「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#20「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカ…

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#20

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。多くのプロ野球選手も加入するパフォーマンスオンラインサロン「NEOREBASE」主宰、ピッチングストラテジストの内田聖人氏は今大会、投手の“球”を独自に解説。金メダル獲得を目指す侍ジャパンは25日に壮行試合第2戦・巨人戦(楽天生命)に5-0で勝利。6投手で完封リレーした投手陣から9回に登板し、1イニング2奪三振と完璧に抑えた守護神候補・栗林良吏投手(広島)の武器、フォークについて分析する。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 まさに圧巻の内容でした。栗林投手はカーブ、カットボールの質も高いですが、ストレートとフォークが圧倒的に良い。短いイニングで同じ打者と何度も対戦するわけではないので、一番良い球、相手にとって打ちづらい球を投げるという観点から見てもストレートとフォークは軸になります。

 2つの球種について見ていくと、ストレートは前日の壮行試合(楽天戦)で取り上げた森下暢仁投手(広島)と同じくホップ成分が高い印象。なおかつ、綺麗な縦回転。しっかりと胸を張り、そこから体を(一塁側に)傾けていく。

 珍しいのはアウトステップ気味であること。それを利用しながら、アームアングルを上げている。今はまっすぐのステップか、あるいはインステップ気味の投手が主流。アウトステップはそれだけで、打者の目線も変わってくるかもしれません。

 通常、アウトステップにすると右投手は重心が一塁側に逃げがち。しかし、栗林投手の場合はまっすぐに体重を乗せながら、リリースに力を加えている。その時点で、特殊な軌道を作り出している印象です。

 一方、フォークは“強いフォーク”。国際舞台でもとても有効になり、三振が取れる球になると期待しています。繰り返しますが、カーブ、カットボールの質も高いので、これらをたまに投げ、頭に置いておくだけで打者にとっては嫌なもの。

 ジャイロスピンとサイドスピンのハイブリッド系で、個人的には一番好きなフォークです。目立つのはやはり落差。分かっていても打てないフォークは何かと考えると、こういうフォークなのではないかと思います。

社会人時代の経験を糧に「こういう一発勝負の戦いで生きてくる」

 今、私も栗林投手に似たフォークを投げていますが、何よりも球速が違う。フォークで140キロ級というのが、プロ野球選手の凄さ。大谷翔平投手(エンゼルス)、山本由伸投手(オリックス)は150キロ近く出ます。

 その要因は大谷投手の出現が間違いなく大きい。人間、見たものを真似しようとする能力を潜在的に持っている。プロ野球選手ですら、そうやって限界を伸ばしているので、トップを目指す子供たち、中高生もこの五輪を大切にしてほしい。

 せっかく日本で行われる機会。世界から普段なかなか見ることのない国や選手を身近に感じられる。日本代表に限らず、いろんな投手に興味を持って見てみると、たくさんの発見があるはずです。

 余談になりますが、私もJX-ENEOSという社会人チームでプレーしていた身としては、同じ社会人出身である栗林投手は気になる存在。

 トヨタ自動車という「超」の付く名門チームで、一発勝負の都市対抗に出場している投手。企業を背負って負けたら終わりという戦いはプロ野球にはない魅力。甲子園ともプレッシャーは異なり、こういう一発勝負の戦いでは必ず生きてくる。

 プロ1年目から侍ジャパンに選出され、東京五輪に出場する。社会人時代の経験も生かし、日本のために活躍してほしいと思います。

■内田聖人 / Kiyohito Uchida

 1994年生まれ。早実高(東京)2年夏に甲子園出場。早大1年春に大学日本一を経験し、在学中は最速150キロを記録した。社会人野球のJX-ENOEOSは2年で勇退。1年間の社業を経て、翌19年に米国でトライアウトを受験し、独立リーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。チーム事情もあり、1か月で退団となったが、渡米中はダルビッシュ有投手とも交流。同年限りで指導者に転身。昨年、立ち上げたオンラインサロン「NEOREBASE」は総勢400人超が加入、千賀滉大投手らプロ野球選手も多い。個別指導のほか、高校・大学と複数契約。自身も今年自己最速を更新する152キロを記録。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)