例年、シーズン前の順位予想で降格候補に指名されるのが、J2からの昇格チームである。今季であれば、徳島ヴォルティスとアビ…
例年、シーズン前の順位予想で降格候補に指名されるのが、J2からの昇格チームである。今季であれば、徳島ヴォルティスとアビスパ福岡の2チームとなる。
無理もない。いくらJ2でいい戦いをしていても、ひとつ上のカテゴリーでどこまでやれるかは、やはり未知数。テクニックやプレー強度、判断スピードといった部分でも格差があるため、J2でできていたことがJ1ではできなくなることも少なくない。
結果、"J1仕様"へのマイナーチェンジを余儀なくされ、継続性を保てなくなり、迷走する。そんなチームは、過去にも多くあった。

ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ19歳の藤田譲瑠チマ
J2がスタートした1999年から昨季までの22年間で、J1に昇格したのは延べ56チーム。うち1年でJ2に戻ったのは18チームに及ぶ。
降格がなかった昨季の2チーム(柏レイソルと横浜FC)を除けば、確率的には54分の18となる。これを多いと見るか、少ないと見るかはそれぞれの感覚だろうが、3分の1がJ1の壁に阻まれているのは事実である。
徳島も初めてJ1に昇格した2014年はわずか3勝しか挙げられず、最下位で降格の憂き目にあった。福岡にいたっては2006年、2011年、2016年と、3度も昇格1年目で降格という屈辱を味わっている。さらに今季は4チームが降格するレギュレーションであり、残留のハードルはより高まっているのは間違いないだろう。
一方で、昇格チームが躍進したケースもある。
2009年のサンフレッチェ広島(4位)、2010年のセレッソ大阪(3位)、そして2011年の柏レイソルと2014年のガンバ大阪は、昇格1年目で優勝という快挙を成し遂げている。そもそもJ1レベルのチームだったのは確かだが、いずれのチームもJ2で確固たるスタイルを築き上げ、J1の戦いにつなげたことに変わりはない。
確固たるスタイルを持つという点では、今季の徳島も当てはまる。スペイン人のリカルド・ロドリゲス監督の下、4年間にわたってベースを築き、昨季のJ2で圧倒的な強さを披露した。
臨機応変なポジショニングでボールを保持する時間を増やし、コンパクトな陣形を保ってトランジションの速さを実現。能動的に試合を進めることもできれば、相手のウイークポイントを突く戦いもできる。現代的なそのサッカーの根幹は、リカルド・ロドリゲス監督が去ってもそう簡単には崩れないだろう。
後任に就いたのは、同じスペイン人のダニエル・ポヤトス監督。継続性を重視して選任された新たな指揮官の下、戦いのベースは大きく変わらないと思われる。
ただし、新型コロナウイルスの影響で新監督の入国が遅れ、指揮官不在のまま新シーズンをスタートせざるを得なかったのは、小さくないダメージだっただろう。開幕から5試合勝利なしと、大きく出遅れてしまった。
それでも、前任者のやり方を知る甲本偉嗣コーチの下で徐々にJ1の水に慣れていくと、第6節からは3連勝を達成。そして迎えた第9節、徳島は昨季までの監督が率いる浦和レッズとの一戦に臨んだ。
試合は0−1で敗れたものの、徳島の戦いぶりは実に勇敢だった。とりわけ、前半は素早いボール回しと即時奪回の意欲が高く、相手陣内で試合を進める時間が長かった。「前半の内容は徳島が上回っていたと思う」とリカルド・ロドリゲス監督も、"教え子たち"の奮闘を称えている。
守りを固めて、一発のチャンスにかける。かつての昇格組にはそんなチームが多かったが、徳島はボールを大事にする自らのスタイルを保ち、最終ラインも高い位置を取って相手を押し込む戦いを実現していた。同様のスタイルを目指す浦和がまだ発展途上にあったこともあるが、組織の完成度で言えば徳島が明らかに上回っていただろう。
中2日で行なわれたC大阪との一戦でも、徳島はアグレッシブな姿勢を示し、2−1で勝利を収めた。これで、開幕10試合で4勝2分4敗。指揮官不在のなかで堂々たる戦いを見せている。
昨季からのメンバーを基盤とし、大黒柱のMF岩尾憲を中心とした組織力の高さは、J1でも十分に通用することを証明している。個々に目を向けても、キラリと光るタレントを見つけることができる。
なかでも際立つのは、19歳の藤田譲瑠チマだ。今季、東京ヴェルディから加入したボランチは、高い身体能力を武器に鋭い寄せからボール奪取を連発。躊躇なく前線に送り込む縦パスの精度も高く、攻守両面で絶大な存在感を放っている。
川崎フロンターレからのレンタルで加わった宮代大聖も面白い。20歳のストライカーは、中央だけでなくサイドにも対応して攻撃にアクセントをつけるとともに、エリア内では巧みな身のこなしから強烈な一撃を叩き込む。C大阪戦では鮮やかなターンから先制ゴールを奪うなど、ここまですでに3得点とエース級の活躍を見せている。
確固たるスタイルに、新たに加わった若手がすぐさまフィットし、上積みをもたらす。今の徳島には、理想的なチーム作りの流れが生まれていると言えるだろう。
今後の焦点は、新監督の手腕となる。3月30日に入国したダニエル・ポヤトス監督は、14日間の待機期間を経て、4月17日の鹿島アントラーズ戦から指揮を執ることが濃厚だ。
レアル・マドリードのアカデミーやギリシャのパナシナイコスを率いるなど欧州での実績も豊富な新監督は、すでに形のある徳島にどのようなエッセンスを加えていくのか。そのプラスアルファが、残留の生命線となるかもしれない。