男子イラン代表を迎え宮城県・岩手県で行われた『バスケットボール男子日本代表国際強化試合2021(宮城大会/岩手大会) …
男子イラン代表を迎え宮城県・岩手県で行われた『バスケットボール男子日本代表国際強化試合2021(宮城大会/岩手大会) International Basketball Games 2021 in MIYAGI / IWATE 東日本大震災 10 周年復興支援大会』は、6月27日の第3戦で日本がイランに対し76-50で快勝を収め、幕を閉じた。FIBA世界ランキングでは格上のイラン(23位)に対し、日本(同42位)は2勝1敗と勝ち越し。さらに上位のチームを相手に戦おうという今、大いに勇気づけられる内容だったのではないだろうか。
両チームのプレーで引き締まった展開となった今大会は、男子日本代表にとっては東京オリンピックに向けたメンバー選考終盤における重要なステップ。登録された15人のプレーヤーも、それぞれが高いレベルのパフォーマンスを披露していた。

得点は3にとどまった富樫だがアシストはゲームハイの9。プレーメイクで勝利に大きく貢献した(写真/©JBA)
第3戦は終始日本がリード
第2戦で登録を外れた金丸晃輔(シーホース三河)、竹内譲次(アルバルク東京)、安藤誓哉(同)が田中大貴(アルバルク東京)、シェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)、比江島 慎(宇都宮ブレックス)に替わって出場した日本は、スターターに富樫勇樹とエドワーズ ギャビンの千葉ジェッツコンビ、竹内(譲)、そしてシューターの安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)と金丸を起用した。ティップオフ後、最初のディフェンスではイランにインサイドを攻められキックアウトから良い形で3Pショットを放たれたが、外れたリバウンドをエドワーズががっちりつかむ。続くオフェンスでは、安藤とエドワーズがうまく連係してペイントに攻め込んだ。安藤からのパスを受けたエドワーズは、ファウルを誘いながら先制レイアップ。良い立ち上がりだった。
何気ない最初のポゼッション。しかし、相手に少々インサイドを攻められても動じずこぼれ球をきちんと拾い、攻めてはガードとビッグマンが落ち着いた連係の中で得点機を作るというこの日の流れが集約された攻防だったように思う。前の試合では田中が「試合の入り方で、アグレッシブにやって来る相手に対し受けてしまった」と話していたが、この日は日本代表の方がアグレッシブな入り方をできた。
結果的に、その後一度もリードされることなく、日本は40分間を戦い切る。ペイントでの得点は16-20と若干上回られたが、リバウンドは39-38で逆に日本がわずかに優位。ゴール近辺におけるこの奮闘は、セカンドチャンスでの得点で12-7、速攻からの得点でも15-8と日本にプラスとなる副産物ももたらした。
3Pショットは、オフェンスのリズムを失い約6分間得点できなかった第3Qに1/9と確率が落ちたが、その他の3つのクォーターでは14/31で成功率45.2%。前述のようなきちんとペイントを攻略していくハーフコート・オフェンスから、オープンルックで効率良く決めることができた。
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イランとの第3戦、張本は3Pショット5本中4本を沈め15得点を奪った(写真/©JBA)
ベンチも一体となり悪い流れを食い止める
悪い流れに飲まれた第3Qは反省材料で、フリオ・ラマスHCは「あの時間帯だけはイランにやりたいことをさせてしまいました」と話している。42-22と日本が20点リードして始まったこのクォーターは、残り4分11秒に張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)のパスを受けたロシター ライアン(宇都宮ブレックス)がフリースローを得、2本決めるまで無得点。その間イランに10-0のランを許した。
日本はベンチが動き、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)に替えて富樫を、ロシターに替えエドワーズを投入。イランは残り2分45秒にナビド・レザイファルの3Pショットが決まった時点で44-39と5点差まで詰め寄るが、直後の残り2分36秒に張本がお返しの3Pショットで悪い空気を吹き飛ばし、以降は流れを引き戻していくことができた。
「一試合を通して理想的な展開が常にできるとは思いません。3Pショットが確率良く決まるときも、ミスが増えてしまうときもあるものです。そうした時間帯には我々が反応しなければ」と話したラマスHC。この日は張本、富樫、エドワーズの投入が打開策となった。「できるだけ早く、その時間帯から抜け出せる策を講じたいものです。今日は何とか抜け出せました」
悪い状態から抜け出す糸口となり、また第4Qにもさらにイランを突き放す3Pショットなどタイミング良く貢献した張本は、この試合でゲームハイとなる15得点。3Pショットは5本中4本の成功率80%で、これも成功数と成功率がともにゲームハイだった。
「合宿前のミーティングで、海外組の合流時点までに日本にいるメンバーでどれだけ戦えるかが鍵だから、成長の跡を見せるようにとラマスHCから求められていました」と張本は試合後の会見で話した。「FIBAワールドカップ2019からはガラリと変わって、激しいディフェンスから速いオフェンスの展開など、自分自身としては成長したなと思います」との言葉に、チームと張本自身に対する自信が感じられた。
“帰化特別枠”にかなうあと一人
イラン代表は、初戦においては男子U22代表との交流戦翌日ということもありコンディションが悪かったことも推察されるので、85-57で勝利したこの試合の結果にはアスタリスクをつけておくべきだろう。また、以降の2試合で日本がイランを平均66.0得点に抑え、通算でも2勝1敗と勝ち越したとはいえ、今回はいずれの試合も本来1人しか登録できない帰化枠のロシターとエドワーズが代わるがわる出場できるローカルルールだった点も、注記しておかなければならない。ただ、今夏の男子日本代表が、張本が実感しているように成長を遂げているのは間違いない。
やや脱線するが、彼ら二人が頑張っている試合を見るたびに、二人を帰化枠として別物扱いしなければならないことへの、何とも切ない気持ちを膨らませているファンも多いのではないだろうか。「二人とも残れたら一番ハッピーなんだが…」という感情だ。ルールや経緯を承知していても、コート上の二人はすっかり日本代表の中心的プレーヤーとなっている。
どちらも人柄も良く、日本のために獅子奮迅の活躍。どちらも欠かせないのに、一人は去らねばならない。それだけに、どちらが最終ロスター入りするとしても、そのプレーヤーと、落選したプレーヤーに代わってロスター入りする日本国籍のプレーヤーには、責任と誇りが求められると思う。それが最後の12人に、想定以上の力をもたらす感情を生み出すかもしれない…。
話を男子日本代表の成長ぶりに戻すと、アジアカップ2021予選で中国相手に互角の勝負をできたのがその第一の兆候だ。そしてイランとの3試合では、帰化枠の特例一人に代わる日本国籍の人材一人さえメドがつけば、国内組だけでも世界ランク20位前後、あるいはそれ以上の強豪とやり合えるだろうことが感じられた。
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Bリーグ屈指のショットメイカー金丸の活躍
国内組の成長という意味では、金丸がこの日の試合後に語った、自身の3Pシューティングについての考察も興味深かった。3試合戦ったフィリピンでのアジアカップ2021予選では、15本のアテンプトで10本を成功させ66.7%の驚くべき高確率。続く今回のイラン代表とのシリーズでは2試合に出場し、12本のアテンプトで6本成功の50.0%と、これも好成績だ。
両大会での成功率は、Bリーグ2020-21シーズンにおける46.6%を上回っている。仮にAからEまでの5段階評価をするなら、A+をつけられる数字ではないかと思う。
金丸は「代表ではキックアウトからのノーマークで打っているのが大体なのに対し、Bリーグはマークがいても打っていました」と話し、プレーの質の違いを要因に挙げた。これは、目的意識を持った日本代表のハーフコート・オフェンスが、多くの場合で機能している証しだろう。しかし、かと言って上記のような個人成績が簡単に達成できるものでもない。
アジアカップ2021予選最終戦後、中国代表のドゥー・フェンHCは金丸を要注意プレーヤーとして挙げていた。相手には金丸を抑えたい意思があったのだ。ところが金丸の方は、対イラン最終戦後の会見で「あまり代表に参加できていなかったので、(国外チームに)知られていないという思いがありました。だからノーマークで打てたのかなと」という感触を明かしていた。相手が意識してプレッシャーをかけようとしていたにもかかわらず、それをさほど感じることなく3Pショットを打てていたのだ。
金丸のケースは、Bリーグで実績を残そうとした努力の成果が代表活動でのレベルアップにつながった好例のように思う。また、これは金丸だけではないだろう。この日9アシストを挙げた富樫も、要所でペイントに切れ込み自らの高いフィニッシュ力を印象づけた安藤誓哉(アルバルク東京)も、その好例に違いない。
Bリーグが成熟してくるとともに、それに伴って個々のレベルアップが進んでいる。その結果いつの間にか、日本代表が世界レベルにかなり近づいてきた。こう書いたら買いかぶりすぎか?
そうかもしれないが、マラソンに例えれば、トップグループの背中くらいは見える位置まで追い上げてきたと思う。そんな感触を得られたイランとの3連戦だった。
ペイントで脅威となれる安藤(誓)のようなガードの存在も重要だ(写真/©JBA)
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取材・文/柴田 健(月バス.com)
金丸のショットメイカーぶりは代表活動でより凄みを増してきた(写真/©JBA)
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(月刊バスケットボール)