今シーズン天皇杯を優勝し、Bリーグチャンピオンシップに進出している川崎ブレイブサンダース。

 

2018年シーズンより東芝からDeNAへ経営権を承継。「DeNA川崎ブレイブサンダース」として新たなスタートを切った。

 

この3年間、川崎に密着した地道な努力を続け、人気・経営面で成果を出し続けている。今回は、クラブの運営努力にフォーカスする。

 

株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース営業部 川崎地区担当の板橋大河さん、地域振興・アカデミー事業部の内藤誠人さんに協力いただき、これまでの取り組みについて話を伺った。

 

(取材協力 / 写真提供:川崎ブレイブサンダース)

野球での成功例をバスケにチューニング

板橋さんは2007年に中途で株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社後、2014年に横浜DeNAベイスターズに出向。

 

2017年12月に東芝からブレイブサンダースを承継することが決定したタイミングで、元沢伸夫氏(代表取締役社長)・藤掛直人氏(事業戦略マーケティング部 部長)らとともにジョインした。

 

DeNAは2011年12月に横浜ベイスターズを取得。その後、ユニークな企画やビジネス戦略などを展開し、常時スタジアムを満員にさせるなど人気球団へ押し上げた。ブレイブサンダース参入当初はその実績とノウハウを活用した。

 

「ベイスターズで大事だったのは『勝敗を問わずお越しいただける』点が基本的な考え方でした。ブレイブサンダースにおきましても、アリーナに来たからには楽しんでいただける”おもてなしの準備”をテーマに置いておりました」

 

まずはオリジナルビールの販売、そして初年度の開幕戦には来場者にユニフォームを配布した。ベイスターズで最も人気の企画「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」がベースとなった。

ベイスターズで好評だったオリジナルビール販売(写真上)とユニフォーム配布(写真下、2020-21年デザイン)を応用した

そこからバスケットボール観戦に合ったものにチューニング。アリーナという室内空間の特性を活かし、音楽や照明を活用した演出にこだわった。

 

「音と光の演出にも力を入れました。屋内のスポーツなので音の反響も良いですし、お客様との一体感もすごく生まれやすいです。暗転もできるので、光の演出が入るというのはバスケならではの強みになりました」

 

ブレイブサンダーズは参入当初から、”EXCITING BASKET PARK”を掲げ、ホームの「とどろきアリーナ」で非日常的な空間を提供している。新型コロナウイルス禍でイベントや入場数の制限はあるものの、演出の命である音と光のコラボレーションが、ファンそして選手たちに力を与えている。

とどろきアリーナの演出は非日常的空間を表現している

今後は”スポンサーアクティベーション”を強化

現在、板橋さんは川崎地区 営業担当として地元企業や協会、地元業界団体などを訪問し、スポンサー獲得のため市内全域を回っている。承継時から担当し、スポンサー数を参入当初(2018年6月時点)の67社から165社(2021年4月現在)と3倍近くに増加させた。

 

川崎市と言えば、Jリーグで人気・実力ともにNo1の川崎フロンターレが根付いている。営業活動を始めた当初もフロンターレが築いてきた努力を肌で感じていた。

 

「フロンターレさんの頑張りが本当に大きくて、『バスケも頑張ってね』『次はブレイブサンダースさんだね』といった励ましの声が圧倒的に多かったです」

継承時から地元企業や団体からの大きな期待を感じていた

上記のように理解のある企業に加え、これまでスポーツチームへ協賛したことがない企業にも積極的にアプローチしている。何度も訪問し、会話を積み重ねることで信頼関係を築いていった。

 

「もちろん『こんにちは!協賛してください』『はい!やります』ということは1社もありませんので、何回も何回もコミュニケーションを重ねることで応援したいなと思っていただきました。

 

最初は大前提にプロバスケットボールクラブですという説明から始めることが多いのですが、認知度が上がってきましたのでブレイブサンダースの歴史や強み・日本代表経験のある選手もいるなどと会話の幅が広がってきています」

 

認知度も上がり、手応えを感じてきていると語る板橋さん。今後さらにクラブの価値を高めるために何が必要か。板橋氏はこう説いた。

 

「一番強めていきたいのは”スポンサーアクティベーション”です。具体的にはノベルティ制作やイベント実施といった、看板掲出以外で商標を活用したアクションを強化したいと思っています。理由としてはスポンサードという露出ファースト、もうその時代は終わってきていると感じているからです。

 

ファンとクラブがつながっていくのは普通の構図です。そこにスポンサーとファンがつながるような企画をスポンサー発信で行われていければ必然的にお客様が喜んでいただける場所や雰囲気が醸成されると思います。なので企業さんに向けたアクティベーションの提案の質を強化したいですね」

今後重要視しているのは”スポンサーアクティベーション”と語った。

行政とも良好な関係を構築

クラブ運営においては、地元の企業や市民との関係性構築とともに、自治体との協力も必要なファクターの1つである。内藤さんは現在 地域振興・アカデミー事業部に所属。地域振興においては地元自治体との関係構築をはじめ、イベントの企画や参加がメインとなっている。

 

川崎市及び市内全7区へ訪問。行政が企画したイベントへの参加やクラブからグッズを提供するなどといった双方向での連携を深めている。一昨年までは地域のお祭りや学校訪問も積極的に行い、市民との交流を続けてきた。

 

川崎市も上述の通り、フロンターレそしてブレイブサンダースの努力もありスポーツが盛んな地域である。内藤さんも自治体とのやりとりの中で強く感じているという。

 

「市や区の職員の方たちにはアリーナに何度も来ていただいており、スポーツが大好きな方が多いです。企画のネタも『こんな話あるけどどう?』などと話しますし、僕らからも提案するので、お互いにいい関係を築けていると感じています」

コロナ以前は川崎市内の小学校にも出向いた

しかし、昨年からコロナ禍になり対面での活動は全て中止に。他のプロスポーツ同様に”今だからこそできること”に重点を置きつつ、市民とのタッチポイントを絶やさないよう模索している日々が続いている。


「地域の方々と直接的な接点を持つというのが格段に減ってしまったというのが実態だと思います。リアルに代わり我々も一部オンラインに切り替えるなどしていますが、行政主体のイベントなどではオンラインに対応しきれないケースもあります。なのでそう簡単に『リアルがダメだからオンラインでやりましょう』という話でもないので、そこが課題ではありますね」

日々工夫を重ね、コロナ禍でも市民とのタッチポイントを増やすべく取り組んでいる(写真左が内藤さん)

子どもたちが早くバスケに触れられる場を

もう1つの担当であるアカデミー事業では、下部組織のユース・バスケットボールスクールそしてチアダンススクールの3つを運営。地域のスポーツ振興に貢献するとともに、未来を担う子どもたちの育成にも力を注ぐ。

 

特にバスケットボールスクール「THUNDERS KIDS」では、4歳(年中)~小学校1年生、小学2~4年生、小学5年生~の3クラス制で、それぞれ初心者・経験者と2クラスに分けている。経験問わずバスケットボールを楽しめる場を設けている。

 

内藤さんも学生時代はバスケ部だった。だからこそ、その楽しさを知ってほしいという想いはより強い。

 

「子どもたちにバスケを早いタイミングから体験してもらえればと思っています。『バスケに興味ある!』という人たちをどこまで増やせるかもそうですし、体を動かす意味においても、気軽にバスケに触れやすい場を作りたいと考えています」

アカデミー事業を通じ、バスケットボールをプレーする機会をより多く創出している

スクール以外にもバスケを通じた地域貢献を行っている。ブレイブサンダースは、2020年9月よりSDGs(持続可能な開発目標)に取り組むプロジェクト「&ONE」を発足。

 

SDGs未来都市に指定されている川崎市と協定を結び、川崎をより「住んで幸せな街」にすることに力を入れて取り組んでいる。

内藤さんも「&ONEプロジェクト」の一員である。自身が担当する地域振興の仕事を絡めて、現在行っている施策を紹介してくれた。

 

「私が携わったのは『市に誰でも楽しめるバスケットゴールを立てよう』というプロジェクトです。ただ、空いてる場所に簡単に設置することはできないので、どこなら置けるのか・どこに置いたら喜んでくれるかなどと行政と議論を重ねています。まちづくりに僕らも携われるチャンスがある。やりとりを重ねる中で、個人的にはすごいことだと感じています」

「&ONEプロジェクト」の一環で市内にバスケットゴールを設置する活動を行っている

これからも挑戦していくクラブに

2020-21シーズンは天皇杯を制し、チャンピオンシップ進出と人気・実力ともに人気クラブとなっている。今後ブレイブサンダースを通じて、川崎市をどのように盛り上げたいか。それぞれに想いを伺った。

 

実は川崎生まれ川崎育ちという板橋さん。「24時間365日川崎にコミットしている」と語り、「スポンサーアクティベーションたる企画をさらに我々と一緒に考えることで、スポンサーとファンがつながるイベントが街に溢れていくことが最も近道だと信じて止まないです。私見ですが、全国で見ても川崎の街が日本で1番スポーツ熱が高いと思っているので、今後も挑戦していきたいです」

 

と抱負を述べた。また、内藤さんは今回の天皇杯で優勝を味わい、多くの方たちに支えていただいていると周囲への感謝の気持ちを添え、

 

「”川崎だから・自分の住んでいる街だから応援したい”だけではなく、全国の方々から積極的に応援したくなるようなチームでありたいなと思います。

地域や子どもたちの観点ですと、憧れられる存在でいる選手を身近に感じてもらい、『あの選手になりたいな』と目標を持って取り組んでもらえるようなそういう場づくり・クラブにしていきたいと思っております」

 

川崎ブレイブサンダースが「川崎と言ったらフロンターレとブレイブサンダースだよね」そう言われる日は遠くないはずだ。

 

(取材 / 文:白石怜平)