11日の法大戦に先発すると、7回を投げ6安打1失点11奪三振と好投

 甲子園でも好投した左腕が神宮の舞台でも躍動している。11日の法大戦で先発した慶大の増居翔太投手(3年)。10日に法大・三浦銀二投手(4年)に62年ぶりとなる「ノーヒットワンラン」を喰らった重苦しい雰囲気を振り払うような快投を演じた。

 初回、先頭の海崎雄太(3年)を2球で追い込むと、139キロの直球で空振り三振に仕留めた。その後、味方のエラーで走者を出すも、「次のバッター、次のバッターと切り替えて落ち着いて投げることができた」と、5番・後藤克基(4年)からアウトコースの直球で空振り三振を奪い、颯爽とベンチへ戻っていった。

 2回は3者連続空振り三振。堀井哲也監督も「あの回で今日は結構いけるんじゃないか」と好投を確信した。4回には先頭に二塁打を許すも、続く打者のバントで素早く三塁に送球してタッチアウトに。ピンチでも動じることなく、ポーカーフェイスで淡々とコーナーに自分のボールを投げ分け、打者を打ち取っていく増居のピッチングスタイルを存分に発揮した。

 6回には先頭の齊藤大輝(3年)に高く浮いた直球を左翼席に運ばれたが、その後はしっかりと切り替え、この回のアウトをすべて三振で取った。「体力的にはまだ全然いけたかなと思う」と、7回121球を投げて1失点。「調子は良くて、これまでの中ではかなりいい方」と納得のいく投球で、慶大の今季初勝利に大きく貢献した。

138キロの直球でも、バットが次々と空を切る

 彦根東高(滋賀)時代に2度、甲子園に出場した。圧巻だったのは3年春の花巻東戦。先発した増居は、最速140キロながら9回までに14三振を奪い、ノーヒット投球を続けた。味方の援護に恵まれずに延長戦の末に敗れたが、黙々とキレのある球を投げ込み、三振を奪う姿が印象に残っているファンも多いはずだ。

 身長171センチ68キロと、体が大きくもなければ、球速が特段速いわけでもない。法大の先発が188センチの山下輝(4年)ということもあり、マウンドに立つ姿はより小さく映った。だが、法大の打者からすれば、マウンドに立つ増居の存在は大きく見えたはず。スピードガン表示は130キロ後半~140キロでも、打者は振り遅れ、バットが次々と空を切る。まさに“不思議なボール”だ。

 奪った11個の三振の中で10個が空振り三振。そのうち8個を直球で奪った。最速は144キロだったが、三振を奪った球は139キロから141キロの間。相手打者たちは140キロの“剛速球”にタイミングがまったく合っていなかった。120キロ台のスライダー、110キロ台の緩いカーブも織り交ぜ、ここぞの場面でクイックも使って翻弄した。

 堀井監督も「(直球が)非常にキレていました。相手が嫌がっていた」と称賛。本人はその直球について「よく言われるんですけど、僕はあんまり認識していなくて……体が華奢だからそう見えるのかなと思っています」と謙遜したが、誰もが認める増居の“武器”であることは間違いない。

 これでリーグ戦通算3勝目。先発では初の勝ち星となった。「7回まで投げられて、自分の中では価値のある1勝になったかなと思います」。10日に先発した森田晃介(4年)に続き、今後も2試合目の先発を任されることが予想される。春季リーグのマウンドで、魔法の直球を操る左腕の投球から目が離せない。(上野明洸 / Akihiro Ueno)