今季J1は、日本代表戦の開催にともなう中断期間を前に、第6節までを終えている。 スタートダッシュに成功したクラブ、出遅…
今季J1は、日本代表戦の開催にともなう中断期間を前に、第6節までを終えている。
スタートダッシュに成功したクラブ、出遅れたクラブと成績はさまざまだが、今季開幕からのおよそ1カ月を振り返り、各クラブの新戦力をチェックしてみたい(記録は3月21日開催分の試合終了時点)。
まず名前を挙げなければいけないのは、セレッソ大阪のFW大久保嘉人(東京ヴェルディ→)をおいて他にいないだろう。
開幕戦から3試合連続を含む5ゴールで、得点ランキング3位タイ。3年連続J1得点王の輝かしい実績があるとはいえ、昨季はJ2でさえ燻っていたとは思えない、38歳の鮮やかな復活劇である。
また、昨季16位と低迷したチームの立て直しに大きく貢献しているのが、清水エスパルスの新戦力。日本代表の正GKでもあるGK権田修一(ポルティモネンセ/ポルトガル→)をはじめ、DF鈴木義宜(大分トリニータ→)、MF中山克広(横浜FC→)ら、J1実績のある選手たちが、主力となってチームを引っ張っている。
とはいえ、今季J1クラブで活躍している新戦力は、彼らのようにすでにJ1での実績がある選手ばかりではない。
昨季J2で結果を残して"個人昇格"を勝ち取り、初のJ1舞台で頭角を現している選手が少なくない。

好調サガン鳥栖で活躍している新加入の山下敬大
なかでも出色の働きを見せているのは、サガン鳥栖のFW山下敬大だ。
レノファ山口で2年、ジェフユナイテッド千葉で1年とJ2を経験した山下は、今季鳥栖に新加入。開幕スタメンの座を勝ち取ると、これまで全6試合に出場(うち5試合先発)し、得点ランキング7位タイとなる3ゴールを記録している。J2時代から積極的にゴールへ向かう姿勢は際立っていたが、それが早くも実を結んでいる印象だ。
同じ鳥栖のMF飯野七聖も、山下に負けず、鳥栖に不可欠な戦力となっている。
一昨季ザスパクサツ群馬入りした飯野は、1年目はJ3で、2年目の昨季はJ2でプレー。今季鳥栖に加わったばかりだが、攻守両面で右サイドを幅広くカバーする様子は、初めてJ1でプレーするとは思えないほどだ。ふたりの新戦力に引っ張られるように、チームも4勝2分けの無敗と絶好調で、堂々3位につけている。
鳥栖同様、個人昇格組の活躍が目立つのは、浦和レッズである。
今季、FC琉球から移籍加入のMF小泉佳穂が全6試合に先発出場。同じく栃木SCから加入のMF明本考浩も全6試合出場(うち4試合先発)と、ふたりの個人昇格組が主力としてピッチに立ち続けている。
大卒ルーキーのMF伊藤敦樹も全6試合に出場(うち5試合先発)しており、ピッチ上の"新鮮度"はかなり高い。鳥栖とは対照的に浦和は13位と苦しんでいるが、新戦力の伸びしろをチームの成績にもつなげたいところだ。
また、3勝3分けの無敗で5位につける好調・サンフレッチェ広島にあって、最終ラインを支える貴重な働きをしているのが、DF今津佑太だ。
ヴァンフォーレ甲府でJ2を3シーズン経験した今津は、今季広島に加入。これまで5試合出場(うち4試合先発)と、主力が固定されがちだった広島のDFラインに新風を吹き込むどころか、ポジションを確保してしまいそうな勢いだ。
少し変わったところでは、C大阪のFW加藤陸次樹が、途中出場のジョーカーとして貴重な働きを見せている。
今季、ツエーゲン金沢から移籍加入した加藤は、先発出場こそないものの、全6試合に途中出場。デビュー4戦目には、持ち味である背後への飛び出しから、待望のJ1初ゴールも記録した。
そして、J2時代とは異なるポジションで新境地を切り開こうとしているのは、清水のFWディサロ 燦シルヴァーノである。
昨季はギラヴァンツ北九州のエースストライカーとして活躍し、J2で日本人トップの18ゴールを記録したディサロだが、清水ではインサイドMFとしてプレー。全6試合に出場(うち1試合先発)と試合経験を重ねながら、意外な適応能力の高さを見せ、プレーの幅を広げている。
一方で、個人としては成果を残しながらも、それがチームの結果につながらないジレンマを抱えている選手もいる。
今季、V・ファーレン長崎からベガルタ仙台へ移籍加入したMF氣田亮真は、全5試合に先発出場。個人昇格の新戦力ながら、左サイドMFの定位置をつかみ取っている。
だが、昨季も17位に終わった仙台は、ここまで1分け4敗といまだ勝利がなく、J2降格圏の18位に沈んだまま。氣田の持ち味であるキレのいいドリブルも流れを変えるには至っておらず、悔しい思いをしていることだろう。
また、今季モンテディオ山形から湘南ベルマーレに移籍加入したMF中村駿は、開幕戦からボランチとして先発出場。落ち着いたプレーぶりは、早くも中心的存在となりつつあることをうかがわせていた。
ところが、第2節柏レイソル戦で左足を痛めて途中交代。そのまま戦線離脱となってしまった。その間、湘南は1勝しかできず16位と苦しんでいるだけに、一日も早い復帰が待たれるところだ。
先日行なわれたワールドカップ2次予選モンゴル戦で、代表初ゴールを記録したMF古橋亨梧(ヴィッセル神戸)を代表格として、近年のJ1ではJ2からの個人昇格組の活躍が目立っている。そして今季もまた、シーズンはまだ序盤戦を終えたばかりではあるが、早くもその兆しは見えている。
徐々にチームへの適応も進む第7節からの再開後は、さらなる新戦力の活躍もありそうだ。