2020-21 V.LEAGUE DIVISION1 MEN (V1男子)はサントリーサンバーズが4月3日(土)にスタートするV・ファイナルステージへの切符をすでに勝ち取った。今季もクライマックスは目の前だ。    その前に、過…

 2020-21 V.LEAGUE DIVISION1 MEN (V1男子)はサントリーサンバーズが4月3日(土)にスタートするV・ファイナルステージへの切符をすでに勝ち取った。今季もクライマックスは目の前だ。

 

 その前に、過去の月バレ誌面からVリーグファイナルを振り返ってみよう。今回は月バレ2004年4月号から、第10回Vリーグファイナルの様子をお届けする。

 

【写真】サントリー のルーキーの山村、越川やジルソン、JTの選手たちのフォトギャラリーはこちら

 

 5連覇のかかったこのシーズン、サントリーはレギュラーラウンド最終戦前の時点で自力でのファイナルラウンド進出の可能性は限りなく低い状況だった。しかし、かろうじて4位に浮上して最終ステージへ。その後も苦しい状況が続いたが、4連覇を達成していたチームの底力は見るものの想像を超えたのだった。

 

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月刊バレーボール2004年4月号掲載

(編注:文中の所属・チーム名、文章は当時のまま)

 

奇跡のサンバーズ サントリー5連覇達成!

 

第10回Vリーグ男子は、サントリー・サンバーズが5連覇を達成した。レギュラーラウンドから苦戦が続いたサントリーは数々の危機を抜群の結束力と強固な精神力、そして運まで味方にして決勝進出を果たした。最後は初優勝を目指すJTに2連勝し、Vリーグ初、日本リーグ時代の富士フイルム(83年から87年)以来のリーグ5連覇を達成した。最高殊勲選手にはジルソンが5年連続選出された。

 

最高殊勲選手となったジルソン・ベルナルドと最優秀新人賞に輝いた越川優

 

サントリーの底力がJTの初優勝を阻む

 

2004年3月6日 第1戦(東京体育館)

サントリー 3( 25-19, 25-21, 22-25, 17-25, 15-12 )2 JT

 

2004年3月7日 第2戦(東京体育館)

サントリー 3( 25-19, 25-21, 25-20 )0 JT

 

よく粘ったJT第一戦

 

下馬評は互角だった。混戦だったレギュラーラウンドを抜け出し、セミファイナルも一番最初に決勝進出を決めたJT。一方のサントリーは4連覇中、レギュラーラウンドを1位で通過したことは1回だけ。そのほかは楽と言えない戦い方で切り抜ければ、大事な試合での勝率は100%。勢いのあるJTか、勝ち方を知るサントリーかの争いは、意外な幕開けだった。

 

第1戦の立ち上がり、JTは「若い選手に緊張感があった」(臺主将)というように、動きが硬く、逆に大舞台に強いサントリーは、今シーズン一番とも言える出来をスタートから見せて突っ走った。結局、第1セットはJTを19点に押さえサントリーが先取した。

JTサンダーズの選手たち

 

第2セットは自分たちのペースを取り戻したJT、中盤まで一進一退の攻防が続いた。しかし、ここで抜け出たのはサントリーの執念。佐々木が徳元得意のレフト平行を止めると、ジルソンがこん身のサーブをコートにたたきつけ、25-21と2セット、サントリーが連取した。

 

第3セット、JTは流れを変えようとシーズン中盤頑張ったルーキー内冨と強気なトスの前田を投入する。するとジルソンに疲れが見え、中盤からペースはJTに傾きはじめる。突き放されまいとするサントリーであったが、サーブミスが目立ち、リズムに乗れずJTが1セットを返す。

 

これで流れを呼び戻したJTはレギュラーラウンドの強かったときの調子が出て、サべリエフ、内冨のスパイクで中盤抜け出すと、サントリーはセッターに清水を入れて打開しようとする。しかし、最後は宮下のジャンピングサーブがサントリーのサーブレシーブを崩し、試合はフルセットとなった。

 

ファイナルセットは我慢比べ。サントリーはジルソン、JTがサベリエフのエースが打ち合いどちらも引かない展開。しかし、最後は簡単に決着がついた。徳元のサープミスで12-12となるとサべリエフをジルソン、山村が連続シャットアウト。最後はサントリーのプロックを意識したサべリエフがスパイクをアウトにし、サントリーが初戦をものにした。

 

 

勝った方が優勝の第二戦

 

「昨日の勝ちはアドバンテージにならない。とにかく勝とう。そのためには初戦以上の気持が必要なんだ」

 

 と、試合前のミーティングで鳥羽監督のことばに改めてサントリーの選手は気を引き締めた。この試合、勝った方が優勝(JTがフルセットで勝った場合は得点率)という試合であったが、意外なまでに簡単に決着がついた。

 

 序盤からしっかりとチームとしてまとまりを見せたサントリーは、越川のジャンピングサーブで流れをつかみ、栗原がジルソンにボールを集中することないトス回しを見せ、JTのプロックを翻弄する。第1セットをサントリーが簡単に25-19で先取する。

 

 第2セットは、JTが先手を握り、混戦に持ち込むが19-19からピンチサーバーに出てきた西田がサービスエース2本を決め、第2セットもサントリー。第3セットは終盤までJTが主導権を握ったが、ジルソンのサーブでJTのサーブレシーブを崩し、最後はJT平野のスパイクがアウトになり、この瞬間にサントリーの5年連続の優勝が決まったのだった。

 

運と結束力と新しい勝つ方式

 

「シーズンを振り返って運がありました。しかも強運でしたね。しかし(それがあったとしても)選手が主体性を持って自分たちで努力した結果が呼び込んだ優勝だと思います」(鳥羽監督)

 

 78ページからのレギュラーラウンド総評にも書いたが、サントリーは最終戦を前にして自力でのファイナルラウンド進出は絶望に近い可能性しか残っていなかった。しかし、そこから入替戦(7位)から優勝の権利を残す4位に1日で浮上したことは、確かに運もあるが、自分たちで何とかしようという気持もあったと思う。もし、「可能性が少ないから…」と誰か一人でも弱気な姿勢を見せていれば、最後の松下電器戦は勝つことは出来なかっただろう。またセミファイナルでは第2戦で松下電器が堺ブレイザーズに勝てば、決勝への道を閉ざされるときも、運はサントリーに味方したが、その状況から堺ブレイサーズ戦にチーム一丸となって「絶対勝つんだ!」という気持、状況に持っていける精神力は、まちがいなく妥協を許さず、ふだんから勝つことに対し、貪欲さを追求しているからである。

 

 これまでの4連覇まではジルソン・サンバーズとも言われた。拾ってつないでジルソンが決め勝つというスタイルをもじって表現したわけだ。しかし、今シーズンの苦戦はそこからの脱皮を模索した結果でもある。べテラン中心のチーム構成から、(シーズン当初の木原、坂本の故障はあったにせよ)大物ルーキー山村、越川の二人の新人をスタメンに使うことはかなりのリスクがあった。

 

新人ながらミドルブロッカーとして活躍した山村宏太(サントリー)

 

 特に越川の攻撃力、サーブ力は捨てがたいものはあったが、そこは19歳。サーブレシーブを中心とした守りはまだ半人前。崩され、桑田と交代する場面もあったが、首脳陣はスタメンからほとんど外すことなく使い切った。その結果、四強に入ってからは苦手のサーブレシーブも及第点までこなせるようになり、逆にジャンピングサープは日本人トップ。决勝戦ではサーブで逆に相手のサーブレシーブを大きく崩し、優勝の起点となったのが越川であり、大事なところでプロックを連発したのが山村だった。

 

 また、シーズン中盤以降、栗原圭を司令塔に据えたが、それによりジルソンに集中していたトスを軽減することが目標だったが、それを象徴したのが決勝第2戦だった。ジルソンをおとりに使い、荻野が真ん中からのバックアタックを仕掛け、そこにクイックを絡める。また、ピンチになれば思い切って西田と清水をジルソンと栗原圭に代えて投入する。控えの選手を含め、層が厚くなり、その出てくる選手が自覚を持ってプレーをする。決勝戦はまさに新しい勝利の方程式を確固たるものにした試合だった。

 

 5連覇はことばでいうより難しい。例えて言えば「テストで100点をずっと取り続けなさい」と同じようなものだ。一度頂点を経験してしまうと、それに満足してしまうのが人間の常…。しかし、一度ギアが入ってしまえば、勝ち方を知っているサントリー。今回の優勝はべテランから若手にその精神が注入された優勝でもあった。

 

 

 今回は月バレ2004年4月号に掲載された第10回Vリーグファイナルを振り返った。5連覇の喜びを味わった栗原、荻野、山村、津曲、吉田たちが現在はチームのスタッフとして選手たちを支えている。栄光を再び手にするために、懸ける思いはコートの内も外も同じものだろう。

 

 

【2020-21 V.LEAGUE DIVISION1 MEN V・ファイナルステージ】

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