結果論を承知で言うと、ゴールが決まる時、シュートを打つ前に(時間にしてコンマ数秒前だろうが)不思議と「あっ、入りそう!…

 結果論を承知で言うと、ゴールが決まる時、シュートを打つ前に(時間にしてコンマ数秒前だろうが)不思議と「あっ、入りそう!」とわかることがある。

 ボールのもらい方、ボールを置く位置、シュートまでの一連の動き、などなど、さまざまな要素がうまくそろった時、きっと"入りそうな雰囲気"が漂うのだろう。

 その瞬間もそうだった。

 日本が韓国と対戦し、3-0で勝利した国際親善試合。立ち上がりから日本が攻勢に試合を進めるなか、その流れを決定的なものにしたのが、17分に決まった先制ゴールだった。

 決めたのは、これが日本代表デビュー戦の右サイドバック、DF山根視来である。

 MF守田英正のスルーパスが相手DFに当たって浮いたボールを、FW大迫勇也が相手DFと競り合いながらヒールパス。山根は目の前に絶好のパスが転がってくると、迷わずシュートモーションに入った。

 あっ、入りそう。

 そんな雰囲気を漂わせ、背番号13が右足を振り抜く。本人曰く、「しっかり(ゴールの)枠に打ち込むことだけを考えて打った」というシュートはクロスバーを叩いて下に落ち、インゴールで力強く弾んだ。



代表初出場初先発で先制ゴールを決めた山根視来

 鮮烈な代表デビューと言っていいだろう。

 親善試合とはいえ、相手は韓国。フレンドリーマッチという和やかな言葉とは裏腹の一戦である。

 にもかかわらず、山根は堂々たるプレーで記念すべきデビュー戦を飾ったのだから恐れ入る。しかも、短い時間での出場ではなく、初先発フル出場、代表初ゴールのおまけ付きだ。

 とはいえ、目を向けるべきはゴールしたことよりも、普段J1で見せているプレーをそのまま出せていたことだろう。

 山根が所属する川崎フロンターレは、言わずと知れた昨季J1チャンピオン。戦術レベルは極めて高く、選手同士が絶妙な立ち位置を取り、あうんの呼吸でパスをつなぐ。そのなかで山根はDFでありながら前線へと駆け上がり、つなぎだけでなく、攻撃の最終局面にも加わっていくのが特長だ。

 その時、右サイドバックの山根にとって重要なのは、同サイドの最前線にFW家長昭博がいることである。

 技術だけでなく、フィジカル能力にも優れたレフティーは、どっしりと構えてボールを収め、多少相手選手に体を寄せられようが、簡単にボールを失うことがない。山根にとっては安心して前へ出ていくことができる、頼もしい相棒だ。山根の攻撃力が際立つ要素として、家長の存在は見逃せない。

 一方、日本代表はというと、韓国戦で右サイドのコンビを組んだのはMF伊東純也。スピードを武器に、縦へのドリブル突破を得意とするアタッカーである。

 彼の推進力が現在の日本代表でも屈指であるのは確かだが、山根の攻撃参加を引き出すという点ではどうか。必ずしも相性がいいとは思えず、試合前の段階では未知数、というより、少なからず不安もあった。まして、緊張のともなうデビュー戦なのだから、山根のプレーが小さくなっても不思議はなかった。

 ところが、実際に試合が始まってみると、山根は至って普段どおりだった。戸惑いまじりに、窮屈そうなプレーばかり......そんな様子は微塵も見られなかった。

 山根は「(伊東は)スピードがある選手なので、1対1になったとき、あまり邪魔しないように」と気を遣いはしたようだが、「僕が幅を取るのか、純也くんが幅を取るのか、純也くんの動きや相手の(守備の)形を見ながらやっていた」と言い、こう続けた。

「僕自身はストレスなくできた」

 ふたりの動きが重なることはなく、伊東が内に入れば、山根は外へ、伊東が外に出れば、山根は内へ。互いに進むレーンをスムーズに使い分け、初めての試合とは思えないほどうまく連係していた。

 先制点のシーンが象徴的だ。

 シュートに至るまでの1、2プレーだけを遡(さかのぼ)れば、やや偶発的に生まれたゴールにも見える。しかし、さらにプレーを遡れば、チーム全体のコンビネーションのなかで、山根がうまく攻撃に加わっていた様子が見て取れるからだ。

 まず、山根は内に絞った位置で左サイドからつながれてきたパスを受けると、右サイドに開いていた伊東へボールを預けて、自らはインナーラップ。直後に大迫からのパスを受けられそうな状況もあったが、それが来ないとわかると、山根はもう一度動き直し、相手DFラインの背後を狙っている。

 最終的にはややごちゃついた展開にはなったが、山根はたまたまそこにいて、ラッキーにもボールがこぼれてきた、わけではない。

 普段J1で見ているとおりの、実に山根らしいプレーの連続だった。

 また、川崎つながりで言えば、パスを送った守田もまた、ボランチとして非常に質の高いプレーを見せていた。

 DFラインの前でのボール奪取はもちろん、攻撃の起点としても、同じボランチの遠藤航、センターバックの吉田麻也、冨安健洋と連係。韓国のプレスをはがし、効果的な縦パスを前線へ供給し続けた。遠藤がドイツでの経験を糧にボランチの軸へと成長するなか、新たなパートナー候補に名乗りを上げたと言っていいだろう。

 現在は海外組のひとりである守田だが、昨季までは川崎でプレーしており、まだポルトガルに渡って2カ月ほどの"準・国内組"だ。

「昨年、そこそこ活躍した気持ちはありながら、(コロナの影響で)代表の活動に参加できず悔しい思いをした」

 守田自身、そう認めるように、昨秋行なわれた日本代表のヨーロッパ遠征には国内組が参加できず、忸怩(じくじ)たる思いを抱えていた選手は少なくなかっただろう。

 出色の働きを見せながらも、日本代表に呼ばれることなく、Jリーグでのプレーに集中するしかなかった守田と山根は、チームとして圧倒的な強さで優勝を果たすとともに、そろって昨季Jリーグのベスト11に選ばれた。いわば、Jリーグ最高のボランチであり、右サイドバックであると認められたわけだ。

 そんなふたりが海外組優勢の日本代表に加わり、昨季タメていた鬱憤を晴らすかのように、優れたパフォーマンスを発揮する。史上最強とも言われる川崎の強さが、いよいよ日本代表にも波及してきた。