過去から現在を含めた日本人サッカー選手で、各ポジションなどでナンバーワンと言える選手は誰なのか。同じトップレベルを経験し…
過去から現在を含めた日本人サッカー選手で、各ポジションなどでナンバーワンと言える選手は誰なのか。同じトップレベルを経験した目線で、これを元選手に語ってもらう。今回はかつて日産自動車、横浜マリノス、日本代表で、名ドリブラーとして活躍した、水沼貴史さんが登場。「コテコテの」という条件で、歴代日本人ドリブラーランキングを決めてもらった。
5位 齋藤学(名古屋グランパス)
学は小学4年生くらいから知っていて、当時からあのままのプレースタイルなんですよね。キレのあるドリブルをしては、シュートを決める子どもでした。足元で細かなテクニックを駆使するというより、一瞬のキレで抜いていくタイプのドリブラーです。
「エヒメッシ」(愛媛FC時代)なんて言われていた頃、いちばん乗っている時は左サイドからカットインで「打つぞ」と見せて、フェイントで3人、4人とかわしてシュートを決めるくらい、切れ味の鋭さがありました。
彼は目の前の1人目は自分の形で抜ける自信があるので、そのあとの2人目、3人目のDFがどう来るかを見ながら、仕掛けられるくらいの境地にあったと思います。ただ、仕上げの部分では雑なところがある。
もっと日本代表で活躍する姿を見たかったですが、良い時にケガをしてしまった部分がありました。ただ、この先もっと活躍できると思います。まだまだ見ていたいドリブラーですね。
4位 田中達也(アルビレックス新潟)
今はアルビレックス新潟でプレーしていますが、浦和レッズ時代の彼はコテコテのドリブラーでした。かつてアルゼンチン代表で活躍していたアリエル・オルテガのような、アジリティのあるキレキレのドリブルがすごかったですね。
僕は彼のようなドリブラーを、昔から『クランク』と言っています。自動車教習所で練習した、あの直角に曲がっている道路です。田中はカクカクしたクランクを、曲がっていくような感じでドリブルをしていました。体のキレとストップ&ターンで、普通の人にはマネできないような小回りの利くドリブルで、DFを手玉に取ってきました。
正直、ああいうタイプは息の長い選手ではないと思っていたけど、40歳手前になった今でもプレーしているのはすばらしいと思います。当時のようなキレやスピードはないけれど、スタイルを変化させながらプレーしつづけられる柔軟性もあったんだなと感じさせられました。
3位 伊東純也(ゲンク)
近年、右サイドから左利きの選手がカットインで突破するのが主流になってきているなかで、伊東純也のように右利きで縦に突破できる選手は貴重だと思います。ワイドに張って勝負ができれば、チームとしてハーフスペース(サイドと中央の間)の使い方にも変化が生まれてくるでしょう。
彼のように純粋に縦突破ができるドリブラーは、日本だけではなく、海外含めてもそれほど多くはないタイプだと思います。スペインのヘスス・ナバス(セビージャ)、イタリアで言えばアントニオ・カンドレーバ(サンプドリア)のように、縦にグイグイいけるドリブラーは見ていても面白いですよね。
ベルギーのゲンクでは得点能力も発揮していて、プレーの幅や質がさらに向上している印象です。これでクロスの質がもう少し向上すれば、もっと上のレベルの選手になれるでしょう。日本代表でも同タイプの選手はいないので、先発で使うのはもちろんだけど、ベンチに置いてジョーカーとして起用しても面白い存在だと思います。
2位 松井大輔(サイゴンFC)
松井はトリッキーな仕掛けに秀でた選手です。普通の選手とは違う幅、間合いを持っていて、相手が予想もしないタッチで裏をとれるタイプ。2010年南アフリカW杯では、右ウイングで大きく貢献したドリブラーですね。
フランスのリーグ・アンで活躍できたのが、個人的には評価したいところです。フランスはアフリカ系の選手が多くて、日本人とは足の出方とかスピードが全然違うなかで、あれだけドリブルで勝負できていたのはすごいことだと思います。
それからフランスは荒いピッチも多く、ドリブラーとしては決してやりやすいとは言えない環境です。でも、南米の選手、とくにディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)なんかもそうでしたが、凸凹のピッチでどこでボールがバウンドするかわからないようなところを普通にドリブルしていくんです。彼らは弾んだボールへの反応が早いし、タッチが柔らかくて正確だから、どんなピッチでも普通にドリブルできてしまうんですよね。
そういうピッチでもドリブルで突破できるのは、本当にテクニックがある証拠。松井もフランスであれだけ活躍できたのは、本物のテクニックを持ったドリブラーだということですね。

写真左から乾貴士、松井大輔、伊東純也。違うタイプのドリブラーが上位3人にランクインした
1位 乾貴士(エイバル)
乾はとにかく、『サッカー小僧』という言葉がぴったりのドリブラーですよね。ドリブルのタイプとしては、サイドから中央へスッと入っていくのが得意な選手。ファーストタッチがうまいので、一気にスピードに乗って、細かなタッチで相手の逆を取りながら突破していけます。「なんでこんなにスルスルと抜けるんだろう?」と思わせられた選手の代表格です。
彼が野洲高校から横浜F・マリノスに入団した当時、ちょうどコーチをしていて、初めて見た時は右足しか使わないから、もっと左足も使えばいいのにと思っていました。パスも右足のアウトサイドばかりで、ミスパスも多かった。コーチとしてはもっと正確にパスを出せるように改善すべきだとは思ったけれど、アウトで出すことで相手の意表を突いたりしていたので、そこは消してはいけないなと。余計なことは言わず、やりたいようにやらせたほうがいいと考えた選手の一人でした。
自分の武器を磨くための練習量も人一倍あるのは、入団当時から目の当たりにしてきました。そうやって自分のスタイルを貫きながら、ラ・リーガで活躍するまでの選手になりましたからね。ドリブラーの1位は彼を推したいと思います。
水沼貴史
みずぬま・たかし/1960年5月28日生まれ。埼玉県出身。浦和南高校、法政大学で全国優勝を経験。JSL日産自動車でも数々のタイトルを獲得し、チームの黄金時代を築いた。日本代表では国際Aマッチ32試合出場7ゴール。Jリーグスタート時は横浜マリノスで3シーズンプレー。引退後は、横浜F・マリノスのコーチや監督を務めた。現在は解説者として活躍中。