女子ツアー2021年注目プレーヤー10名の「武器」(後編)百花繚乱の女子ツアーは、若き逸材たちが続々と頭角を現している。なかでも、注目度の高い選手たちの「よさ」について、森口祐子プロに解説してもらった――。西村優菜(20歳)にしむら・ゆな/…

女子ツアー2021年
注目プレーヤー10名の「武器」(後編)

百花繚乱の女子ツアーは、若き逸材たちが続々と頭角を現している。なかでも、注目度の高い選手たちの「よさ」について、森口祐子プロに解説してもらった――。




西村優菜(20歳)
にしむら・ゆな/2000年8月4日生まれ。大阪府出身。身長150㎝。血液型O。ツアー優勝1回。2020-2021シーズン賞金ランキング7位(獲得賞金4881万6000円)※3月17日現在、以下同

 昨年の樋口久子 三菱電機レディスで優勝した時の西村選手は最終日、「全ホールでバーディーを狙っていかないと勝ち切れないと思ってやっていた」と言います。優勝争いの常連ならともかく、新人の彼女ならベスト3で満足しそうなところ。しかし、彼女はさらに上を目指して、全部バーディー狙いで攻め切った。それは、なかなかできないものです。

 その裏には、約1カ月半前の日本女子プロ選手権で、最終日に単独首位でスタートしたものの、守りに入って7位タイに終わった経験があったと言います。そして、次にチャンスを迎えた時は「攻める気持ちでプレーする」と心に決めていたそうです。実際にその時が来て、そのとおり実践できたことも立派だと思います。

 スイングはオーソドックスで、小柄な体ながらウエートシフトをうまく使って効率よく飛ばすことができています。アマチュア時代はナショナルチームのメンバーで、この年代の選手たちはコーチ陣から上質の指導を受けているので、安定した下半身に支えられた、ボールに対してパワーロスのない打ち方が身についています。

 さらに、彼女はパッティングが上手。そのため、平均バーディー数が2位という成績を残して、150㎝と小柄ながらツアーでも十分に戦えているのだと思います。




田辺ひかり(23歳)
たなべ・ひかり/1997年4月13日生まれ。広島県出身。身長165㎝。血液型O。ツアー優勝0回。2020-2021シーズン賞金ランキング14位(獲得賞金2949万2408円)

 ダイキンオーキッドレディスで3位となった田辺選手。今年、彼女はツアー初優勝が期待できると見ています。

 その理由は、球筋です。無駄なスピンが抑えられた、サイド回転がない真っ直ぐな弾道で、風に負けない球を、彼女は打てるのです。さらに、短めに持ったアイアンで、入射角を一定にして距離感を合わせていくライン出しも得意としています。

 昨年の日本女子プロ選手権では、リンクス風のコースで多くの選手が風に悩まされるなか、田辺選手は1打差の2位タイでフィニッシュ。あるパー3のホールでは、砲台グリーンの右ピンに対して、右からの強風のなか、スピン量を計算したストレートボールでピンに絡ませてきました。そのショットは、まさに彼女のフェースコントロールのうまさを表わしていました。

 現在、佐伯三貴さんにスイングを見てもらっている田辺選手。ショットのうまさに定評のある佐伯さんの指導を受け、多くのことを吸収したといいます。

 スイング作りにおいては、かなりの手応えを感じているのでしょう。最近の田辺選手の表情からは前向きな強さを感じます。加えて、彼女の意識の高さがゴルフにリンクして、成績も上がってきている気がします。




西郷真央(19歳)
さいごう・まお/2001年10月8日生まれ。千葉県出身。身長158㎝。血液型AB。ツアー優勝0回。2020-2021シーズン賞金ランキング22位(獲得賞金2431万6225円)

 西郷選手も今年、ツアー初優勝を飾りそうな若手選手のひとりです。

 彼女はまず、4日間戦う体の強さがあります。スイングはその体の強さを生かして、バックスイングで軸を左右に動かさず、体の捻転でトップを作りパワーを溜めています。そこからダウンスイングでは、強い下半身の動きを使って、インパクトでのパワーを生み出しています。

 この強い体を作るため、トレーニングでかなり追い込んだのか、昨年は背中を痛めたようですが、今年は開幕戦のダイキンオーキッドレディスで4位タイと好スタート。バージョンアップした西郷選手を見たような気がします。

 そのダイキンオーキッドレディスでは初日からずっとトップを守ってきましたが、最終日にスコアを崩して優勝を逃しました。最後はボギー、ボギーの上りでしたが、今の彼女であれば、18番の攻め方は、個人的には悪くなかったと思います。

 果敢に2オンを狙ったショットを左に曲げましたが、勝負どころで左へ飛ぶショットは、力が入る状況ではありがちなミス。しかしこれは、リスクを恐れずに攻める姿勢の表われ、とも言えます。紙一重のショットでした。

 プロゴルファーにとって、リスクを冒さずにセーフティーなプレーを選ぶ戦い方は、将来的に心残りを感じさせるものです。ですから、西郷選手のあのショットは"反省するも後悔せず"というべき一打だったと言いたいです。




セキ・ユウティン(23歳)
せき・ゆうてぃん/1998年3月5日生まれ。福井県出身(国籍:中国)。身長171cm。血液型O。ツアー優勝0回。2020-2021シーズン賞金ランキング54位(獲得賞金952万9850円)

 デビュー当時のセキ・ユウティン選手は、身長のわりにヘッドスピードが足りないのか、飛距離が出ない、という印象の選手でした。

 それが昨年、NEC軽井沢72(14位タイ)で見たら、以前よりも体がひと回り大きくなっていたので、驚きました。おそらく期するものがあって、トレーニングを相当こなしたのでしょう。クラブもしっかり振れるようになって、飛距離も伸びていましたね。

 彼女はその後、2019年のプロテスト合格者14名が出場したJLPGA新人戦 加賀電子カップ(2020年12月)に出場。2日間トーナメントの最終日に15番から4連続バーディーを奪って優勝しました。

「プラチナ世代」の有望な選手たちが出場していたこの試合で勝ったことは、彼女にとって今後への自信になったのではないでしょうか。以前は片言だった日本語も、最近はかなり喋れるようになったみたいですし、今年の飛躍が期待されます。



安田祐香(20歳)
やすだ・ゆうか/2000年12月24日生まれ。兵庫県出身。身長163cm。血液型O。ツアー優勝0回。2020-2021シーズン賞金ランキング61位(獲得賞金855万6266円)

 安田選手は、アマチュア時代はナショナルチームのメンバーで、オーガスタナショナル女子アマチュア選手権にも出場するなど、ジュニア時代から海外の試合経験が豊富なプレーヤーです。

 トップで大振りすることなく、スイングは非常にコンパクト。それでも十分に飛距離が出ます。アイアンのコントロールショットがうまく、いろいろなライからのショットにもそつなく対処できる、ショットメーカーです。

「プラチナ世代」の中では、アマチュア時代はトップを走っていた感じですが、プロ入り後はやや後れを取っている印象があります。技術面では他の選手に引けをとらないので、課題となっているのは体力面かな、と思います。

 プロゴルファーに求められるのはまず、連戦に耐えうる体力です。春から冬場の入り口にかけてツアーを戦うことになるので、コンディションの持っていき方も大事になります。

 昨年、彼女は頸椎捻挫で試合を離れるという、残念な時期がありました。体重増を含めた"体を作る"ということにも、重点を置いて取り組んでほしいなと思っています。