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日本代表が強豪国と戦う時(最終回)~アフリカ勢
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 アフリカ勢の雄大なパワーと爆発的スピードは、日本人にとって規格外だ。

 Jリーグではかつて、ガンバ大阪のFWとしてカメルーン代表パトリック・エムボマが旋風を巻き起こしている。人並外れた身体能力でディフェンスをなぎ倒し、ボールをネットに突き刺した。得点王に輝いただけでなく、半ば社会現象になった。

 また、柏レイソルのケニア代表マイケル・オルンガも2020年シーズン、センセーションを起こしている。裏に抜け出すスプリントと長い手足を生かしたボールコントロールは傑出。相手ディフェンスはほとんど無力で、得点王、MVPを勝ち取ったのも納得だ。

 日本サッカーはアフリカ勢に太刀打ちできるのか?

 じつは日本代表のアフリカ勢との過去の戦績は、決して悪くはない。

 例えばワールドカップでも対戦経験のあるチュニジアとは4戦全勝で無失点。カメルーンとは3勝2分けで無敗、コートジボワールとも3勝2敗と勝ち越し、セネガルには2分け2敗と負け越しているが、引き分けたロシアワールドカップで勝ち上がったのは日本だった。ワールドカップでの対戦経験はないナイジェリアにも2勝1敗1分けで、やはり勝ち越している。

 勝率の高さは、日本に招いての試合が多いことも関係しているだろう。ただ、その戦いを見てみると、日本人がアフリカ勢に劣っているわけではないことがわかる。パワーとスピードで後れを取ったとしても、戦術的に持ち味を消すことで十分に対処できる。



南アフリカW杯初戦でカメルーンを破った日本代表の長友佑都

「アフリカサッカーが世界を席巻する!」

 1990年のイタリアワールドカップで、カメルーンが前回王者アルゼンチンを撃破するなどして史上初のベスト8に勝ち進んだ当時、メディアでは盛んにそう書き立てられた。しかし、すでに30年が経っているが、ワールドカップでベスト8に進んだのは、2002年のセネガル、2010年のガーナの計3チームだけ。世界を席巻する気配はない。

 ユース年代のアフリカ勢は、たしかに出色の強さを誇る。五輪では、1992年にガーナが銅メダル、1996年にナイジェリアが金メダル、2000年にカメルーンが金メダル、2008年にナイジェリアが銀メダル、2016年にナイジェリアが銅メダルを獲得している。

 アフリカの選手たちは戦術的な練度の低さに課題があるのだろう。例えば、組織に対する意識が希薄で好き勝手にプレーしてしまい、流れを修正することができない。ヨーロッパのクラブでは他の選手にカバーされて目立たないが、彼らだけになるとゲームマネジメントの拙さが出るのだ。

「日本人が勝利するには、数的有利を作ること」

 2010年の南アフリカワールドカップ、日本の選手たちはそう割り切って、サミュエル・エトーを擁するカメルーン戦に挑んでいる。身体能力の高い相手を封じるため、FWまで自陣に戻ってプレスバック。攻められる時間は長かったが、相手にスピードを使わせず、攻め疲れしたところ、カウンターで右サイドからの松井大輔のクロスを本田圭佑が沈めた。辛抱強く戦い、組織力で上回った。

「メンタル面の準備として、まずはネガティブなことは考えないように」

 カメルーン戦に向けて、長友佑都が語っていた言葉は啓示的である。

「(ワールドカップ前の強化試合)ガーナ戦は印象的で。自分のハンドでPKを与えてしまい、今までなら弱気の虫が出てきて、"やばい俺のミスだ"と最後まで引きずっていたんでしょうけど、ボールをセンターサークルに戻す時には、もう気持ちは切り替わっていました。それで、アグレッシブに楽しんでプレーできて。エトーのような世界一の選手と対戦できると思い浮かべると、心の底から湧き上がる興奮を感じるんですよ。人生の中でこれほどのチャンスはないし、やるからには楽しまないともったいない」

 恐れずに挑めるか。怯まず、あきらめず、楽しんで戦えたら、活路は開ける。心理戦で勝つことが肝要だ。

 アフリカの選手は、メンタルコントロールが不得手だと言われる。闘志は感じさせても、リードが広がると試合を投げてしまうところが多々ある。すぐに心が折れ、「最後まで戦い抜く」という粘り強さがない。誤解を恐れずに言えば、アフリカの選手は無垢すぎるのだ。

 冒頭にエムボマとオルンガを例に出したが、2人はJリーグで大暴れしたものの、欧州では特筆するような記録を残せていない。その身体能力は規格外だが、戦術的な対応を受けると、長所を封じられてしまう。例えばオルンガはスペイン2部時代、ハットトリックでデビューしたにもかかわらず、プレーを研究されたことによって、得点はそれのみでシーズンを終えているのだ。

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 一方で、日本がアフリカの洗礼を浴びた試合もある。

 2014年のブラジルワールドカップ、日本はコートジボワールと開幕戦を戦った。本田が先制ゴールを決めて幸先は良かった。ところが62分に満を持してエース、ディディエ・ドログバを投入されると、完全に後手に回る。単純なハイボールに戦慄が走るほどで、ずるずる下がって攻撃を浴びた。戦術的対応ができず、64、66分とクロスを放り込まれ、一敗地にまみれている。

「取られ方が悪く、(戦術的に)悪循環になった。メンタルの問題で、相手をリスペクトしすぎた。自分たちのスタイルを出せなかった」

 本田は敗因をそう語っていたが、"自分たちらしさ"に胡坐をかいた瞬間、アフリカンパワーに打ち砕かれたのだ。
 
 アフリカのチームは試合ごとに全く違う顔を見せる。

 東京五輪男子サッカー開幕戦で、日本は南アフリカと戦う。今や日本は欧州で経験を積んだ選手が多く、恐れる必要はない。その勝利で、史上初の金メダルへの口火を切れるだろか。