日本代表が韓国代表と親善マッチを行なった。熾烈な試合になると思われたが、結果は3-0と日本が快勝。韓国を圧倒した。戦前の…
日本代表が韓国代表と親善マッチを行なった。熾烈な試合になると思われたが、結果は3-0と日本が快勝。韓国を圧倒した。戦前の予想とは打って変わって一方的な展開となった"日韓戦"について、解説者の名波浩氏が分析する――。

まったく怖さがなかった韓国。日本が主導権を握って圧倒した
自分たちの世代には韓国に対する特別な思いというか、ライバル心があるので、日韓戦が決まってから、試合をとても楽しみにしていた。でも、試合を見終わっての率直な感想を言えば、その期待がちょっと大きすぎたかな、と(苦笑)。
自分自身、U-17も、U-20も、オリンピックも、世界大会につながるアジア予選ではすべて韓国に負けてきた。1998年フランスW杯のアジア最終予選で、ソウルで行なわれた試合(1997年/2-0)で勝ったのが初めてのこと。
そういったこともあって、我々世代には日韓戦に対して、他の試合とは違った感情があるけれども、今はもう"日韓戦"という構図そのものが、以前とは違ったものになっている気がする。選手たちも、今の日本の選手には(韓国に対する)特別な思いはないような感じがするし、韓国の選手にしても以前のような、歴史的な背景も踏まえた「日本には絶対に負けちゃいけない!」といった感覚が薄れてきているのだな、ということを改めて感じた。
試合内容について具体的なことを言えば、前選択、つまり前方向へのプレー選択がこれほど少ない韓国には、まったく怖さがないし、魅力もない。3-0で迎えた試合終了間際、DF吉田麻也からFW浅野拓磨にロングパスが通って、相手GKと1対1になったシーンがあったけれど、ああいうプレーをやるのは、本来韓国のはず。
高さのあるFWか、スピードのあるFWを使って、ロングパス1本でフィニッシュまでいくことができる。そうやって、守備側の選択肢を消してしまうことができるのが韓国だし、それを90分間やり切ってくるのが韓国なのに......。今回の韓国からは、そういった"らしさ"が一切見られず、特に前半の戦いぶりは酷かった。
日本も立ち上がり10分くらいまでは、ハイプレッシャーをかけるわけでもなく、どっちつかずの時間になっていた。でもそれは、様子を見なければいけない時間だったからであって、大きな問題はない。逆にそこで、韓国が何かしら仕掛けていてもよかったと思うが......。
そうして、前半10分を過ぎたあたりから、日本の選手がどんどんボールへアプローチに行き出した。ボールを奪ったあとも、FW大迫勇也のポストプレーを中心にして、2列目の鎌田大地や伊東純也、ボランチの守田英正らが前を向ける状況が増えてきた。これで、日本が圧倒的に主導権を握れるようになった。
先制ゴールは前半17分に決まったけど、ゲームを支配するきっかけのひとつになったのは、20分のプレー。この時、日本は自陣左サイドで、初めてテンポよくパスが回り、ボールを右サイドの広いスペースへ持っていくことができた(最後は、右からの伊東のクロスが相手選手に当たり、ゴール前に走り込んだ守田にわずかに合わなかった)。
また、30分にも敵陣で奪ったボールを右サイドでつないでから左サイドへと持っていき、DF佐々木翔がクロスをあげたシーンがあった(最後はクロスを相手選手がカット)。
どちらも得点にはつながらなかったけど、ボールを回すテンポが上がった状態で、フィニッシュに向けてボックス内に3枚、4枚と選手が入ってきていた。そういった形で攻撃に迫力が出るようになっていたのが、前半半ばの時間帯だった。
相手ボランチの間や後ろを狙う意識も、日本のほうが韓国より数段レベルが高かった。狭いエリアでもパスを入れよう。受けたらターンしよう。そういう意識を、みんながきちんと共有しているように見えた。
それにともなって、周りの選手も、連動してオーバーラップしたり、カットインしてきたり、という形を作って攻撃のスイッチが入った。特に右サイドではそうした展開が多く見られ、時間の経過とともに選手たちが連動していった。
一つひとつのパスに対する意識も高く、そこには確固たる意図があった。それだけメッセージ性が込められていれば、受け手以外の3人目、4人目の反応も自然と速くなるというもの。今後もこれをやり続けていれば、いい形をたくさん作っていけるのではないだろうか。
ボールを失ったあとの切り替えにしても、プレスの密集を作るのが早かった。あれは、見ていて非常に気持ちがよかった。ひとりが(プレスに)行ったなと思って見ていると、気づいた時にはもう、3、4人が囲んでいた。その結果、「あっ、これはもう(ボールが)奪えちゃうな」という感じで見ているシーンが多かった。
前半30分すぎからは、日本と韓国でやっていることの質が違いすぎて、さすがに韓国はしんどかったはず。韓国は、あれだけ後ろ向きなサッカーをやっていてハイプレッシャーを受けたら、もう次の選択肢がない。ひとりでふたりをはがさないとチャンスにならない状況だった。
それに対して日本は、狭いエリアでボールを奪い、密集させておいて、広いエリアへ展開する。それをシンプルにやれていた。
そんななか、たぶん森保一監督は「こういうことをやりたいんじゃないかな」と思ったのが、後半7分のシーン。
自陣で奪ったボールを吉田が縦に入れ、守田が前を向いて、そこからサイドを崩していくという展開があって、その際に多くの人数が攻撃に絡んでいった(最後はMF江坂任のシュートが相手GKに防がれる)。
ここでのテーマは、いわば「奪ったあとの質と、チーム全体のゴールへの推進力」。この一連のプレーに、森保監督のやりたいことが表現されていたように思う。
対照的に「やりたいことをやり切れなかったのではないか」と感じたのは、前半34分のシーン。相手FKを守田がうまくカットして、そのままハーフライン付近まで自分でボールを運び、周りの選手もカウンターで一気に上がっていった。でも、守田のパスが乱れて、結局遅攻になってしまった。
世界を相手にするなら、これは絶対に完結させなければいけないプレーだった。2018年ロシアW杯では、日本はベルギーにそれをやられて負けたわけだから。
まして韓国相手に、あんなダラけたカウンターになってしまってはダメ。せめて敵陣深くまで入っていく、パワーと人数をかけてほしかった。
強い相手との対戦を想定した時、森保監督も"そこは"求めているところだと思う。