7月17日からプロ野球は東京五輪開催によりシーズン中断となった。この日、ヤクルトの一軍選手たちは14時から戸田球場で汗…

 7月17日からプロ野球は東京五輪開催によりシーズン中断となった。この日、ヤクルトの一軍選手たちは14時から戸田球場で汗を流していた。戸田での練習は7日間にわたり行なわれ、強く印象に残ったのが39歳の青木宣親だった。

 練習初日。13時過ぎに球場を訪れると、青木はすでに早出のティー打撃でバットを振り込んでいた。それを終えると、今度は一塁ベンチ前からライトのポールへ向かってのロングティー。青木のロングティーは、シーズン中ではまず見られない光景である。

「前半戦でよくなかったところを潰しているようにと思ってやっています。やっぱり遠くへ飛ばそうと思ったら、バットを強く振ることが大切になってくるので......。この7日間をいい時間にしたいですね」



戸田での7日間、黙々とバットを振り続けたヤクルト青木宣親

 チーム練習が終わり、スタッフが打撃ケージを片づけていると、バットを手にした青木は「もう終わり?」と尋ねた。

 青木は居残りでフリー打撃をしたかったようだが、仕方なくティー打撃で打ち込みを始めた。ただ、いつもの芸術的なティー打撃とは違い、歯を食いしばりながら力の限り振り込んでいた。終わると両ひざに手をつき、「ハァハァ」と息切れしている姿は、ひたむきな若手選手のようだった。

 2日目の練習は朝9時からのスタート。だが青木は8時過ぎにやって来て、ティー打撃とロングティーで汗を流していた。

「朝は6時に起きています。球場に早く来ることは苦じゃないし、朝のほうが気温も低く練習しやすいですから」

 この日のチーム練習は、時間の多くをフリー打撃にあてた。打撃ゲージからおぼつかない足取りで青木が出てくると、高津臣吾監督は「おいおい」と笑う。青木は「朝からやっているので」と笑顔で返した。

 練習3日目。午前8時前、外野でポール間走をしている選手がいるなと思ったら、青木だった。30分ほど走り込み、その後はストレッチ、腕立て、腹筋と、体をいじめ抜いた。

「ちょっとキャンプっぽいですけど、普段やれないことができますよね。(内野ノックを受けたことについては)ひざを曲げて、腰を落とす動作をすることで下半身の強化につながります。そういう意味では、なにかきっかけとなるものを探せる時間でもあります。シーズン中は試合に出ながらなので、それをするにはリスクがある。オーバーワークでケガをすることのほうがよくないですからね」

 チーム練習が始まると、青木はこの日も鬼気迫る表情でバットを振った。チームメニューを消化しても、「打てる場所はないか」と探して歩く。宮出隆自ヘッドコーチは、そんな青木の姿に「まだ打つの?」とあきれた表情で笑う。

 宮出ヘッドは、今回の中断期間についてこのように語った。

「この1カ月はすごく大事だと思っています。ベテランやレギュラーの選手たちは、しっかりリフレッシュしてもらいたい。逆に試合に出ていない選手はしっかり練習して、彼らを追い抜けるようになってほしいと思っています」

 青木にとっては、猛練習で自らを追い込むことが最高のリフレッシュなのだろうか。

 4日目も8時前の30分のポール間走から始まり、ストレッチと強化トレ。チーム練習では"修行僧"のごとくバットを振り続けた。チームメニューを消化した後は、自主練としてロングティーを行なった。

 ロングティーを眺めていると、ほとんどの打球が高い放物線を描いてライトポールに集まっていく。トスをあげる杉村繁打撃コーチが何度も「おぉー」と声を出すほどで、自分のイメージする打球を実現できているのではないか。

「まだ自分の納得いく打球ではありませんが、後半戦で勝負をかけられるように、そこでチームの力になれるようにとは思っています」

 グラウンドの気温が40度近いなか、練習時間のほとんどをバッティングに費やした。

 5日目、6日目も8時前にやって来て、30分のポール間走にストレッチ、強化トレで汗を流した。ちなみに今回の戸田での練習では、ほかにも石川雅規、内川聖一、新外国人のホセ・オスナがランニングする姿もあった。

 松元ユウイチ打撃コーチに「青木選手や石川選手は朝が早いですね」と言うと、こんなことを教えてくれた。

「若い選手たちも、朝は寮にある室内練習場でやっていますよ。練習後も、室内でバントなどの小技やフリー打撃、ショートゲームなど、みっちりやっています」

 最終日は、チーム練習の開始時間が1時間繰り上がって8時となった。さすがに今日はないだろうと思っていたのだが、青木は7時には球場に現れ、いつものようにポール間走を始めた。

 そんな青木に、充実した日々を過ごせたのではないかと聞くと、「安易に充実しているとは言えないですね」と言って、こう続けた。

「やりたかったことができたので、そのあたりのストレスはありませんが、あくまで試合で結果を残せるかどうかなので......」

 8月13日、ついにプロ野球が再開した。現在、ヤクルトはセ・リーグ3位、首位の阪神とは2ゲーム差と優勝を狙える位置につけている。青木は残り60試合の戦いについてこう語る。

「開幕した頃と比べると、チームのプレーの質はすごく上がっています。そこを自信にしながら成長していければと思っています。それと同時に、プレッシャーのかかることが増えています。その時に気持ちがブレないように、迷わないように、そして自分を疑わないことがすべてにおいて大切だと思います。

 個人的な部分では納得できる成績を残せていないので、そこのストレスはあります。チームが勝つことはもちろん大事なのですが、自分がやられることはやっぱりつらいことですから。後半戦、しっかりチームに貢献することが重要だと思っています」

 戸田での7日間の猛練習をどんな形で表現してくれるのか。青木のバッティングへの期待は膨らむばかりである。