スーパーエース・西田有志 がむしゃらバレーボールLIFE(21) 第20回:誕生日に起こったサプライズ>> バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志(ジェイテクトSTINGS)。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第…

スーパーエース・西田有志 
がむしゃらバレーボールLIFE(21) 第20回:誕生日に起こったサプライズ>>

 バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志(ジェイテクトSTINGS)。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第21回は、Vリーグ2020-2021シーズンの振り返りと、日本代表での意気込みついて聞いた。

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日本代表での活躍も期待されるジェイテクトのエース・西田

 上位3チームによる2020-2021シーズンのVリーグ男子のファイナルステージに、前シーズン王者ジェイテクトSTINGSの姿はなかった。エースの西田有志を中心に連覇を目指し、天皇杯を初制覇するなど新たなタイトルも獲得したが、シーズンは4位に終わった。

 昨季に大活躍した"優勝請負人"のマテイ・カジースキ(元ブルガリア代表)が退団、正セッターを務めていた中根聡太が引退するなど、チームは大きく様変わり。さらにコロナ禍によって新外国人フェリペ・フォンテレス(元ブラジル代表)の加入が遅れるという不運もあった。

 それでも西田は、「まだ優勝常連のチームになれていないということ」と厳しい言葉を口にした。

「シーズンごとにメンバーが変わるのは、どのチームにも共通することです。そこで勝てなくなるのはチーム力が足りないということなので、他の選手たちがレベルを上げないといけない。リーグ優勝した実績があることは事実で、そこでやっていたことを再現できるようにしつつ、新しい方向に進化していくことが大事。どれだけ明確なビジョンを持って練習をできるかがカギになると思います」

 今季を制したのは、レギュラーシーズンでも1位だったサントリーサンバーズ。海外リーグから、4シーズンぶりにチームに復帰した日本代表の柳田将洋は、優勝を決めたあとに歓喜の涙を流した。西田はサントリーの印象を次のように語る。

「柳田選手、ドミトリー・ムセルスキー選手などが前に来るローテは破壊力がありました。攻撃の選択肢が多く、こちらのブロックが1枚になる可能性も高かった。例えばフェイントでクロスを絞めたり、次はそのままライン際に跳んでみたり、そんな駆け引きが多かったですね。

 サントリーさんは昨年の僕たちと似ていました。勢いがあって、全試合で1点を取るリズムがよかった。バレーの試合では、『ここを取ったらあと2、3点連続で得点できそうだな』と感じる場面、『なんでそこにトスが上がるの?』と自分たちでも理由がわからないけど点が取れる場面もある。セットの中盤で意外なところから得点できると勝負所での布石にもなるんですが、今季のサントリーさんはそんな場面がたくさんあったように感じます」

 さらに西田は次のように続けた。

「外国人選手など特定の選手じゃなくて、全員で得点を重ねられるチームが上位にいきましたね。勝敗にはいろんな要因がありますが、サーブ、ディフェンスからの得点など、連続して得点できる方法がいくつあるかが勝敗を左右する。だから、個々の能力を高めていけば、勝てる可能性はどのチームにもあるということです。それができたら、下位のチームも上位のチームを倒すことができる。それがチームスポーツの面白さですね」

 ジェイテクトの試合の中でも、チームの一体感に西田が「鳥肌が立った」試合があるという。リーグ終盤の3月20日に行なわれた、JTサンダーズ広島との一戦だ。

 その試合はJTが2セットを先取し、ジェイテクトは敗色濃厚。そこでチームの空気が悪くなってもおかしくないが、その時は逆によくなっていったという。

「何か特別なきっかけがあったわけではないんですが、第3セットで全選手のモチベーションが変わったのを感じました。ひとりひとりがしっかり役割を果たして、3セットを連取して逆転できた。言葉では現しづらくて、『なんかいいんじゃない?』というのを肌で感じるというか、集中力がどんどん増していきました。ベンチのメンバーを含め、チーム全体で"ゾーンに入った"ような試合でしたね」

 そんな戦いを重ねる中で、西田個人も成長していった。ケガでの離脱がありながら総得点2位(833得点。日本人選手では1位)という成績も立派だが、1セットあたりのブロック決定本数が、昨季の0.49から0.61へと大幅にアップした。

「助走に入る時の体の向き、空中の動きにどれだけ早く気づいて対応できるか。自分たちのレシーバーがどこにいるのかも確認して、ブロックに跳ぶ前にどんなフェイクを入れるのかといったこともすごく考えました。それでワンタッチを取るなどの場面が増えたので、それだけ相手を観察する力がついたということかな、と思います。

 僕はシーズン前に、『今季は技術を高める』と焦点を絞るような目標を立てることはしません。すべてのプレーのベースをリーグで戦えるくらいまで引き上げて、あとはリーグ中に高めていく。今季は結果的に、ブロックでもっとも成果が出た、という感じです」

 西田の成長は、日本代表の強化にもつながる。かねてから五輪での頂点を目指し、「そこだけしか見ていない」という西田は、開催日が近づく東京五輪についての思いをこう語った。

「まだまだ開催に向けて難しい状況が続きますが、日にちが近づいてくると、やはり緊張感は高まってきていますね。前年はコロナ禍で試合ができませんでしたが、コンビネーションなど、チームのまとまりという点は心配ありません。今の日本代表は、しっかりとモチベーションを上げられるメンバーばかり。その中でも、『自分が1番』という気持ちで試合に臨もうと思います」

 男子バレー日本代表は、5月1日、2日に中国と親善試合を行なったあと、5月後半からイタリアでの"バブル開催"となったネーションズリーグを戦う予定だ。その中で西田、日本代表がどのように仕上がっていくのか、目が離せない。