智弁学園・小畠一心は入学当初から注目の長身右腕

 智弁学園の5年ぶりの王者返り咲きに欠かせないピースがいる。小畠一心投手はエースの座を奪えずにいながらも、着実に進化を遂げていた。中学の時はU-15侍ジャパン日本代表で、鳴り物入りで智弁学園の門を叩いた。【市川いずみ】

 1年夏の甲子園では、初戦の八戸学院光星(青森)戦で先発の大役を任された。結果は2本塁打を浴びるなど、3回途中4失点で降板。チームも8-10で敗れたが、3年生最後の大事な大会で初戦の先発マウンドに送り込まれたことから、小坂将商監督の期待の大きさがうかがえた。

 西村王雅との左右二枚看板として下級生の頃からチームを支え、昨秋の近畿大会準決勝では9回1失点完投と優勝への足掛かりをしっかりと作った。しかし、エース番号は西村の背中を眺めるだけになっている。

「やっぱり1番をつけたい」――。大きな課題はボールの質だった。身長185センチから投じられるストレートは最速144、5キロだというが、どうも数字以上に感じられない。

「強いボールを投げるため、球速をあげるために自分には何が必要かを考えた」結果取り組んだのが、オリックスの山本由伸投手などが取り入れている“やり投げトレーニング”だった。ジャベリックというやり状の小型投てき物を投げるものだが、全身を使わずに肘だけで投げると全く前に飛ばない。そのため、股関節や胸郭を支点にして全身を使って投げることが出来るようになると言われている。

「近畿大会終わってから始めたんですけど、最初、全然投げられなくて、すぐ前にボトッて落ちたりとか。どうやったら、うまく投げられるかなと思って、山本投手のトレーニング動画とかを見て、見様見真似で投げたらだいぶ投げられるようになりました」

エース左腕の西村は最大のライバルもお手本

「回転数も変わったと思います。今まで低めのボールが垂れていたのが伸びるような球がいくようになったり、キャッチャーからもボールの強さが全然違うので強さが変わったと言われます」

 指揮官から指摘されていた「身体は大きいのにうまく使えていない」ところも、ジャベリックをうまく投げることに没頭していると気づけば改善されていた。「身体が大きく使える腕も遠心力を使えるようになったって感じです」

 西村は最大のライバルでありながら一番のお手本でもあるという。

「練習試合とかでもだめなところを教えてもらえます。自分は連打が多いんですけど、連打された時の間の取り方を聞いたりとか西村が投げている時に自分が気づいたことを言ってあげるとかお互いのいいところとか悪いところとか言い合える感じではあります」

 タイプの全く違う二人だが、チームが勝つために二人三脚で成長の歩を進めている。優勝するには5試合を勝ち抜かねばならない。

「全部、西村1人では連投もあると思うんで。二人でしっかり0,最少失点に抑えたらチームは絶対打ってくれるんで、自分と(西村)王雅がしっかり投げ切ることだと思います」

 山下陽輔、前川右京という打の二本柱にエースの西村、そこに小畠というピースがはまれば、5年ぶり日本一のパズルがきれいに完成するはずだ。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。