|激変する「大学」と「スポーツ」のあり方 ―コロナ禍で大学運営やスポーツのあり方そのものが見直されようとしています。現在の状況をどのように見ていらっしゃるでしょうか。 田中 スポーツというのはチームプレーが多いですし、個人競技でもトレ…

|激変する「大学」と「スポーツ」のあり方

―コロナ禍で大学運営やスポーツのあり方そのものが見直されようとしています。現在の状況をどのように見ていらっしゃるでしょうか。

田中 スポーツというのはチームプレーが多いですし、個人競技でもトレーニングを1人だけでこなしていては鍛えにくいですよね。コロナ禍では非常に苦しい状況でしたけれども、コーチや監督も相当工夫をしておられました。一箇所に集まらないように一人一人にバラバラの課題を与えてこなすということをして、緊急事態宣言が解除された後もしばらくは団体での練習は控えていました。

 それで身体能力やプレーの質を維持するのは大変だったでしょうが、野球部は六大学で優勝してドラフトで指名される選手も出ましたし、ラグビー蹴球部も大学選手権で準優勝。バレーボール部男子は全日本インカレ4連覇。しっかり頑張ってくれました。まさに「たくましい知性」で答えのない問題に取り組んでくれたのだと思います。

 コロナはネガティブな部分が大きいですが、そこから何かを学び取って未来に繋げることもできます。転んでもただでは起きません。ルーティンの練習をしていればいいという感覚がなくなり、逆境の中でどうやって自分たちを鍛えて試合に勝つかを考えるようになった。好ましいことではなかったと思いますが、彼らが将来社会に出た時にこの経験はプラスになると思います。

逆境の中で結果を出した体育各部の活躍を称える田中総長

廣田 もちろん、コロナが起きなかった方が絶対に良かったですけれど、健康の大切さを考えるようになった人が増えてきたと感じています。歩いたり走ったりする人が増え、デジタルで自分の記録を測定し、走り方を診断してもらえるサービスもできてきました。今年の早稲田駅伝は『ASICS Runkeeper』というアプリを使ってのリモート開催となりました。どこにいても駅伝に参加することができて、今回は海外からも参加者があったと聞いています。

 例えば東京マラソンは東京にいないと参加できませんが、早稲田駅伝には全世界から参加できる。全く違う場所にいる人とチームを組むことも可能です。新しいスポーツの楽しみ方を提示できたのではないかと考えています。ちなみに私も個人の部で出場して、61位をいただきました。老若男女楽しめる機会をバーチャルな形でも提供できたとプラスに考えており、今後もやっていきたいと思っています。

「新しいスポーツの楽しみ方を提示できた」と未来への手応えを語る廣田社長

―デジタルの活用では、企業が実際に抱える問題について早大生が解決策を考える『プロフェッショナルズ・ワークショップ』もオンラインで開催しました。

廣田 私もワークショップに参加させてもらいましたが、学生の皆さんはデジタルに本当に強いと思いました。慣れないと画面越しのディスカッションってなかなかできないんですが、学生さんは共同研究をして立派な成果を提出されていた。うまい使い方をするなと思いましたね。

 他大学から聞いたことですが、早稲田が何をやるのかというのは注目されていることなんですね。コロナ禍でどのように対応するのか。スポーツだけではなくアカデミズム全体におけるリーダーの役割というのは大きいと思います。

田中 このような時期でも『プロフェッショナルズ・ワークショップ』を開催していただいたことは大変ありがたい。対面でできないことをオンラインでやり、それで一定の成果を上げられたのは素晴らしいことです。