相手がベストメンバーでなかったことを差し引く必要はある。香川真司の2ゴールと本田圭佑のゴールで快勝を飾った10年前の札…

 相手がベストメンバーでなかったことを差し引く必要はある。香川真司の2ゴールと本田圭佑のゴールで快勝を飾った10年前の札幌でのインパクトにも及ばないかもしれない。

 それでも、永遠のライバル相手に終始主導権を握り、3つのゴールを叩き込み、力の差を見せつけたこの勝利は、日韓戦の歴史において大きな意義を持つことに変わりはないだろう。



日韓戦で圧倒的な存在感を示した大迫勇也

 その歴史を振り返れば、泥と屈辱にまみれた日本代表の姿が目に浮かぶ。テクニックを駆使してゴールに迫ろうとしても、強靭なフィジカルを前面に押し出した相手に力づくで抑え込まれてしまう。

 しかし、この日はどうだ。技術だけでなく、球際の争いでも上回っていたのは日本のほうだった。ピッチに倒され、苦悶の表情を浮かべていたのは、赤いユニホームの選手だったのである。

"強靭な日本"の象徴とも言えたのが、最前線に君臨した大迫勇也(ブレーメン)だった。

 持ち前の身体の強さと技術を駆使し、相手を背負いながらも難なくとボールを収めてしまう。確実に収まるから、出し手とすれば躊躇なく、くさびを打ち込める。面白いように縦パスが通り、推進力が生まれたのも、この稀代のポストプレーヤーの存在があったからだ。

 攻撃に勢いを生み出すだけでなく、大迫はふたつのゴールにも絡んでいる。17分には絶妙なヒールパスで山根視来(川崎フロンターレ)の代表初ゴールとなる先制点をお膳立てし、その10分後にはカウンターの起点となり、鎌田大地(フランクフルト)のゴールを導き出した。

 とりわけ真骨頂と言えたのが、2点目の場面だろう。数的不利の状況でもしっかりとボールを収め、時間を作り、後方からの攻め上がりを促した。

「3人に囲まれるのがわかったので、時間を作るようにしました。(鎌田)大地もしっかりとスプリントしてくれた。いい距離感でできたと思う」

 後半立ち上がりにも卓越したポストワークで南野拓実(サウサンプトン)の決定機を生み出すなど、77分に浅野拓磨(パルチザン)と代わって退くまで、大迫はピッチ上の王様として君臨し続けた。

「得点を取れればよかったですけど......」。試合後、大迫は自身がノーゴールに終わったことを悔しがったが、「試合に勝てたことは素直にうれしい。すぐに試合があるので切り替えないといけないですけど、楽しかったです。楽しい試合でした」と、満足げなコメントを残している。

 今季、所属クラブでは不遇をかこっている。リーグ戦では17試合の出場にとどまり、いまだ無得点。本職のセンターフォワードではなく、インサイドハーフとして起用されるなど、本来の力を発揮できる状況にはない。だから、最前線に立ったこの試合を「楽しかった」と振り返るのだろう。

「個人としては久しぶりに1トップでできたので、何も考えずにできたというか、自分のプレーが出せた」

 持ち味を十全に発揮したストライカーが、この日韓戦であらためて日本の大黒柱であることを証明した。

 攻めの柱が大迫なら、守りの柱は吉田麻也(サンプドリア)である。

 試合前から日韓戦への並々ならぬ決意を口にしていたキャプテンは、その想いを表現するかの如く、魂のプレーで完封勝利に貢献している。

 地上戦、空中戦ともに相手を寄せつけず、落ち着き払ったビルドアップで起点となり、ラインも巧みに操った。経験の少ない味方には的確な声がけで鼓舞するなど、まさに闘将のごとく振る舞った。

 10年前の一戦にも出場していた吉田だが、翌年のロンドン五輪では3位決定戦で敗れ、メダルを逃した悔しい過去がある。年長者として日韓戦の重みを一番理解しているのも、この吉田だろう。だからこそ普段以上に重圧を感じ、試合後には安堵の表情を浮かべた。

「ほっとしています。試合が終わって、こんなにほっとするのも久しぶり。代表戦は普段とは違うプレッシャーもあるし、キャプテンマークを巻く重圧もある。それに加えて今回は日韓戦。見えないプレッシャーはいつも以上に大きかった」

 経験豊富な吉田の存在には、代表初招集の選手たちも勇気づけられたという。先制ゴールを決めた山根もそのひとり。

「緊張してましたし、ホテルの部屋でもひとりの時間が多く、いろいろ考えました。だけど試合前に麻也くんがポジティブな言葉をかけてくれたので、あとは自分のやるべきことを後悔がないようにやるだけでした」

「普段の1.5倍くらいの力でやれ」とハッパをかけられた山根は、吉田の言葉に応えるように躍動し、ライバル撃破の立役者となっている。

 2010年にデビューして以降、日本の最終ラインに君臨し続ける吉田は、この韓国戦で代表キャップは105を数えた。これは歴代8位の記録で、センターバックの選手としては井原正巳(122)、中澤佑二(110)に次ぐものだ。

 偉大なる先達に肩を並べようとしている吉田の経験値の高さは、若手の台頭が目立つ森保ジャパンにとって不可欠なものだ。

「いい試合ができたけど、3点目、4点目をもっと早い時間に決めてゲームを決めきるのも大事。(前回の)メキシコ戦では決めきれずに流れを持っていかれたので、そういうところを突き詰めないといけない」

 勝利に安堵するだけでなく、勝利のなかに課題も見出す。勝って兜(かぶと)の緒を締めるキャプテンが、カタールへの道のりを力強く牽引していくはずだ。