U-24日本代表対U-24アルゼンチン代表。日本代表が韓国代表に3-0の勝利を収めたその翌日に行なわれた一戦は、U-2…

 U-24日本代表対U-24アルゼンチン代表。日本代表が韓国代表に3-0の勝利を収めたその翌日に行なわれた一戦は、U-24アルゼンチン代表が0-1で勝利を収めた。惜敗というより、両者間には、ちょっとやそっとでは追いつけそうもない差があることを、痛感させられる完敗劇だった。

 先制点のシーンは迫力に満ちていた。前半21分、右サイドでマティアス・バルガス(エスパニョール)が、板倉滉(フローニンゲン)のマークを強引にかわし、ゴールライン際から深々と浮き球を折り返した。中央で合わせたのは192センチの長身、アドルフォ・ガイチ(ベネベント)。高々としたジャンプヘディングで、豪快に叩き込まれるという失点だった。

 決定的シーンはこの他にも2度作られた。ポルトガルでプレーするフェルナンド・バレンズエラ(ファマリカン)が放ったシュート2本は、いずれもクロスバーに嫌われたが、これもまた、日本の攻撃陣にはない力強いプレーだった。防ぎようがないシーンと言いたくなる決定的チャンスを作られた。

 日本もチャンスはそれなりに作った。しかし本当に惜しいシーン、天を仰ぐような決定的チャンスはひとつもなし。となると、この0-1は内容的には0-3に見えてくる。それこそが、実力差を痛感させられた一番の理由である。



U-24アルゼンチン戦で見せ場を作れなかった久保建英(ヘタフェ)

 このU-24アルゼンチン代表と戦わせたかった相手は、日本のA代表。韓国代表より、こちらの方が強化試合の相手に相応しい好敵手だったと言いたくなるほど、アルゼンチンの24歳以下チームは、貫禄さえ感じさせる大人びたチームだった。

 それは日本のサッカー界そのものに存在しない魅力である。マリーシアがないからだと、国民性の違いを指摘されれば、日本は気質的にサッカーに適さない国となってしまう。

 日本は言うならば、健気なまでに大真面目に、もっぱら技術を追求するサッカーで、ここまで台頭してきた。技術だけなら、ここ四半世紀の間、世界で最も上達した国かもしれない。東京五輪を目指すこのチームしかり。4年前(リオ五輪)、8年前(ロンドン五輪)、12年前(北京五輪)のチームと比較すると、格段にうまくなっていることが実感できる。

 日本人選手の技術の進歩を象徴する存在が、かつての小野伸二であり、今日の久保建英(ヘタフェ)になる。それに今回は三笘薫(川崎フロンターレ)が加わった。昨季からJリーグを沸かせている時の人だ。南米予選を首位通過した世界の強豪アルゼンチンに、技術で対抗する構えは整った格好だった。サッカーファンの関心は日韓戦以上に高まっていたはずだ。

 試合前、注目されたのは布陣だった。これまで森保一監督も、代行の横内昭展監督も、もっぱら3-4-2-1で戦ってきた。三笘も、最後に選出された2019年12月に行なわれたジャマイカ戦がそうであったように、3-4-2-1の2シャドーの一角でプレーしたわけだが、森保、横内両氏から高い評価を得ることができずにいた。2020年1月に開催されたU-23アジア選手権(タイ)では、招集外の憂き目にあっている。

 ところが、ご承知のように、三笘はそのタイミングで川崎に入団するや大ブレイク。13ゴール12アシストを挙げ、ベストイレブンにも選ばれた。自慢のドリブル突破を最大の武器にする4-3-3の左ウイングとして、だ。だが、五輪チームが採用する3-4-2-1には左ウイングのポジションはない。2シャドーの一角は、サイドアタッカーではない。ドリブラーにとって技術を発揮しにくい場所だ。

 三笘と森保サッカー、横内サッカーとの相性は悪かった。時の人=三笘をあらためて招集するにあたり、横内代行監督は、布陣を変えるつもりなのか。三笘のために、左ウイングのポジションを用意するのか否か。

「選手の特徴が生きる布陣で戦いたい」と、横内代行監督が試合前に口にしたコメントを耳にすれば、あらかた察しは付いていた。しかし、実際にピッチに4-2-3-1が描かれ、その左ウイングのポジションに三笘が立つ姿を確認すると、これまでの戦術的こだわりは、何だったのかと、五輪チーム首脳陣に対する疑念は大きく膨らむのだった。

 ワントップは田川亨介(FC東京)で、その下に久保。左に三笘、右のウイングに三好康児(アントワープ)を配置する4-2-3-1。

 さらに言うならば、左のサイドバック(SB)には旗手怜央(川崎)が起用された。これも川崎・鬼木達監督のアイディアを拝借したものだ。「選手の特徴が生きる布陣」というより、川崎の成功にあやかった布陣と言いたくなる。旗手もまた、U-23アジア選手権では招集外だった。

 三笘と旗手は後半21分、相馬勇紀(名古屋グランパス)、古賀太陽(柏レイソル)とそれぞれ交代。ピッチを後にした。

 先発した4-2-3-1のアタッカー陣4人では、田川が後半33分、三好が後半42分、それぞれ食野亮太郎(リオ・アベ)、林大地(サガン鳥栖)と交代でベンチに下がっている。

 唯一フルタイム出場したのは、1トップ下で起用された久保だった。メンバー交代6人制で行なわれた試合で、最後までピッチに立つアタッカーは珍しい。エースとして期待されている証と見たが、マジョルカ→ビジャレアル→ヘタフェと渡り歩く中で、思ったほど活躍できていないスペインリーグでの現状が、この試合を見ていると、腑に落ちるのだった。

 ひと言でいえば、選手としてのスケールが膨らんでいない。少年サッカー選手を見ている感じなのだ。ゴールから逆算されていない、立体感に欠けるその場限りのプレーと言うか、プレーが個人的かつ独善的で、連続性ではないのだ。周囲を使うプレー、活かすプレーもうまくない。

 最大の武器はドリブルだ。しかし、ポジションは1トップ下だ。三笘のところでも述べたように、ドリブルには不向きなポジションである。にもかかわらず、ドリブルを仕掛ける。メッシならわかる。マラドーナなら100%納得する。往年のクライフでもまったく問題なしだが、久保には難しい。首をひねりたくなる強引なプレーに見える。久保が真ん中付近でドリブルを開始すると、周囲は傍観するのみとなる。

 惜しいところまではいくので、もうちょっとと、つい期待を寄せたくなるプレーでもあるが、最後まで抜ききれる人は、世界でも数えるほど。バロンドール級の選手のみだ。

 久保の現状はオールマイティーにはほど遠い。ドリブル&フェイントを武器にするウインガーとして、サイドからチャンスメークを図る三笘のほうが、いい選手に見えてしまう。しかし、「1トップ下が一番やりたいポジションだ」と久保はテレビのインタビューで語っていた。横内代行監督も1トップ下でフル出場させた。

 左利きであることも、1トップ下の選手として災いしているように見える。進行方向が読みやすいのだ。両利きの選手はいないが、両利きに見える選手はいる。格闘技で言うところの"半身"の体勢がきつくない選手だ。真ん中の位置で久保が半身の体勢を取ると、攻撃の方向性は限られてくる。相手は守りやすくなる。

 さらに言うならば、相手ゴールを背にしてプレーするポストプレーも得意ではない。1トップの田川が、どちらかと言えば、最終ラインの背後を突く動きを得意にするタイプなので、その下で構える選手には、鎌田大地(フランクフルト)、大迫勇也(ブレーメン)のような魅力がほしい。

 さらに、右で構える三好も半身のきつい左利きだ。三好と久保が隣り合わせでプレーすると、シルエットが重なって見える。同じ選手が2人いる錯覚に陥る。ほぼ同じタイプの左利きなので、コンビとしての相性もよくない。

 縦突破を狙う左の三笘とは異なり、三好は縦を突くことができない。ドリブルを開始すると十中八九、内へ入る。その瞬間、久保的になってしまう。その下で構える右SB菅原由勢(AZアルクマール)とコンビネーションプレーを仕掛けることはまずない。

 三笘と旗手のような関係が、右サイドではまったく築けていないのだ。前日のA代表は、南野拓実(サウサンプトン)と佐々木翔(サンフレッチェ広島)で組む左サイドが、伊東純也(ゲンク)と山根視来(川崎)で組む右サイドに比べて、機能しなかったと指摘したが、この日はその逆。右からの攻撃は皆無に等しかった。

 U-24アルゼンチン代表とは、北九州に場所を移して、29日、再び対戦する。第1戦の内容がどこまで検証され、改善されるか。特にアタッカー陣、4-2-「3―1」の「3-1」の関係に注目したい。