競馬界最高峰の舞台であり、3歳馬の頂点を決するGI日本ダービー(東京・芝2400m)が5月30日に行なわれる。今年は同…

 競馬界最高峰の舞台であり、3歳馬の頂点を決するGI日本ダービー(東京・芝2400m)が5月30日に行なわれる。今年は同レースに、GI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)2着のサトノレイナス(牝3歳)が挑戦する。

 牝馬の日本ダービー出走は、2014年のレッドリヴェール(4番人気12着)以来。勝てば、2007年のウオッカ以来の快挙となる。サトノレイナスでその偉業に挑むのは、昨年までアーモンドアイを管理していた国枝栄調教師。同師に今回、ダービー挑戦の経緯と勝算について聞いた――。



ダービーに挑戦するサトノレイナス

――前走の桜花賞、サトノレイナスは人気を分け合うソダシ(牝3歳)とともに、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月13日/阪神・芝1600m)からのぶっつけで臨みました。当初は、その予定ではなかったと聞いていますが。

「もともとは(2月の)東京開催のレースを使う予定でいました。でも、(調整過程で)そこには間に合わないとなって、気のいいタイプだし、相手も牝馬で、コース経験もあるので、『ぶっつけ本番で』という選択をしました。

 GIIチューリップ賞(3月6日/阪神・芝1600m)とかステップレースは他にもありますが、(桜花賞までの)間隔や輸送のことも考えると、実際のところ、使うレースは限られてしまうんですよね。これがもし、距離を延ばして(GI皐月賞で)牡馬を相手にするとなれば、また別の話になったのでしょうが。

 それはともかく、桜花賞に臨むにあたって、レイナスの仕上がり自体はすごくいい感じでいきましたよ」

――しかし結果は、残念ながら2着。後方から猛然と追い込んだものの、ソダシにクビ差届きませんでした。

「ルメさん(クリストフ・ルメール騎手)も話していましたが、内枠なら阪神JFの時のようにインに潜り込んで、ということもできたんでしょうが、外枠(8枠18番)でしたからね。加えて、ちょっとエンジンがかかるのが遅かったので、あんな競馬になっちゃった、という感じ。

 レイナスの走りを見れば、もうちょっと距離があれば......というのは感じますから。(マイル戦に)より適性の高い馬に完璧な競馬をされてしまうと、さすがに厳しいですよね」

――「もうちょっと距離があれば......」ということであれば、GIオークス(5月23日/東京・芝2400m)で「今度こそ逆転を」と考えると思ったのですが、ダービー挑戦を選択しました。しかも、その選択は早い時期から視野に入っていたと聞いています。

「全兄のサトノフラッグも昨年、GII弥生賞を勝ってクラシックに向かいましたが、同馬と比べても『レイナスのほうが能力は上だな』と早い段階から思っていました。そこで、ダービーも含めて、クラシック登録はしておいたんです。(牡馬と)同斤量だったら、ちょっと考えるところもあったけれど、牝馬で(斤量で)2kg差もらえるなら、チャンスがあるかな、と」

――ということは、一冠目から皐月賞に向かう選択肢もあったのでしょうか。

「オーナー(里見治氏)がまだ牝馬のGIを獲られていなかったので、2歳時にはまず阪神JFを使いました。そこで2着に来て(GI獲得も)なんとかなるんじゃないかと思って、桜花賞へ向かいました。

 結局、桜花賞も負けてしまったんですけど、内容自体は勝ちに等しいものだった。それで、『これなら(ダービーへ)』と思ったんです。

 そこで、ルメさんにも相談して『どうだ?』と聞いたら、『(ダービーに)行くなら乗りたい』と。それが、一番の決め手になりましたね。

 ルメさんが(ダービーで)空いていなかったら? どうだったんだろうねぇ......。それは、そうなってみないとわからないよね(笑)。

 そうして、こちらからオーナーにダービー出走を提案しました。そうしたら、『先生とルメさんがいいなら、行きましょう』と、快諾してくれました」

――これまで、国枝厩舎からは計7頭の馬がダービーに挑戦しています。それらと比べて、今回の手応えはいかがなものでしょうか。

「個人的な手応えは、それらと比較しても『(サトノレイナスのほうが)上かな』と思っています。あと、これまでにダービーに出走した馬は、ちょっとまだ成長が遅かったかな。

 サトノフラッグや姉のバラダガールと比べても、レイナスが一番早い段階から動けていました。気持ちも、身体も、兄姉の中で抜けてよかったよね。前向きでもあるし、そういう意味でも"ダービーへの適性"は高いと思います。

 この時期に、牝馬が牡馬相手に2400mを走るというのも、以前なら『厳しいかな』という考えがありました。でも、近年の"強い牝馬"を見ていると、今の段階でもある程度やれる馬であれば、勝負になる気がしています」

――今回のダービー挑戦について、実はアーモンドアイをダービーに挑戦させたかったという心残りが、国枝調教師にはあるのではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。

「うん、まあねぇ......(苦笑)。調教師に限らず、競馬関係者にとってダービーというのは、ひとつの夢であり、目標でありますよね。チャンスのある馬がいれば、『狙いたい』と思うのは当然のこと。アーモンドアイは牝馬三冠を目指す流れになりましたけど、現実に(ダービーに)出ていたら『面白かっただろうな』というのはあります。

 確かに(自らの)定年も近いのでね(笑)。だからといって、(ダービー制覇を果たしていないことに)焦りはなく、なんでもかんでもダービー出走、とは思っていません。でも、能力のある馬であれば、牡牝関係なく、(ダービー制覇を)狙いにいきたいなという気持ちはあります」

――何はともあれ、決戦のダービーまでまもなくです。前走の桜花賞は超高速決着でしたが、その反動などはありませんか。

「時計を見ると心配になってしまうけど、痛みもなく、まったく問題ないです。最近の競馬界は馬場のメンテナンスもよくなっていて、時計が速くても、(競走馬の)故障が少なくなっています。さらに、馬のケアの技術が上がっているのも大きいですね。

 ディープインパクト産駒なので、馬場はあまり悪くなってほしくないです。このところ、お天気は安定していませんけど、ダービーの週は『なんとか、もってくださいよ』と、思っています(笑)」

 飄々とした国枝調教師の対応からは気負いは感じられない。逆に、これまでの調教師人生で培ってきた確固たる"自信"を感じ取ることができた。数日後、再び登場した"強い牝馬"による新たな1ページが刻まれるかもしれない。