今年の春の甲子園でも、ここまで点差のつく試合はなかったんじゃないか。取りも取ったり、14得点。まさに歴史的なゴールショ…
今年の春の甲子園でも、ここまで点差のつく試合はなかったんじゃないか。取りも取ったり、14得点。まさに歴史的なゴールショーだった。
戦前から実力差は明らかだったが、前回対戦で6−0だったことを考えても、ここまでの大量得点はさすがに予想できなかった。途中からモンゴルの選手がかわいそうと思えるほどの容赦のないラッシュは、取っても取っても手を緩めることのない日本の選手たちの集中力と向上心の高さによるものだろう。

今季の好調ぶりを代表でも見せた伊東純也
3月25日に行なわれた韓国戦のスタメンから代わったのは、両サイドバックのふたりのみ。当然、この試合(ワールドカップ・アジア予選)を見据えた一戦だったから、韓国戦のメンバーが主体となるのは予想できた。
とはいえ、対戦相手の実力を踏まえれば、今後を見越したチャレンジのエッセンスを加えることも考えられた。とりわけ、攻撃のバリエーションを増やすためにもタレント豊富な2列目には、何らかの手が加えられるだろうと想像していた。
ところが、森保一監督は左から南野拓実(サウサンプトン)、鎌田大地(フランクフルト)、伊東純也(ゲンク)と、韓国戦と同じ3人を並べた。ここに、指揮官の考えるひとつの最適解を見出せる。
立ち上げ当初の森保ジャパンの2列目は、左から中島翔哉(アル・アイン)、南野、堂安律(ビーレフェルト)だった。技術とスピードに優れる猪突猛進型のこの3人は、高い推進力と即興的な連動性を駆使してゴールを量産。"ビッグ3"と称されるほどの期待感をもたらしていた。
しかし、ケガや所属クラブで不遇をかこっている影響から中島が日本代表から遠ざかると、堂安にはU−24代表の活動も加わり、今回もそちらのチームに招集された(その後、ケガによって辞退)。代わって台頭したのは、鎌田と伊東。欧州で結果を残すこのふたりが、2列目の序列を一気に覆した格好だ。
今回の2連戦で存在感を放ったのは鎌田だ。韓国戦ではカウンターから2点目を奪い、モンゴル戦でもクロスに合わせてゴールを決めている。
技術に優れ、タメを作り、打開もできて、ゴールも奪える。ドイツでたくましさを増すこのアタッカーは、大迫勇也(ブレーメン)の背後に位置し、日本の攻撃にアクセントを加えた。南野を左サイドに押しやり、中央に入ったのも、この万能性の高さによるものだろう。
一方、モンゴル戦で鎌田以上の輝きを放ったのは伊東だ。
2得点3アシストと目に見える結果だけでなく、その他の場面でも右サイドから起点となり、多くの得点チャンスを導き出している。
「チャンスの数からして、最低限の結果かなと思います。前半に1対1を外したところを突き詰めていかないといけない」
伊東はモンゴル戦後、自らのパフォーマンスを冷静に振り返っている。
この試合で意識していたのは、「幅を取る」ことだったという。
「幅を広げたほうが、拓実や大地のスペースが広くなる。相手のサイドバックが気になるようにワイドにとって、中のスペースを開けることを意識しました。所属チームでは中をやることもありますが、今日は張っていたほうが相手は嫌がっていたので、そっちを選択しました」
中央の鎌田はもちろん、逆サイドの南野も、先制点の場面がそうだったように、中でボールを受けたがるタイプ。伊東がワイドに立つことで、ふたりのプレーエリアを広げることが可能となったのだ。
また、同サイドでプレーした松原健(横浜F・マリノス)との関係性も良好だった。横浜FMでもインナーラップを持ち味とするこのサイドバックは、伊東が作ったスペースに入り込み、ボールを受けては多くのチャンスを生み出していた。
中島、南野、堂安のセットは、いずれも中でのプレーを好むタイプ。中央に密集しがちで、3人だけで攻撃を完結できることもあり、サイドバックとの連係性も希薄だった。
しかし今回のセットは、幅を作れる伊東を軸に、中央でタメを作れる鎌田、中に切れ込みゴールに向かうタイプの南野と、3人の特性がそれぞれ違うため、バランス感覚に優れていた。そこに大迫が絡んだ攻撃は、外からでも中からでも打開できる多様性を示した。相手がモンゴルだったということを差し引いても、その攻撃性は高く評価されるべきだろう。
ほかにも日本の2列目には、モンゴル戦で途中出場から2ゴールを奪った古橋亨梧(ヴィッセル神戸)のほか、韓国戦でデビューを飾った江坂任(柏レイソル)、ケガで今回の代表を辞退した坂元達裕(セレッソ大阪)らも候補となる。もちろん、堂安や中島も虎視眈々と復権を狙っているだろうし、原口元気(ハノーファー)の存在もある。またU−24世代には久保建英(ヘタフェ)、三笘薫(川崎フロンターレ)と優れたアタッカー陣が揃う。
これだけのタレントがひしめくのは贅沢な悩みだが、今回の2連戦で指揮官はひとつの確信を抱いたことだろう。新たなトリオが高い機能性を示したことが、この3月シリーズの大きな収穫だった。