えきれずに3コーナー過ぎには一気に先頭へ。最後は失速して最下位に敗れてしまいました。その走りを見て、「マイルの距離でさえ、すでに対応するのは厳しいんじゃないか」と思いました。

 桜花賞では、武豊騎手の負傷によって、横山典弘騎手が乗り替わりで騎乗。馬具もこれまでつけていたものを外すといったアプローチをしていました。それが今回は、主戦の手に戻って、実績のある短距離戦となります。

 個人的には新潟・芝1000m、いわゆる「千直」のレースを使ったほうがいいんじゃないかと思うほど、コントロールの難しさを感じていますが、ひとまず、マイル戦からスプリント戦へと条件が替わることでの変わり身に期待したいです。

 ただ、内枠(3枠5番)を引いてしまったのは、若干の不安があります。こんな気性ですし、1200mを主戦場としてきた馬たちとテンのスピード争いをした場合、内でごちゃつく可能性がありますからね。こうなると、久々の距離で能力開花に期待しつつも、再び凡走に終わってしまう怖さも感じています。日本競馬の第一人者である武豊騎手の手腕に、ますます頼るしかありません。

 他に上位候補を挙げるとすれば、ミッキーブリランテ(牡5歳)。年明けのオープン特別・ニューイヤーS(1月9日/中山・芝1600m)を勝って以降、どんどん調子が上がっている印象を受けます。短い距離にシフトして、慣れが見込めるのも大きいです。

 管理するのは、今をときめく矢作芳人厩舎。矢作厩舎と言えば、レースを数多く使う傾向にあって、実際に使っていくごとに成長している馬が多いです。

 ミッキーブリランテも今年に入って6戦目。その中で、3走前のGI高松宮記念(3月28日/中京・芝1200m)こそ10着に沈んでいますが、初めてのスプリント戦で、さらに大外枠だったことを思えば、悪くない内容でした。1200m戦に臨むのも今回で3度目。勝ち負けを演じてもおかしくないと思っています。



現在3連勝中と勢いのあるレイハリア

 さて、今年のキーンランドCの「ヒモ穴馬」にはレイハリア(牝3歳)を取り上げたと思っています。

 僕も度々勝敗のポイントに挙げていますが、レースにおいては、やはり斤量の差というのは大きいもの。特に短距離戦ではなおさらです。そして今回、3歳牝馬のレイハリアは51kgという軽量で臨むことになります。古馬牡馬の斤量は56kg~58kg、古馬牝馬は54kg~55kgですから、この斤量は相当な魅力です。

 加えて、目下3連勝と勢いがあります。初勝利はダート戦でしたが、どんな条件であろうと3連勝というのはそう簡単にできるものではありませんし、同世代が相手とはいえ、前走で重賞・葵S(5月29日/中京・芝1200m)を快勝した実力は無視できません。

 鞍上は3年目の亀田温心騎手。勢いある3歳馬と若手騎手というフレッシュなコンビによって、思いきりのいい競馬を貫くことができれば、初の古馬相手でもヒケはとらないでしょう。一発あるか、楽しみです。