サッカー日韓戦は、お互いがライバル心むき出しで戦い、ピッチも周囲も熱くなる特別な一戦だ。長らく日本代表を取材し、日韓戦も…

サッカー日韓戦は、お互いがライバル心むき出しで戦い、ピッチも周囲も熱くなる特別な一戦だ。長らく日本代表を取材し、日韓戦も数多く観戦している後藤健生氏に、日本にとって特別な3試合を紹介してもらった。

 そんな日本代表が、ついにワールドカップ予選という大舞台で韓国を破る日がやってきた。1993年10月25日。場所はカタールのドーハ。アメリカW杯最終予選の4戦目だった。

 59分、左から吉田光範が入れたクロスが相手に当たってこぼれたボールに三浦知良(カズ)と長谷川健太が絡んで、最後はカズが決めた。カズはこういうこぼれ球を決めるのがとてもうまい選手だ。

 そして、日本はそのまま1-0で韓国に勝って、6チーム中の首位に立ち、最終イラク戦に勝てば文句なしで初のワールドカップ出場が決まることになった。

 点差は1点差だったが、内容的には日本の完勝だった。

 韓国の金浩(キム・ホ)監督は、のちにセレッソ大阪でもプレーするFWの高正云(コ・ジョンウン)を、なぜか中盤の守備的なポジションで起用してきた。日本のトップ下で攻撃のタクトを振るうラモス瑠偉に対して、フィジカルが強い高正云を当てようとしたのかもしれない。

 だが、日本のハンス・オフト監督はしたたかだった。この試合ではずっと守備的MFに入っていた森保一をはずして、ラモスを中盤の深い位置でプレーさせたのだ。おかげで韓国の選手はどこまでラモスに付いて行っていいのかわからず、混乱に陥ってしまった。

 こうして、日本が最も重要なワールドカップ予選で韓国に完勝した。それは、僕がずっと夢見ていた光景だった。ただ、日本は最終戦でイラクと引き分けてしまい、予選突破には失敗してしまうのだが......。


香川真司の活躍などで完勝した、2011年8月の日韓戦

 photo by Getty Images

◆2011年8月10日 国際親善試合
日本 3(1-0、2-0)0 韓国
(得点)香川真司(35分)、本田圭佑(53分)、香川真司(55分)
(日本代表メンバー)
川島永嗣、駒野友一(55分槙野智章)、内田篤人、今野泰幸、吉田麻也、遠藤保仁(73分家長昭博)、長谷部誠(66分阿部勇樹)、岡崎慎司(35分清武弘嗣)、香川真司(85分細貝萌)、本田圭佑、李忠成

 かつてはワールドカップやオリンピックの予選では、必ずと言っていいように日韓対決が実現していた。だが、最近は予選では別組になることが多く、韓国との対戦機会はめっきり少なくなってしまった。

 EAFF E-1選手権(東アジア選手権)では毎回対戦するが、この大会には「海外組」が招集できないので、本当の意味での両国の最強チーム同士の対決とは言えない。

 そして、親善試合も、今回の日韓戦が10年ぶりだという。

 その、10年前(2011年8月10日)の札幌ドームでの試合は、日韓戦の長い歴史のなかでも珍しいほどの、いやかつて一度も見たことのないような日本の完勝だった。

 日本の前線からのプレッシャーが効果的で、前半の20分以降はほとんど韓国陣内で試合が進んだ。とくに、試合の立ち上がりから右サイドの岡崎慎司が好守にわたってアグレッシブで、右サイドバックの内田篤人とのコンビで右サイドから数多くのチャンスが生まれた。

 そして、35分に日本が先制する。遠藤保仁が相手ボックス内のスペースにパスを通すと、走り込んだ李忠成がワンタッチで中央に送り、このパスを受けた香川真司は小さくボールを浮かしてDFをかわして決めた。ゴール前の密集のなかでテクニックを発揮した、香川らしい鮮やかなゴールだった。

 後半53分にも、駒野友一のドルブルシュートのこぼれ球を清武弘嗣が落として、最後は本田圭佑が決めると、さらにその2分後には香川が一度右に振って、清武からの折り返しを香川が決めて3点差とした。

 両チーム合わせて43本ものシュートが飛び交うオープンな攻め合いとなった日韓戦だったが、こうして日本の完勝で終わったのである。

「ボールを動かして韓国の選手に的を絞らせなかったのが良かった」と語ったアルベルト・ザッケローニ監督は韓国戦で3回勝利しているが(1回はPK勝ち)、韓国相手に3勝したことのある日本代表監督は、これまでザッケローニただひとりである。