プロ卓球選手でありながら、卓球関連企業の代表取締役としても存在感を示す森薗政崇(もりぞのまさたか)。自身の事業について聞くと、言葉の端々から“卓球界を盛り上げるためのアイデア”が口をついて出る。森薗は、仲間たちとどんなサービスを展開している…

プロ卓球選手でありながら、卓球関連企業の代表取締役としても存在感を示す森薗政崇(もりぞのまさたか)。

自身の事業について聞くと、言葉の端々から“卓球界を盛り上げるためのアイデア”が口をついて出る。

森薗は、仲間たちとどんなサービスを展開しているのか。今後の構想とは。




【森薗政崇(もりぞのまさたか)】1995年4月5日生まれの26歳。東京都出身。青森山田中高、明治大学と卓球界の名門校で腕を磨き、現在はプロ卓球選手として活躍。アスリートとして2017年世界卓球デュッセルドルフ大会男子ダブルス銀メダル、2021年全日本卓球選手権男子シングルス準優勝など国内外で数多くの実績を残しながら、FPC株式会社の代表取締役社長も務める。

全ては卓球の裾野を広げるために




写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

森薗が代表を務めるFPC株式会社は卓球用品販売や大会告知を行うポータルサイトの「ミングルス(Mingles)」、東京・神楽坂の卓球場「T-CROWN(ティークラウン)」、そして卓球選手のマネジメント業など幅広い事業を展開する。




写真:森薗がプロデュースした卓球場T-CROWN/撮影:ラリーズ編集部

各事業で「卓球」というキーワードは共通しているものの、一見個別に成立しているようにも見える。だが、森薗の頭の中では全ての事業にストーリーがあり、全てが有機的に繋がっているのだという。

「卓球は本当に楽しい。練習と試合を繰り返しながら、できることが増えていく。ラリーが続いたり、試合に勝ったり、小さな喜びが得られる。成功体験というと大げさですけど、そういうのが日々味わえるのが楽しいと思っています。でも…」。




写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

森薗は「卓球を取り巻く環境はもっとよくできるはず」と力を込める。

森薗は、1つの例として大会運営をあげた。

「参加側は、試合にエントリーして、現金書留で参加費を送る。今まで当たり前でしたけど、正直不便です。大会運営側も、体育館を取って、要項を流して、人を集めて組み合わせを作るなど労力が多くかかる。でも、卓球に関心のある人が集まるところに大会情報が掲載されれば、集客は簡単になるし、運営もシステムで効率化できますよね」。

実際、卓球ポータルサイトのミングルスには、自社の主催大会以外も多数掲載している。そのため、卓球愛好家が日々サイトを訪れ、大会情報をチェックする。今後は、各自治体が主催する大会を含め「卓球愛好家のインフラ」を担う計画だ。




写真:ミングルスの大会情報ページ/提供:ミングルスより引用

上場企業から得られる新たな視点で卓球界に風穴を開ける

森薗は、出資者でもあり、ミングルスの事業をサポートするEストアー社の存在が、新たな発想を与えてくれると語る。




写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

「実はEストアーの方からゴルフ業界で有名な事例を教えて頂いた。ネットでゴルフ場の予約ができて、プレー中のスコア分析もできてゴルフクラブも買える。卓球に置き換えて考えてみると、卓球界をもっと良くできる、卓球をもっと楽しくできる、というアイデアがすごく増えてきた。それが今の僕たちの構想になっている」。

上場しているIT企業が「卓球はまだまだ成長余地がある」ことを見通してサポートしてくれることも、森薗が迷いなく事業活動を続けられる大きな動機になっている。

地域の体育館での練習から得られた気づき




写真:森薗政崇/撮影:ラリーズ編集部

現在、森薗はナショナルチームでの練習をメインとしている。だが、事業をはじめてからは、時折一般の愛好家に混ざって地域のスポーツセンターでも練習する機会も設けている。

「高齢の方が何本もラリーを続けていたり、その隣の台で楽しそうにプレーしている人たちがいる。また別の台では逆に真剣勝負で勝ちにこだわって集中している人たちがいる。中にはサーブがすごく上手い選手がいて、僕もそのサーブを試合で取り入れることもありますよ」と笑顔を見せる。

森薗は、卓球愛好家たちをより身近に感じるうちに「すべての愛好家をサポートしたい」と思うようになった。

「僕らが大会、卓球場、物販と全てをカバーすることでメリットを提供できる。例えばラバーを替えた時に得たポイントで次の試合の参加費が払えたり、どんどん卓球にのめりこみ、楽しんでもらうための“卓球経済圏”を作って、皆さんの卓球人生を豊かにしたいと本気で思っています。それは僕らの力だけで進めるよりも、全国にたくさんいる、熱い想いを持った卓球事業者さんとも協力して進められたら卓球界はより盛り上がるとも思っています」。

トップアスリートを目指す選手の支援も




写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

森薗が代表を務めるFPCでは、現役のトップアスリートである森薗自身の視点も活かし、複数の選手のマネジメント業務も行っている。

「これから世界を目指す若い世代の選手のサポートも、現役選手の目線からできることがある」。

𠮷田雅己・町飛鳥らプロ選手だけでなく、鈴木笙(静岡学園高)ら高校生から小学生までもサポートする。マネジメントの主な仕事は、スポンサー獲得やメディア出演対応などと思われがちだが、練習環境の整備や、トレーナーの確保も含めたトータルサポートを実施し、選手の活躍を支える。

ターゲットは卓球愛好家からトップアスリートまで。ある時は球界を代表するトップアスリートとして、またある時には卓球総合事業を展開する企業の社長として、卓球界全体の発展に貢献する。

それが“代表取締役社長”兼“プロ卓球選手”、森薗政崇の職業だ。(了)




写真:森薗政崇(BOBSON)/撮影:伊藤圭

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)