八村は「どこからでも攻めてくる」 今シーズン2度目となるトロント・ラプターズとワシントン・ウィザーズの対戦を翌日に控えた…

八村は「どこからでも攻めてくる」
今シーズン2度目となるトロント・ラプターズとワシントン・ウィザーズの対戦を翌日に控えた日本時間4月5日(アメリカ時間4日)、ホームのラプターズは本拠としているタンパで練習を行い、その後ニック・ナースHCとディアンドレ・ベンブリーが会見に応じた。
チームは2日前の対ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦で130-77という大勝を収め連敗を4で止めたあとということもあり、会見もどこかリラックスした雰囲気があった。
翌日の対ウィザーズ戦は渡邊雄太と八村 塁の「日本人対決」が期待される注目の一戦。ナースHCにはウォリアーズ戦勝利後の会見で八村について質問したが、その段階では「詳しく見ることができていない」という回答だったので、この練習後の会見であらためて質問を投げかけてみた。ナースHCは実際に八村のプレーをチェックした様子で、「彼は進歩を遂げていますね」と切り出した。「彼はどこからでも力強く攻めてきます。ゴール周辺ではいくつか、彼向けのプレーもあるようです。ショットも心地よく打っていますね」
ここまで話して、ナースHCは八村の状況をスタッフに確認した。前日、ウィザーズはダラス・マーベリックスとの試合があったが、八村はこの試合を右肩の張りにより欠場していたからだ。スコット・ブルックスHCは、八村とブラッドリー・ビールという二大得点源の欠場で87-109と元気なく敗れた後の会見で、「復帰がいつになるかはわかりません」と答えていた。
この時点(日本時間5日の朝5時頃)で翌日の対ラプターズ戦に八村が出場できるかどうかは“questionable(疑わしい)”。前回両チームが対戦した際(アメリカ時間の2月10日)は渡邊が前日に左足首をネンザして欠場となり、期待された日本人対決は見られなかった。今度は八村の方が…、とファン心理として心配になる思いはナースHCの胸にもあるようだ。「できれば大丈夫であってほしいです。彼がプレーできるといいですね。今シーズンは最後の対戦でしたかね? 今回が最後のチャンスかもしれませんが…(実際には日本時間5月7日[金]にもう一度チャンスがある)。いずれにしても、彼は頑張っていますし、昨年から今年にかけて非常に良くなっていると思います。非常に良いプレーヤーですね」
この回答は、ナースHC自身の英文回答では以下のような流れだった。
“He’s really making stride. I think he’s doing it from all over, showing some good athleticism. They’re running a bunch of stuff for him at the rim. It feels…., he looks really comfortable out there shooting the ball. (Can I just check…, is he in or out? But they’re giving us the…) So he’s questionable for tomorrow. Hopefully, hopefully he’ll be okay and be able to play. We…, I don’t think if we play the Wizards again this year or not, do we? So this would be the last chance but…. No, he’s really done a good job, I think, showing great improvement from last year to this year and continue to get better. I like him as a player a lot.”
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コーチ哲学の違いを示すロング・ツーの考え方
八村と渡邊のプレー、ラプターズとウィザーズのプレーは当然さまざまな違いがあるが、その一つにショットチャートの違いがある。渡邊のそれは3Pエリアとペイントにシューティングスポットが集中しているのに対し、八村は、上記のコメントでナースHCも述べているように、どこからでもショットを狙ってくる。特に、3Pラインの外側でボールを受けたときにディフェンダーがクローズアウトしてくると、絶妙のショットフェイクから一つドリブルしてアークの内側に入り、ロング・ツーを打つシーンがたびたび見られる(極端にロング・ツーが多いわけではないが、ロング・ツーでも躊躇せず、リズムが良ければ打ってくる)。
ラプターズとウィザーズのショットチャートを比較すると、これらが偶然ではないだろうことがうかがえる。その点について、「あなたのプレーヤーはあまりそうはしないですよね」と問いかけると、ナースHCは「以前、カワイ・レナード(現ロサンジェルス・クリッパーズ)という男がいましたが、彼は打っていましたね。サージ・イバカ(同じく現クリッパーズ)、彼もそうでした。あたらしくやってきたゲイリー(トレントJr)も打ちます」と答えた上で、「コーチ哲学の違い、やりたいことが違うんです」と説明した。
ナースHCはどちらかと言えば、3Pとペイントでの得点を強く意識していることが、ショットチャートから見て取れる。その点がやはり考えの違いとして捉えられるのかだろう。ただ、かたくなにその考えに縛られてはいないだろうことを、次のようなコメントで明かした。「かつて私は至近距離で得点するか、そうでなければ打たないという考えが強かったですが、(ロング・ツーを)どんどん狙っていいプレーヤーがいると考えるようになりました。それが正解のケースがあるんです。ショットクロック(の残り時間)が影響することもあるし、他にも多くの場合でそうすべき理由が見つけられるでしょう。まずは2Pのレンジで攻めてから3Pショットを打ち始めたいプレーヤーもいます。試合のリズムの中でそうしたいプレーヤーもいます。でも、これはコーチ哲学の違いで、どちらかが正しく、どちらかが間違っているということではないと思います。2得点を獲りにいく攻め方で何度もチャンピオンシップを獲得したチームがあるわけですからね」
2つ目の質問に対するナースHC自身による英文での回答は以下のような流れだった。
“We used to have a guy named Kawhi Leonard, (laugh), he used to take some of those and Serge Ibaka would take some. I think it’s…, Gary’s taking some now, our new player Gary Trent. It’s…, I think it’s different coach’s philosophy and different…, what they wanna do.”
“I used to…, I came from…, a very short-two you scored or we didn’t take any of them ever. But I kind of think that there are certain guys that can take them a lot of times. It is the right play. A lot of times the shot clock is in play. And then a lot of times there’s other reasons maybe for that. You just try to get the guy going first from two. Then he can start shooting threes. Some guys feel better that way in the rhythm of the game. But I think that it’s again coach’s philosophy and neither one is right or wrong ’cause I think you can…, we can all sit here and picture a lot of guys who made two point shots with a lot of championship rings.”
こうした考え方の違いを反映する両チームのプレーの中で、もしも渡邊と八村のマッチアップが実現するとしたらどんな応酬になるのか。アウトサイドでの八村は、不用意にクローズアウトしていけば上記のようなドリブル一つからのプルアップで得点できるので、最初から常に、相当タイトについていかなければいけなくなるだろう。また、ラプターズがオフェンス・リバウンドを頑張らないと、トランジションで八村がフロントランナーとなり、ラッセル・ウエストブルックからのタッチダウン・パスを受けてダンク連発といったことも想像できる。
ビールと八村の出場が微妙なウィザーズに対し、ラプターズはバックコートのフレッド・ヴァンヴリートの出場が微妙で、カイル・ラウリーは欠場の見通し。ヴァンヴリートが出られない場合にはマラカイ・フリンをスターターに起用するとナースHCは話していたが、そうなればフリンにとってはウエストブルックとマッチアップする非常に大きなチャレンジとなる。
八村にはディフェンス面で、こと渡邊に関しては得点の阻止だけでなくキラーパスを出させない工夫と、オフェンス・リバウンドを獲らせないフィジカルなプレーが必要だ。
一方渡邊に最も期待されるのはリバウンドとディフェンスなのは間違いない。オフェンス・リバウンドを獲れれば、ウエストブルックと八村によるトランジションの脅威を減らせる。それはリーグ屈指のスピードを誇るウィザーズをスローダウンさせることにつながるだろう。オフェンスでもしも3Pショットが1本、2本決まると、ウィザーズにとっては2ケタ得点とられたのと同じほど、あるいはそれ以上にダメージになるのではないだろうか。それはラプターズがやりたいバスケットボールができている証しと取れるからだ。
日本人対決の可能性に加えてプレーオフ、あるいはプレーイン・トーナメント進出に向けた競争でも両チームはしのぎを削っている(ラプターズが19勝30敗でイースタンカンファレンス11位、ウィザーズが17勝31敗で同12位)。ナースHCは「タンクという考え方は語るに足りない」と言ったコメントもしていた。両チームのロスター全員が元気にプレーできることを願うばかりだ。
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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)