reinasumi_banner_728.jpgのサムネイル画像鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第10回ゲスト:水谷隼(プロ卓球選手)鷲見玲奈さんの連載企画の第10回。ゲストは、前回に引き続き、卓球日本代表の水谷隼選手。伊藤美誠選…



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鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第10回
ゲスト:水谷隼(プロ卓球選手)

鷲見玲奈さんの連載企画の第10回。ゲストは、前回に引き続き、卓球日本代表の水谷隼選手。伊藤美誠選手と組むミックスダブルス、開催が迫ってきた東京五輪への思い、さらに選手としての"その後"について聞いた。



東京五輪について水谷準選手に話を聞いた鷲見玲奈さん

鷲見 水谷選手はミックスダブルスとしても東京五輪に出場する予定です。2019年7月開催の韓国オープンから伊藤選手とペアを組み、約2年が経ちました。あらためて、伊藤選手の印象を教えてください。

水谷 ペアを組んだ当初は、美誠のプレーの多彩さに自分が戸惑ってしまって。サービスでもレシーブでも、見たことがない新しい技だったりコース取りをしますし、返球されるボールもすごいクセがあったり、なかなか対応できませんでしたね。それでも、試合の回数を重ねるごとにペアリングもよくなっていって、練習でもコンビネーションが非常によくなっているのを感じます。

鷲見 伊藤選手とは同じクラブ(豊田町卓球スポーツ少年団)出身で、気心が知れた間柄ですよね。小さい頃から「隼」と呼び捨てにされるくらいに(笑)。

水谷 今でも呼び捨てです(笑)。

鷲見 そんな伊藤選手とペアを組んで戦っているわけですが、印象は昔と変わっていますか?

水谷 幼稚園くらいの時の思い出が強く残っているので、昔の感覚のまま接しちゃう部分があるかもしれません。

鷲見 可愛い妹、みたいな感じですか?

水谷 本当にそんな感じです。でも、卓球台の前に立った瞬間に、日本を代表するトップアスリートの顔になる。僕も尊敬の眼差しで見ています。

鷲見 ミックスダブルスとしては、約1年前に「メダルの可能性は65~75%、金メダルの可能性は20%」と発言もされていましたが、そのパーセンテージは変わりましたか?

水谷 変わりましたね。僕らのペアはミックスダブルスの世界ランキングで2位なので、おそらく本戦は第2シード。そうなると、決勝まで中国ペアと当たらないということもあり、メダルの可能性は70~80%くらいまで上がったと思います。金メダルも、非常にいい感じで調整ができているので、30%ぐらいかと。


鷲見

 だいぶ上がりましたね。やはり最大のライバルは中国の許昕(シュシン)&劉詩文(リュウ・スーウェン)ペアだと思いますが、今までの対戦成績を見ると、4試合で白星がない苦しい結果になっています。

水谷 僕の中では実力差はそれほどなく、勝てる位置にいると思っているので、あとは気持ちの部分が大きいんじゃないかと。振り返れば、2019年のグランドファイナル決勝では、セットカウント2-0とリードしながら、一気に3ゲームを取られて逆転負けしてしまった。負けが続いているので、試合中に「勝ちたい」「勝てるんじゃないか」と思うようになり、向かっていく気持ちが薄れてしまったというか、少し守りに入ってしまったところがあって。そこを払拭できれば、勝つ確率は高くなると思っています。

鷲見 具体的に対策として取り組んでいることはありますか?

水谷 最近、YG(ヤングジェネレーション)サービスという逆横回転のサーブをすごく練習しています。普段はあまり試合で多用しないんですけど、男女関係なくYGサービスに手こずる選手が多いんですよ。だからオリンピックでは大きな武器として使っていきたいです。

鷲見 確かに水谷選手は、YGサービスはここぞという時に出すイメージがありますね。

水谷 そう考えています。なぜ今まで多用してこなかったかというと、YGサービスはすごく複雑な回転なので、返球されてくるボールも複雑になる。そうなると美誠が3球目を打ちづらくなるので、何度も出すにはリスクが大きかったんです。でも逆に、使いこなせば間違いなく大きな武器になるので、今は猛練習中です。すでに、複雑なレシーブに対してもしっかり3球目を打ってくれるという、美誠への信頼はかなり大きくなっていますけどね。

鷲見 他のライバルとしては、台湾の林昀儒(リン・インジュ)&鄭怡静(チェン・イージン)ペア、韓国の李尚洙(イ・サンス)&田志希(チョン・ジヒ)ペアあたりが挙げられると思いますが、印象としてはいかがですか?

水谷 台湾のペアにはあまり苦労せずに勝つことができているので、相性はすごくいいんじゃないかなと思っています。ただ韓国のペアには、3月に行なわれたカタールオープンの準決勝で負けてしまって。敗因としては、他国のペアは男子選手が左利きで、女子選手が右利きというパターンが多いんですけど、韓国のペアは逆で少し特殊なんです。だから今までと性質の違う返球に戸惑ってしまった。終始うまく噛み合わなかったです。

鷲見 私もその試合を見ていましたが、悪い流れを断ち切れなかった印象がありました。

水谷 そうですね。自分のプレーも本当に悪かったです。でも、オリンピックでは必ずいいプレーができるでしょうし、同じような結果にはならないと思っています。

鷲見 頼もしい言葉ですね。ただ、どうしても心配なのが、水谷選手の眼のコンディションです。最近では「裸眼のほうが調子いい」という発言もされていたと思うのですが、現在の状態はいかがですか?

水谷 今はずっと裸眼で練習できていますし、昔に比べると少しはよくなったと感じています。一応、これから新しいサングラスが届くので、どちらの形で臨むかはまだ決めていませんが。試合会場である東京体育館の下見をしてから判断する予定です。

鷲見 最高の状態で臨めることを祈るばかりです。その東京五輪も開幕が近づいていますが、4度目の出場となる今大会は、水谷選手にとってどういう位置づけになりますか?

水谷 僕にとって、金メダルを取る最初で最後のチャンスだと考えています。次回のパリ大会は年齢的に難しいですし、今回は東京開催でもあるので、実力のすべてを発揮できるように準備したいです。

鷲見 ずっと「オリンピックが終わったら引退する」というお話もされてきましたが、その気持ちは今でも変わりませんか?

水谷 はい。ただ、国際大会に関しては引退するとは思うんですけど、卓球選手は継続しようかとか......けっこう曖昧だったりするかもしれません(笑)。

鷲見 ちょっと気が早いんですけど、オリンピック以降、卓球以外でやりたいことなどは?

水谷 それが、全然ないんですよ。サッカーや野球も好きなので、やってみたい気持ちはあるんですけど、飽き性なので。「これを続けてやりたい!」ということはないですね。


鷲見

 卓球をこれだけ長く続けている人が飽き性というのも、不思議な感じがします(笑)。解説者などはどうですか? 今年の全日本選手権の決勝戦も解説されていたと思いますが。

水谷 オファーをいただけたら、やってみたいなという気持ちはあります。「僕でよければ」という感じです。

鷲見 引っ張りだこになると思いますよ(笑)。最後にあらためて、東京五輪に向けた意気込みをお願いします。

水谷 自分の集大成として、競技人生27年間のすべてをパフォーマンスで表現したいと思っています。見ている人が「自分じゃ絶対マネできないな」と思うぐらい、人間離れしたプレーをすることが目標なので、ぜひ見ていてください。

鷲見 ちなみに、今大会も下着はつけないんですか?(笑)。

水谷 当然です。聞くまでもありません(笑)。

鷲見 急に変えたらコンディションが狂っちゃいますもんね(笑)。今回はありがとうございました。活躍を楽しみにしています!

Profile
水谷隼(みずたに・じゅん)
1989年6月9日生まれ、静岡県出身。
両親の影響で5歳から卓球を始め、中学3年からドイツ・ブンデスリーガに卓球留学。
2006年に17歳7カ月で全日本選手権シングルスを優勝し、
2018年には10回目の優勝を果たす。
オリンピックには、2008年の北京五輪から3大会連続で出場。
2016年リオ五輪ではシングルスで日本人初のメダル(銅メダル)を獲得した。
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鷲見玲奈(すみ・れいな)
1990年5月12日生まれ、岐阜県出身。
趣味:サッカー、動物と触れ合うこと、愛鳥を愛でる
特技:詩吟
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