中国では女子選手がグランドスラム・タイトルを勝ち獲り、オリンピック・メダルを獲り、シングルスとダブルスでトップ10に入り…と、テニスで成功を謳歌している。 反対に男子選手は立ち遅れている。中国国内での投資の増加、方策の改善にも関わらず、…

 中国では女子選手がグランドスラム・タイトルを勝ち獲り、オリンピック・メダルを獲り、シングルスとダブルスでトップ10に入り…と、テニスで成功を謳歌している。

 反対に男子選手は立ち遅れている。中国国内での投資の増加、方策の改善にも関わらず、中国本国の男子選手は一度も世界トップ100に入ったことがない。

 しかし今、この状況が変わるかもしれない。17歳のウー・イービン(中国)はそのオールラウンドなプレースタイルとジュニア・ランキングでの急激な上昇で今、注目を集めている。彼は2度グランドスラムを制した女子のリー・ナ(中国)に匹敵する男子のスターとなり、中国でのテニスをさらに発展させるための助けとなることができるのでは、という希望を母国に与えているのだ。

 ウーの知名度はアジアで着々と上がりつつあるが、彼の将来性がどれほど大きいかを見せたのは、12月にフロリダで行われたオレンジボウル(ITFグレードA)での彼のパフォーマンスだった。ウーは決勝まで勝ち上がり、そこで前年度覇者のミオミール・ケクマノビッチ(セルビア)に敗れた。

 ウーのジュニア・ランキングはこれで3位に上昇し、彼は全豪オープン・ジュニアの男子シングルスで第1シードだった。これは言うまでもなく、彼にとってグランドスラム・ジュニアでの最高シードだったが、彼は準決勝でイシャイ・オリエル(イスラエル)に6-4 3-6 6-2で敗れた。

 「トップシードでいることはタフだ」

 ウーは記者でいっぱいの会見場で、レポーターたちに英語でこう言った。

 「僕はより集中し、より自信を持たなければならない」

 ジェイソンという英語の名も待つウーは、4歳のときに故郷である東中国の町、杭州市でテニスをプレーし始めた。母親のウー・ファンはバドミントンをプレーするため彼を公園に連れて行ったが、ネットが彼にとって高すぎたため、代わりに近くのテニスコートに行ってみようと決めたのだと言う。

 「イービンはまだ幼く、すべてのプレーヤーが彼より年上でした」と母親は言った。「彼がテニスをしたとき、ポイントを争ってゲームをやっていたのですが、いつも負けていました」。

 しかし、ウーは潜在能力を垣間見せ、12歳になったときに以前のリー・ナとジュスティーヌ・エナン(ベルギー)のコーチを務めたカルロス・ロドリゲス(スペイン)によって運営されるポッターズ・ウィール国際テニスアカデミーでトレーニングするため、北京に行ったのである。

 アカデミーでウーはもうひとりのスペイン人コーチ、ナウム・ガルシア サンチェスを紹介された。ガルシア サンチェスはスペインに帰って自分のテニス・アカデミーを開校する前に、ウーと数年の間いっしょに働いた。

 「私の意見では、鍵は彼がコート上で非常にクリエイティブだということなんだ。彼はほかの選手たちには見られないことをやることができる」とガルシア サンチェス。「彼は一瞬のうちにリズムを変えることができる。私が予想もしていないショットを打つこともできる。彼はそういうタイプのプレーヤーなんだ」。

 ガルシア サンチェスは、「彼はある意味で、ガエル・モンフィスを彷彿させる。しかし、よりアグレッシブな」とまで言った。

 ガルシア サンチェスはウーのテニスには大きな欠陥はなく、彼はただより経験が必要なだけなのだと言う。プランは今年はジュニア大会の代わりにチャレンジャーやフューチャーズなどの低めのレベルのシニアの大会で、より多くの試合をプレーするというものだ。彼はまたこの春、中国代表としてデビスカップでもプレーすることになっている。

 「彼はATPツアーにうまく順応していくと思う」とガルシア サンチェスは言った。「彼はあの種のテニスが大好きなんだ」。

 若い才能を育てる人材や方法、コーチングという面で中国は迅速に追いつきつつある、とガルシア サンチェスは言った。しかし彼の母は、息子のテニス向上のための最良の動きは、彼がスペイン人コーチとふたたび合流し、ヨーロッパでトレーニングすることに年の一部を費やすことだと判断したのだった。

 この戦略はアジアのほかの選手たちもとった方法で、成果をもたらした。そのもっとも際立った例が、テニスを向上させるためごく若くして日本を離れてアメリカへ渡った錦織圭(日清食品)だ。

 「(アジアにおける)コーチングは、間違いなく向上する必要がある」と現在、錦織のコーチで元全仏オープン優勝者のマイケル・チャン(アメリカ)は言う。「明らかに圭は、非常に若い年齢でアメリカのコーチングを受けたことにより力を伸ばしたアメリカのコーチングの産物だ。だが、それが常に答えなのだろうか?そうとは限らない。圭にとってはうまく機能したか、だ。言うまでもなく、かなりうまく機能した」。

 チャンはまた「いい成績を挙げたアジアのトッププレーヤーの何人かを見てみると、特に女性の場合、外国人コーチを雇っている」と言い添えた。

 ウーは今スペインで、クレーの上でどうプレーするかを学んでいる。もっとも今のところ、彼のスペイン語は「オラ!(ハロー/こんにちは)」に留まっているけれど。

 ウーは自分のアイドルである、世界1位のアンディ・マレー(イギリス)に似たプレースタイルを培いたいと願っている。彼はまだマレーに会ったことはないが、もし彼らの道が交わったならマレーに何と言うかはもう決めてある。

「“アイ・ラブ・ユー”」と、彼は笑いながら言った。「それから、“どうすればあんなに速いバックハンドを打てるのですか?”」と聞きたいそうだ。(C)AP