53試合終了時点で打率.207、7本塁打──。※成績は6月27日現在(以下同) 高卒4年目の今季、日本ハムの清宮幸太郎…
53試合終了時点で打率.207、7本塁打──。
※成績は6月27日現在(以下同)
高卒4年目の今季、日本ハムの清宮幸太郎が記録している打撃成績だ。しかもこれは、一度も声がかかっていない一軍ではなく、二軍でのものである。
「1年目から見ていても、バッティングにそれほど変化は感じないですね」
古巣・日本ハムの二軍監督を2017年まで務め、現在は解説者として活動する田中幸雄氏は声を落とした。テレビ中継の解説で日本ハムの二軍も担当する同氏は、清宮の現状をこう見ている。
「ボールをしっかり捉える確率が足りません。フォームに課題があり、自分が打つべきボールのチョイスもうまくいっていない。体のキレ、バットスイングのスピードも物足りないですね」

今シーズン、いまだ一軍出場のない日本ハム・清宮幸太郎
2017年ドラフトで清宮は高校生史上最多タイの7球団から1位指名され、くじを引き当てた日本ハムでは1年目から53試合に出場。2年目以降は81、96試合に起用されたが、いずれも打率2割前後に終わった。そして迎えた今季、開幕3日前の3月23日に登録抹消されるとファーム生活が続いている。
高校時代は同世代を象徴する存在だったが、プロでもがき苦しむ清宮を尻目に、ライバルたちは先に進んでいる。村上宗隆(ヤクルト)はセ・リーグの本塁打王争いをリードし、東京五輪の日本代表にも選出された。安田尚憲(ロッテ)はチームで両外国人に次ぐ打点を重ねている。
三者の違いについて、田中氏はこう指摘した。
「村上と安田は二軍の試合に出ている頃から、たとえ打てなくてもしっかり強く振ることを継続していました。一方、清宮はスイングに速さや迫力がありません。一軍ではスピードもキレもあるピッチャーと対戦するわけだから、スイングにキレがないと対応できない。まずは全力で振って打ち返すというバッティングをつくり上げていくべきだと思います」
清宮の抱える課題は、打球方向からもうかがえると田中氏は言う。
「体重移動を見ていると、引っ張り傾向に見えます。全部ライト方向に引っ張って打とうとしているように感じますね。インコースはポイントさえわかれば軽く振っても飛んでいくと思うので、思い切り振って左中間に強い打球を打ち返すことに取り組んでいくべきだと思います」
大谷翔平(エンゼルス)や柳田悠岐(ソフトバンク)のように、日米を代表する左の強打者は左中間に強い打球を飛ばすことができる。村上や安田にも共通する持ち味だ。
なぜ、清宮は引っ張り傾向になるのか。田中氏が続ける。
「腰の回転の仕方が、おへそが少し折れる感じになります。『く』の字になり、へっこむような感じですね。それは下半身の土台がしっかりしていないからです。一方、村上や安田は、おへそを最後に突き出すようなイメージ。大谷もそうです。腰の回転から手がついてきて、バットを振っています」
下半身がしっかりしないと、打撃に"穴"が生まれやすい。だからこそ清宮は今季、イースタンリーグ2位タイの7本塁打を放っている反面、打率はリーグで下から3番目に低迷している。
再び田中氏の解説だ。
「へそが折れるということは、体の回転が不安定になります。回転の軸もブレるので、パワーが上がりません。特に変化球などで前に突っ込まされると、体は折れやすい。前に突っ込んでも上半身が崩れない状態でいようと思えば、下半身をうまく使わないとできません」
では、清宮はどうすれば壁を突き破ることができるか。田中氏は、もっと体を作り上げることが必要だと見ている。具体的に言えば、筋量アップだ。
田中氏自身、ウエイトトレーニングを通じて一流打者への扉を開いた。都城高校から1985年ドラフト3位で日本ハム入りすると、一軍で活躍する先輩がウエイトを熱心に行なう姿を見て、自分も取り入れようと考えた。当時の球界で同様な取り組みをする選手は少なかったが、田中氏は肉体改造したことで通算2000本安打の礎を築いた。
「筋量が増えると力も出ますし、体のキレも上がると思います。体幹を鍛えれば下半身がしっかりして、軸がブレません。軸がブレないということは頭の動きもそんなにないから、目線もブレずにボールが見えるようになる」
近年の球界では、ウエイトトレーニングに取り組む選手が主流派になった。清宮も高校時代から業界で有名なトレーナーに師事していたという。
しかし現状、グラウンドでのパフォーマンスにはつながっていない。大事なのは力をつけることではなく、野球のプレーに結びつけることだと田中氏は指摘する。
「筋量を増やして体幹を鍛え、軸がしっかりして崩れない姿勢を作れれば、しっかり体の回転を使って腕が振れ、スイングスピードが上がります。清宮はリストが強くて手首の使い方は上手だから、打球を飛ばすことができる。足の力と腰の回転の速さが加われば、もっと腕を振れ、スイングのスピードも出てくると思います」
肉体と技術を磨くことに加え、重要になるのが頭の整理だ。開幕3日前の3月23日、栗山英樹監督は清宮を登録抹消する際、こう話している。
「すごく頭の中が混乱しているように見える。試合中に打ち方が変わったりする」(3月24日付け「スポーツニッポン」電子版より)
田中氏も同様の課題を感じている。
「ボール球に手を出したり、初球から合わせて打つような姿勢が見えたりします。結果が出ないと、どうしても迷うことはありますからね。でも二軍にいる間は、追い込まれるまではすべてフルスイングで打ち返すことをやってもいいと思います」
鳴り物入りで入団して4年目。清宮はスポットライトを浴びる場に立てず、影を潜めている。
課題は打撃だけではない。高校時代から指摘される守備の問題も抱えたままだ。打てない、守れないでは、どんなに潜在能力を秘めていても首脳陣としては使いにくくなってしまう。だからこそ、田中氏は下半身のトレーニングを勧める。
「バーベルを担いでスクワットをするだけでも下半身の筋力がアップします。あとは瞬発系のトレーニングですね。走るにしても、ダッシュ系をやるとか。下半身が鍛えられれば、バッティングにいい影響が出てくる可能性もあります」
今は人目の少ないファームで過ごす一方、周囲の期待は依然として大きい。入団してから本人が重圧をどう受け止めてきたか、その胸の内は知るよしもないが、求められるのは豪快な打撃だ。高いスケールとスター性を秘めるからこそ、4年前、7球団が1位指名した。
日本ハムのOB、そして球界の先輩として田中氏は清宮にエールを送る。
「基本的に言いたいのは、『フルスイングでバッティングをしなさい』ということです。今まで二軍で若手を見てきて、後に一軍で活躍しているホームランバッターにはブンブン振るタイプが多かった。強く振って当たるようになれば、一軍でも打てるようになると思います。清宮はもっと振れるはず。今年は二軍でずっとやらせるでしょうから、体がひっくり返るくらい振り切っていけばいい」
球界を代表するスラッガーへ。そのために必要なものを二軍で身につけ、遠くない将来、一軍で華やかな活躍を見せてくれる日を多くの者が待っている。