ラミレスが語る野球人気とパフォーマンス 後編 前編から読む>>【ラミレス氏による「パフォーマンス解説」】 13年間にわた…
ラミレスが語る野球人気とパフォーマンス 後編 前編から読む>>
【ラミレス氏による「パフォーマンス解説」】
13年間にわたる日本での現役時代を通じて、ラミレス氏はさまざまなパフォーマンスを行なってきた。きっかけは前編で紹介したように、来日1年目となる2001(平成13)年のキャンプで、当時チームメイトだった度会博文から「アイーンってやってみてよ」と言われたことだった。
「当時の私は、『一体、何が面白いんだろう?』と意味もわからずにやっていました。でも、みんなが喜んでくれるし、特に子どもたちが大喜びする姿を見て、自分でも積極的に取り入れるようになったんです」

現役時代から、さまざまなパフォーマンスでファンを楽しませたラミレス氏
ラミレス氏による「アイーン」が話題となると、しばらくすると芸人たちから「自分のギャグを使ってほしい」と売り込みが来るようになったという。
「古田(敦也)さんのところに、ダンディ坂野さんから『ゲッツ!』のDVDが送られてきて、私の下に届きました。加藤茶さんは、ヤクルトの沖縄・浦添キャンプまで来てくれて、『カトちゃん、ペッ!』を伝授してくれました。それから、『ラララライ』とか、『カッチカチ』とか、いろいろやったけど、だいたい春のキャンプ中に"今年はどんなパフォーマンスにしようか"って新ネタを集めるようにしていました(笑)」
芸人からの売り込みの中から採用する一方で、ラミレス氏自ら考案したパフォーマンスもいくつかある。たとえば、「ヨロコンデ!」もそのひとつだ。
「ジャイアンツ時代の宮崎キャンプで、いつも行っているお寿司屋さんがあったんです。そこの大将は、何か注文するたびにいつも大声で、『喜んで!』と言っていました。そのフレーズがとても気に入って、"これいいじゃん"って使うようになりました。その後も大のお気に入りで、今でもよく使っています(笑)」
ヒーローインタビューにおいて、ヤクルト時代にはつば九郎と、巨人時代にはジャビットと、「コンビ芸」を見せることも話題となった。
「つば九郎の場合は、勝手に入ってきて、一緒にやるようになりました(笑)。彼の場合は、ああいうのが得意でしたからね。ジャビットの場合は、もっとプロフェッショナルというか、紙に一連の流れも書いて、きっちりとリハーサルをして臨みました。どちらのマスコットとも、とても楽しい時間を過ごすことができました」
自由奔放なつば九郎と、プロ意識の高いジャビット。両キャラクターの個性が見えて、面白い。
【好きなパフォーマンスベスト3は......】
数々のパフォーマンスの中で、「自身のパフォーマンスベスト3は?」という質問をしたところ、ラミレス氏は何の迷いもなく口を開いた。
「第3位は、『ヨロコンデ!』ですね。そして、第2位は、『アイーン!』で、第1位は、『ゲッツ!』です。フレーズ自体も好きだし、カメラからフレームアウトしていく動きも大好きです。その後、『ラミちゃん、ペッ、カッチカチ、アイーン、ゲッツ!』など、いくつものギャグをコンビネーションで組み合わせたけど、いつも、最後は『ゲッツ!』にしました。これはフレームアウトできるからなんです(笑)」
そして、ラミレス氏はまさかの"買収工作"について、カミングアウトしてくれた。
「ホームランを打って、ベンチ前でパフォーマンスをする瞬間がテレビに映されましたよね。あれは、毎回20秒という決まりがあったんです。でも、どうしてもたくさんのパフォーマンスを入れたいから、『頼むから、あと5秒長く放送してほしい』とお願いしました。『きちんとお金を払うから』とも言ったんだけど、『絶対ダメだ』と断られちゃいました(笑)」
長年にわたって、パフォーマンスを追究してきたこだわりが垣間見える発言だった。
ラミレス氏以降、多くの選手がパフォーマンスを披露するようになった。現在でも、さまざまな選手が個性的なパフォーマンスを行なっているが、ラミレス氏の目にはどのように映っているのだろうか。
「最近の選手では、強くて結果も出ているからなのか、ソフトバンクの選手のパフォーマンスが目立っています。(アルフレド・)デスパイネの独特のポーズも個性的だし、ボクシング風にパンチを連打する(ジュリスベル・)グラシアルの動きも面白いし、何よりも松田(宣浩)の『熱男!』は、すっかりファンの間でも定着しましたね。
他球団では、西武の山川(穂高)の『どすこい!』が個人的には大好きです。だから、ベイスターズでは、佐野(恵太)にも『何かパフォーマンスを考えようよ』って提案したんですけどね......」
昨年、首位打者に輝いた佐野恵太には、特に目立ったパフォーマンスの印象はない。ラミレス氏は続ける。
「......佐野には、何度も『やりなよ』って言ったんです(笑)。昨年はキャプテンに抜擢されてプレッシャーもあったのかもしれないけど、キャプテンという影響力のある立場の選手が積極的にパフォーマンスをすると他の選手もやりやすくなるので、中心選手であればあるほど、どんどんやってほしいですね」
ラミレス氏は監督時代、「選手を一軍に残すかどうか、パフォーマンス力で決めたこともある」という。
「野球の能力はもちろん大切ですが、私は選手のパフォーマンス力も重視していました。髙城(俊人)や桑原(将志)がいると、それだけでチームのモチベーションが上がるし、雰囲気がよくなる。それに何よりも面白い(笑)。レギュラーになる前の佐野もそんな選手でしたね」
【ロッテファンの応援にはいつも鳥肌が立っていた】
こうした、「選手発のパフォーマンス」とは別に、「ファン発のパフォーマンス」、つまり「応援」も印象深いとラミレス氏は言う。
「横浜スタジアムでは、山﨑(康晃)が登場する時に、球場全体で"ヤスアキジャンプ"が行なわれます。ああいうふうに、球場全体が一体となる瞬間は、選手たちはもちろん、ファンの人にとっても楽しい空間だと思います。それを経験した子どもたちは、『もう一度、ヤスアキジャンプをしたい!』と、何度もスタジアムに通ってくれるようになるんじゃないかな?」
ラミレス氏自身、「忘れられないファン発のパフォーマンス」があるという。それは現役時代の千葉マリンスタジアム(当時)でのことだった。
「千葉ロッテマリーンズファンの応援は、本当にすごいですね。外野を守っていて、何度も鳥肌が立ちました。試合中にもかかわらず、自分もライトスタンドに行って、『フクウラ、ヒット!』と一緒に応援したくなりました(笑)。どの球場に行っても、ロッテファンはとても熱い。あれも日本の野球における立派なパフォーマンスだと思います。最高ですね」
日本プロ野球において、「パフォーマンスの第一人者」と言ってもいいラミレス氏に「今後のパフォーマンスのあり方」について尋ねてみた。
「パフォーマンスというのは、すでに日本の野球の一部になっていると思います。それを見て喜ぶ人、見たいと思う人はたくさんいますし、それはとても重要なことです。選手たちにも、そんなファンの気持ちをきちんと理解してほしい。パフォーマンスをやるからには、一流の選手であってほしい。その上で、単なる悪ふざけにならないようにバランスに気をつけて、これからも新しいパフォーマンスを見せてほしいですね」
アメリカ・メジャーリーグとはまた違う、日本野球のひとつの文化である「野球とパフォーマンス」。さて、今年はどんな選手の、どんなパフォーマンスが見られるのだろうか。