3戦2勝の裏に努力の跡、土壇場で見せた勝気な姿とは 女子ゴルフの国内ツアー・Tポイント×ENEOSの第2ラウンド(R)の残りと最終Rが21日、鹿児島・高牧CC(6424ヤード、パー72)で行われ、3打差の4位で最終Rを迎えた小祝さくらが3バ…

3戦2勝の裏に努力の跡、土壇場で見せた勝気な姿とは

 女子ゴルフの国内ツアー・Tポイント×ENEOSの第2ラウンド(R)の残りと最終Rが21日、鹿児島・高牧CC(6424ヤード、パー72)で行われ、3打差の4位で最終Rを迎えた小祝さくらが3バーディー、1ボギーの70で回り、通算10アンダーで逆転優勝した。今年3戦2勝で2020-21年シーズン3勝目。今季獲得賞金は1億円を突破し、賞金ランクトップに躍り出た。黄金世代の22歳。マイペースな性格からはわかりづらい、秘めた闘争心を垣間見せた。

 小祝が勝負所で強気に仕掛けた。鈴木愛、サイ・ペイイン、ペ・ソンウと首位で並んだ後だった。15番パー4。ティーグラウンドが前に設定され、ピンまで240~250ヤードしかない。グリーン左手前にはバンカー、右には池。リスクを冒してワンオンか、無難に刻んでバーディーの可能性を下げるのか。

「ティーグラウンドに立った時に『行こう』と思ったけど、キャディーさんは迷っていた。優勝争いをしていたし、風もフォローじゃなかったので」

 隣にはリーダーボード。小祝は順位を確認した。「バーディーを獲らないと厳しい。自分も攻めなきゃ」。ドライバーを握り、強引に行った。「一瞬迷ったけど、思い切って打ちました」。左から吹く風を考慮し、ピンの左狙い。イメージよりも右に飛び「池に入ったかな」と最悪の事態がよぎったが、なんとか踏みとどまった。残り20ヤードのアプローチを1メートルに寄せてバーディー。土壇場の選択を強気の一振りで正解にしてみせた。

 単独首位に躍り出ると、16番で連続バーディー。1つ後ろの最終組だったペ・ソンウが18番でボギーを叩き、ツアー通算4勝目を奪い取った。

 他のプロに負けないと自負する武器は「ロブショット」。距離や地面の状況に関係なく打つ自信がある。2019年7月に初優勝したが「もともと自分の球は高い。風が強い時に低い球も必要」と満足することなくクラブを振り続けた。辻村明志コーチに教わりながら、風に負けない低弾道のショットを猛練習。「成果が出たと思います」。優勝した今年初戦のダイキンオーキッドレディスと同じく、強風の中で安定したショットを見せつけた。

風にも重圧にも負けない落ち着きぶり、どんな気持ちでプレーしていたのか

 風にも負けなければ、重圧にも負けない。緊張感のある優勝争いでも、表情を変えず淡々とプレーする姿が印象的。おっとりした性格で、取材の受け答えも“ローテンポ”で抑揚のない口調で喋る。感情が読み取りづらい。この日はどんな心を持って戦っていたのだろうか。

「今日は楽しみながら、特に最後の方は全然プレッシャーもなくプレーできた。ミスショットでも『風が強いのでしょうがない』と思っていた。優勝争いができることは嬉しいこと。気合を入れないといけないけど、特に悪天候の日は楽しまないと長い戦いになる。そういったところは気をつけています」

 今年2勝はともに最終日のバックナインで伸ばした逆転劇。まるで一人だけ風が吹いていないかのような落ち着きぶりだった。

 ラウンド中に開くコースメモには、パットの残り距離やラインをびっちり書く。「去年からですね。データを残すため。役に立ってます」。強さの裏にある努力の跡。自ら考える機会が増え、マネジメントがうまくなった。優勝賞金1800万円を獲得し、一番乗りで今季1億円を突破。賞金ランクは3位からトップに立った。「今年は賞金女王を目指してやっています。まだ3試合目なので気を緩められない」。女王争いもマイペースでぶっち切る。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)