魔裟斗インタビュー 後編 中編から読む>>引退後のキャリア形成と現在の活動 2009年の大晦日のアンディ・サワー戦後に現…
魔裟斗インタビュー 後編 中編から読む>>
引退後のキャリア形成と現在の活動
2009年の大晦日のアンディ・サワー戦後に現役を引退した魔裟斗は、解説者をはじめ、さまざまなメディアで活躍を続けている。今年3月からはYouTubeチャンネルを始め、現役時代の話や、格闘技という枠を越えたさまざまな選手や識者との"コラボ"で情報を発信している。
インタビューの後編では、YouTubeチャンネルでも共演した朝倉兄弟の印象、引退後のキャリアに大きな影響を受けた故・野村克也さんとのやりとりなどを明かした。

現在はYouTubeチャンネルなど幅広く活躍する魔裟斗
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――今年の3月に『魔裟斗チャンネル』と武蔵選手との『ムサマサ!』を開設するなど、YouTubeでの活動を始めましたが、どんなきっかけがあったんですか?
「武蔵さんとは、コロナ禍になる前は年に何回か食事をしていて、昨年の3月くらいに『(YouTubeチャンネルを)やってみようか』という話をしたんです。『ムサマサ!』では武蔵さんがよく喋って、僕がそれに対してツッコミを入れる、という形になっていますが、普段の会話とあまり変わらないですね(笑)。
主にK-1や格闘技のことを話していますが、最近ではネタが尽きてきて......。『魔裟斗チャンネル』のほうも含めて、これからは挑戦系の企画なども考えて、自分も楽しめるものにしていきたいです。今の僕の活動はすべて趣味の延長線上のもの。格闘技の試合の解説、体を鍛えること、YouTubeの活動もそう。好きなことだから自然体で、無理してやっているという感覚がないんです」
――現在の生活のリズムは?
「夜の10時には寝て、朝5時には起きています。仕事の有無によって変わりますけど、朝イチで犬の散歩をして、子供たちを起こして学校に送って。それで10時頃からトレーニングをして、午後は家事をしたり、子供を迎えに行ったりという感じかな。YouTubeチャンネルを始めてからは、前ほど時間はなくなりましたけどね」

引退後の野村克也さんとのやりとり、今後の展望などを語った
――YouTubeならではの活動などは?
「ユーチューバーは"コラボ"が多いですけど、僕もGACKTさんなど、これまで会うことがなかった人たちの話を聞くのは新鮮ですね。格闘家の中では、普段から交流がある武尊ともコラボをしましたが、朝倉未来・海兄弟とも一緒にやりました。その兄弟、特に兄の未来くんのことは個人的にいろいろ気になっているんです」
――どのような点が気になっているんですか?
「弟の海くんは、科学的な最先端のトレーニングを取り入れたり、格闘技に対する理解が深い。一方の未来くんは、『昔の自分を見ているようだな』と思うところがあって。僕も現役時代の初めのほうはそうだったんですが、自己流でトレーニングをやってきたから、知識が不足している印象がありました。格闘技へのアプローチだけではなく、性格などもそうですね。
未来くんとは4月と、6月の『RIZIN.28』で負けたあとに食事をする動画を配信しましたけど、今まさに格闘技に目覚めていることが伝わってきた。悩むこともあるだろうけど、今まで自己流でやっていた分、伸びしろも大きいだろうし、どんどんよくなっていくはず。個人的に、今後にすごく期待している選手です」
――YouTubeを始める前から、魔裟斗さんはメディア出演や解説者として活躍されていました。伝える力が高いと感じるのですが、それはどこで養われたんですか?
「僕の中で一番大きかったのは、野村克也さんとの出会いでした。引退して間もなく、TBSの『S☆1』というスポーツ番組で、2年ほど共演させてもらったんです。もともと僕は巨人ファンで、もちろん野村さんのことは知っていましたが、詳しくは存じ上げていなくて。ただ、先入観がなかった分だけ、その2年間で『本当にすごい人だ』ということが見えてきました」
――具体的にはどのような部分でしょうか。
「監督を辞めたあともメディアへの露出が多く、野球人の中で野村さんほど"言葉"を求められた方はいないと思うんです。その点について直接聞いたことがあるんですが、選手を引退したあとに、『聞いている人にわかりやすい伝わり方を、いろいろ勉強した』と。もともと話すのが上手だったわけではなく、視聴者、読者への言葉の伝わり方を勉強したそうなんです。選手としても監督としても偉大な実績を残した方なのに、それだけの勉強をしていたことが大きな驚きでした。それで僕も勉強を始めたんです」
――野村さんから影響を受けていたとは意外でした。
「その2年間では"大人になる教育"も受けました。当時、僕はピアスをしていたんですが、野村さんに『お前はピアスなんかして』と毎回のように言われて。今思うと、『いい大人になって、人前に出る仕事をしているのにピアスをしているのはおかしいよな』と理解できますが、当時は素直に受け入れられなかった部分もありました。正直、最初は『この人は何を言ってるんだろう』とも思いましたが、野村さんは『チャラチャラした部分に厳しい見方をする人もいる。それはお前にとってもったいないことだ』と根気強く伝えてくれて、意識が変わっていきました。
そういった当たり前のことを言ってくれる人が、当時の僕の周りにはいなかった。野村さんには、解説者としても人間としても、大きな影響を受けました」
――現在、魔裟斗さんが解説者として意識していることは?
「格闘技を知らない人に、どうやったらわかりやすく伝えられるか、ということです。専門的な知識をただ口に出すのではなく、自身の経験からその場面に即したことを、シンプルに伝える。解説の仕事では、それがもっとも大事だと思っています。それもやっぱり野村監督から学ばせてもらいました。選手のうちはうまく喋れなくてもいいと思うんです。でも、現役を離れて40歳を過ぎても『ただかっこよくいたい』というだけでは、仕事の依頼はこないですから」
――今後、格闘技界にどのように関わっていく、といったプランはありますか?
「スタンスは今のままだと思います。無理に格闘技関係の仕事を広げていくこともしないでしょうし、試合の解説も頼まれればやる。そうでなければ自分の興味があることをやっていく。そういう生き方は今後も変わらないと思います」
■魔裟斗(まさと)
1979年、千葉県生まれ。1997年に全日本キックボクシング連盟での試合でプロデビュー。2003年の『K-1 WORLD MAX』で日本人初のK-1世界チャンピオンになり、2008年に2度目の王座を獲得。翌2009年12月31日の試合を最後に引退した。その後は格闘技だけでなく幅広いジャンルで活躍。2021年の3月には『魔裟斗チャンネル』と、武蔵との『ムサマサ!』を開設した。