「高校生とか10代の選手や、これからゴルフを始めるような若い子たちには、刺激を与えられたのかな、と。今までだったら、日本人はメジャーで勝てないんじゃいか、という認識があったかもしれないけど、僕がメジャーチャンピオンになって、それを覆すことが…

「高校生とか10代の選手や、これからゴルフを始めるような若い子たちには、刺激を与えられたのかな、と。今までだったら、日本人はメジャーで勝てないんじゃいか、という認識があったかもしれないけど、僕がメジャーチャンピオンになって、それを覆すことができたと思うので。これからも、そういう若い世代にいい影響を与えられるようにがんばっていきたい」

 今年の海外メジャー第1弾となるマスターズで、歴史的な快挙が成し遂げられた。松山英樹が4日間通算10アンダーで優勝し、日本人初のメジャータイトルを獲得したのだ。



4日間、安定したプレーを見せてマスターズ優勝を飾った松山英樹

 松山自身、快挙達成への手応えは事前にあったのかもしれない。その辺り、大会前のコメントでも少し匂わせている。

「(今年で出場10回目のマスターズを前にして)過去、いいことも、悪いことも、このコースではいっぱい経験してきましたし、区切りの年でもある今回は、いいプレーができるようにがんばりたい。今週はグリーンがタフなので、マネジメントと忍耐力がすごく大事になってくるんじゃないかな、と。

(昨秋の大会とは)コースコンディションも違うし、パトロンがいる、いないという違いも感じている。そういう意味でも、今週は"楽しみな一週間になる"と思っています」

 そして初日、松山は1イーグル、2バーディー、1ボギーの「69」。パッティングが冴えて、3アンダー、2位タイと好スタートを切った。

「ここまでグリーンが硬いこと、しかも乾いているグリーンは初めて。その分、ちょっと戸惑いはあったけれど、(過去9回プレーした)今までのことを生かして、いいプレーができたと思う。

(先週のオーガスタナショナル女子アマチュアでは梶谷翼選手が日本人初優勝を決めた)彼女は本当にすごいことをやった。僕もそれに続いていけるようにがんばりたい」

 2日目、多くの選手がスコアを伸ばすなか、松山は1イーグル、2バーディー、3ボギーの「71」。スコアはひとつ伸ばすだけにとどまったものの、全体的にはティーショット、アプローチ、パットともに安定していた。その結果、通算4アンダー、トップと3打差の6位タイという好位置をキープした。

「(グリーンの硬さは)見た目には変わらないけど、打っている球のスピードはだいぶ遅くなった印象。(週末に向けて)いいプレーができればチャンスがあると思うので、まずは明日、いい位置でしっかり終われるようにしたい」

 迎えた3日目、松山は「ムービングデー」に相応しいプレーを披露。1イーグル、5バーディー、ノーボギーという他の追随を許さないラウンドで、一気に7つもスコアを伸ばした。

 この日は、とにかくショットが切れていた。バーディーチャンスにつける精度の高いショットを連発し、通算11アンダー、2位に4打差をつけての単独トップに浮上。日本ゴルフ界の悲願とも言える、初のマスターズ、初のメジャー制覇をグッと手繰り寄せた。

「(サンダーストームによる中断後も)うまくプレーできたかなと思う。この3日間は、あまり(気持ちに)波を立てることなく、怒らずにプレーできた。(最終日の)明日も、そういうことが大事になってくる。それができれば、すごくチャンスがあるんじゃないかな。

(マスターズでは)トップで最終日を迎えることはなかった。初めてのことなので、自分でも不思議な感じ。自分ができる準備をして、明日を迎えたい」

 日本中が注目した最終日、序盤の松山は落ち着いていた。1番でボギーを叩くも、2番でバーディーを取り返し、8番、9番でも鮮やかなバーディーを奪取。フロント9を終えて13アンダーまで伸ばし、後続に5打差をつけてバックナインに向かった。

 もはや優勝は手が届くところまできていた。だが、オーガスタの女神はそう簡単には微笑んでくれなかった。12番でボギーを喫すると、15番ではセカンドショットを奥の池に入れてボギー。16番でも連続ボギーを叩いて、苦しい状況に陥った。

 しかし一方で、他の上位陣も勝負どころでミスを犯して伸び悩んだ。そうして、2位に2打差をつけて最終18番を迎えた松山は、最後にボギーを喫しながらも通算10アンダーでフィニッシュ。松山がついにメジャー制覇の夢を、それも最も重要視していたマスターズで叶えた。

「今日は思いのほか、早く起きてしまって。そこから、いつもなら寝られるのに、寝られなかった。1番のティーグラウンドに立った時は、最終組で、しかもトップでいるということを考えたら、すごくナーバスになってきて......。それでも、最後の18番をやり遂げようと、いいプレーをして終わろうと思って、がんばった。

 今年に入ってからは、先週までの試合で一度もトップ10に入っていないし、優勝争いもしていない。だから、当初は(自分でも)期待していなかった。けど、水曜日の練習の最中に、ショットにいいフィーリングが戻ってきているかもしれないと感じて。最後のほうは荒れてしまったけど、3日目まではすごくいいティーショット、いいセカンドショットが打てた。(優勝できたのは)そこが要因かな、と。

(日本に帰国しての反響は)どうなるか想像はつかないけど、このグリーンジャケットを持って帰れることがすごくうれしい。それで、どういう反応があるのか、楽しみたい」

 待望のメジャーチャンピオンとなった松山。これで、彼が抱えていた"重荷"も下せたのはないだろうか。今後のさらなる活躍が期待される。