3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会の出場校が24日、決まった。 「よっしゃー」「甲子園だ」――。保護者…

21世紀枠でのセンバツ出場が決まり、喜びに沸く壱岐の選手たち=長崎県壱岐市で2025年1月24日午後4時16分、矢頭智剛撮影

 3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会の出場校が24日、決まった。

 「よっしゃー」「甲子園だ」――。保護者らと出場校発表のライブ配信を見守った壱岐(長崎)の選手たちは、21世紀枠で校名が呼ばれた瞬間、声を上げて喜びをあらわにした。「壱岐から甲子園に」を合言葉に一丸となった離島の野球部の夢は現実になり、九州北部の玄界灘沖にある人口約2万4000人の島は、お祝いムードに包まれた。

 選手21人とマネジャー4人は全員が地元出身だ。主力の2年生は中学時代、島内四つの中学校の軟式野球部でプレー。このうち浦上脩吾(しゅうご)主将がいた学校は九州大会に、別の学校も全国大会に出場し、「黄金世代」と呼ばれた。

 中学が違えどお互いの顔が見える小さな島。ライバルだったり、県選抜でチームメートになったりした選手同士で、中学の部活引退後に進学先を話し合った。

 浦上主将を含め強豪の私立校から誘いを受けていた選手は複数いた。そんな中で、壱岐の野球部から甲子園を目指した父と兄を持つ浦上主将らが「壱岐に残って甲子園に行くことに価値がある」と声を上げた。

 日高陵真選手(2年)は「中学で試合して勝ったり負けたりしていた相手が同じチームの仲間になった時に本当に心強いと思い、壱岐を選んだ」。あの頃、壱岐から本気で甲子園を目指す思いが重なった。

 生徒の約9割が進学する県立高で、練習は平日放課後の2時間と休日のみ。グラウンドはサッカー部や陸上競技部と共用で、本塁から左翼の距離は約60メートルと公式戦の球場よりはるかに短く、外野のノックもままならない。本土での公式戦や練習試合に行くにはフェリーとバスで片道数時間を要し、1回の遠征で数十万円の費用がかかる。

 制約の中、選手たちは、長崎県の波佐見高で選手として夏の甲子園に出場した坂本徹監督(40)と話し合い、個々の課題を克服する練習を重視。一人一人のレベルアップでチームの力の底上げを図った。

 迎えた2024年秋の県大会準々決勝。エースの浦上主将はその夏の甲子園に出場した創成館を完封した。準決勝では、中学時に別の学校でライバルだった浦上主将と山口廉斗投手(2年)が継投して21年センバツ出場の大崎に零封勝ち。初出場した九州地区大会は、日高選手を中心とした打線が奮起して8強入りした。大分県で開かれた大会のスタンドには島外で暮らす大勢の壱岐卒業生たちが駆け付け、島の絆でつながった応援で選手たちをもり立てた。

 地元の長崎県壱岐市は24日、島内の住宅や事業所など計約1万3000戸が受信する防災無線で壱岐のセンバツ初出場を伝え、「更なるご声援をお願いします」と呼びかけた。市役所には「決まって本当に良かった」などと喜ぶ市民からの電話が数件入ったという。

 坂本監督は「これまで頑張ってきた結果を評価してもらえたと思う」とホッとした様子。浦上主将は「壱岐から甲子園という夢がかない、とてもうれしい。地域の人たちを活気付けられるような思い切ったプレーで、1勝を目標にみんなで頑張りたい」と意気込んだ。【川島一起、尾形有菜】