『特集:球春到来! センバツ開幕』 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題の…
『特集:球春到来! センバツ開幕』
3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。
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3年前の夏、ともに日の丸を背負って戦った絆は、さらに強まっている。
3月19日に開幕したセンバツ高校野球大会に6年ぶり4回目の出場を果たした東海大菅生(東京)は、中学時代に侍ジャパンU−15代表だった本田峻也(新3年)と福原聖矢(新2年)のバッテリーがカギを握る。

侍ジャパンU―15代表で一緒だった東海大菅生の本田峻也(写真左)と福原聖矢
2018年の夏に、南北アメリカ大陸の境に位置するパナマ共和国で開催された第4回WBSC U−15ワールドカップに、ふたりは侍ジャパンの一員として出場。当時、本田は石川県の小松加賀リトルシニア、福原は沖縄県の安仁屋ヤングスピリッツに所属していた。
「知らない人ばかりで緊張しました」という本田は、合宿初日の練習でキャッチボール相手をなかなか見つけられずにいたが、その時に福原が「やりましょう」と声をかけてきた。その後も「みんな仲はよかったですが、どうしても関西組と地方組に分かれることは多かったですね(笑)」と本田が振り返るように、ともに地方から出てきたふたりは同部屋ということもあり、親交を深めていった。
当時、2年生で唯一代表入りしていた福原だったが、U−12でも代表経験があり、まったく物怖じしなかった。
合宿初日の自己紹介では、どの選手もありきたりな内容になるなか、福原は「2年生は僕だけだったので、アピールしようと思いました」と、いきなり「ハイサイ!」(沖縄の方言で「こんにちは」)とあいさつ。ほかの選手たちは突然のことにキョトンとしていたが、福原はその後も堂々と自己紹介を続けた。
その強心臓ぶりはグラウンドでも変わらず、本職は捕手でありながら二塁手も務めてベストナインを獲得。5盗塁を記録して最多盗塁のタイトルまで獲得し、身長166センチ(当時)の小柄な体ながら、チームの4位入賞に貢献した。
一方、合宿初日におどおどしていた本田も、試合になれば福原に負けず劣らず、メンタルの強さが光った。左投げの本田は今よりもさらにインステップで投げており、左打者にとっては背中からボールが来るような球筋だった。そのため清水隆行監督(元巨人)は本田をリリーフで起用。走者をおいた場面での登板が多かったが、キューバやドミニカ共和国の強打者たちを手玉にとり、何度もピンチをしのいだ。計5試合に登板してチーム唯一の自責点0と、堂々の結果を残した。
先に東海大菅生に入学したのは、1学年先輩の本田だ。県内の強豪校からも誘いを受けたが、「以前から県外に出て、レベルの高いところで野球がしたいと思っていました」と上京した。
そして1年後、福原も「信頼できて、優しくて、この人ならついていきたいと思いました」と、本田のあとを追って東海大菅生への入学を決めた。すぐさまコロナ禍による緊急事態宣言が発令され、ともに地元へ帰省したが、豊富な経験と高い知識を持つふたりは鍛錬を怠ることはなかった。
昨年夏に行なわれた東京都の代替大会は、東海大菅生の若林弘泰監督が「(大会に出場する機会が失われるのは)全学年一緒。甲子園がなくても関係ない」と、普段の夏と同じくベストメンバーで戦った。
そのなかで2年生の本田と1年生の福原もベンチ入り。本田は大会後半の4試合すべて(うち先発は3試合)に登板した。
福原も本田が登板する時には捕手、それ以外は二塁手を務め、1年生とは思えない落ち着いたプレーを披露。とくに準々決勝の日大二高戦では、三塁ゴロで相手三塁手が一塁に送球したタイミングを見計らって三塁走者だった福原がスタート。見事に本塁を陥れるなど、センスのよさを見せつけた。
このふたりの活躍もあって、チームは代替大会を制した。この経験が秋の東京制覇につながったと、若林監督だけでなく本田も福原も力を込めて強調する。
「(本田、福原を含め)1、2年生が5人ほど夏の独自大会に出ていましたし、勝ち方を知っていたのは大きかったです」(若林監督)
「その先に甲子園がないとわかっていても、先輩たちは本気で勝ちにいっていました。その姿を見ていました。夏は失投が多くて...秋は自分が引っ張らないといけないと思いました」(本田)
「(昨年の夏は)応援してくれる3年生のためにも一生懸命やらないと、と思いました。3年生から『おまえらで甲子園に行ってくれ』と言われていたので、甲子園でも優勝して恩返しをしたいです」(福原)
普段は選手に厳しく接する若林監督もふたりの評価は高い。昨年秋の都大会決勝で7回を1失点に抑えたことに「甲子園のかかった試合であれだけの投球ができる。心臓が強いですよね」と精神力の強さを称え、福原については「周りが見えていて落ち着いている。(僕が)怒るようなことはしませんね(笑)」と精度の高いプレーに舌を巻く。
2月23日のセンバツ組み合わせ抽選会の日に行なわれた練習でもふたりの存在感は光っていた。
紅白戦に登板した本田は最速143キロのストレートにキレが増し、変化球もスプリット、フォーク、カーブ、スライダーを駆使し、着実に投球の幅を広げている。
福原も、紅白戦前のシートノックで味方のミスが連鎖し、若林監督から厳しい声が飛んだなかでも、難しい打球をいとも簡単に処理。プレー精度の高さは健在で、本田が「福原は全部が天才。嫉妬しますよ」と笑うほどだ。
中学時代に国際舞台を踏んだ彼らが、その経験値と成長ぶりを存分に見せつけることができれば、東海大菅生のセンバツ制覇も夢ではない。