「Romper」(壊す) 試合後、スペイン人監督リカルド・ロドリゲスは、その動詞を何度か用いた。ディフェンスラインを突き…

「Romper」(壊す)

 試合後、スペイン人監督リカルド・ロドリゲスは、その動詞を何度か用いた。ディフェンスラインを突き破り、敵のスペースに割って入っていく時に使う戦術用語である。個人技で、もしくはコンビネーションを使い、ラインを越え、スペースを支配し、ゴール前に迫る。

 つまり、攻撃的な表現だ。しかしこの日、彼のチームはそこまで到達していなかった――。



厳しい表情で横浜F・マリノス戦を見つめるリカルド・ロドリゲス監督(浦和レッズ)

 3月14日、日産スタジアム。浦和レッズは、一昨シーズンの王者である横浜F・マリノスの本拠地に乗り込んでいる。徳島ヴォルティスをJ1に昇格させた手腕を引っ提げ、ロドリゲス監督が就任して1年目。開幕から1勝1分け1敗で迎えた4戦目だった。

 開始2分、ロドリゲスの浦和は早々にチームとしての完成度の差を見せつけられることになった。

 相手の激しい出足のプレスに、杉本健勇がサイドで身動きできなくなって、パスをカットされてしまう。左サイドにボールを流し込まれると、フリーの仲川輝人が折り返したボールをGKがわずかに触るが、前田大然に押し込まれた。

「去年との違いは、よりアグレッシブになった点だろう。前からプレスをはめる動きだけでなく、ボールを持った時のゴールに迫る激しさ。チーム全体でやろうとしているサッカーができた」(横浜FM/アンジェ・ポステコグルー監督)

 失点シーンで、浦和は左サイドバックの山中亮輔が全力で攻め上がりを見せており、カウンターを食らう形で裏を突かれていた。攻撃的に出た代償とも言えるかもしれない。しかし、山中はハーフライン付近で汰木康也と重なっていただけに、むしろ組織としてのズレと言えるだろう。

 26分、浦和はボールをつなげて自陣から出ようと必死だった。それが彼らの求めるスタイルなのだろう。しかし、はめ込まれてしまい、自陣でボールを失うと、クロスから落としたボールを、再び前田にボレーで叩き込まれた。

 ビルドアップとプレッシングの精度対決で敗れた形だ。

「後ろからビルドアップして攻める形は、キャンプからずっとやってきているので、1、2試合、結果が出なかったからといっても、ぶれずにやっていきたいです。味方同士の距離感、いいポジションを取れるか、楽な体勢で受けられるか、を突き詰めながら、つなぐだけじゃないプレーも見せられるように」(浦和・西川周作)

 ボールをつなげるのは簡単ではない。ロドリゲス監督の戦術が浸透するのに、時間が必要なのだろう。今は道半ばというよりも、始まったばかりだ。

 前半、浦和はプレスをかいくぐってゴール前に迫り、プレッシングでパスミスを誘うシーンも作った。横浜FMが受け身になったこともあって、前半のラスト10分は優勢に試合を進めていた。伊藤敦樹が中盤のラインの裏でボールを受け、左サイドを走った汰木にスルーパスを入れ、折り返したボールを決定的なシュートまで持ち込んだ。

<Romper>

 まさにラインを破り、スペースを崩していた。ロドリゲス監督の狙いどおりだ。

「2点取られた後、自分たちもいくつかチャンスを作ることができました。でも、そこでの質が足りない。決定力不足とも言えますが、チャンスの数も90分間を通してもっと増やさないと」(浦和・小泉佳穂)

 浦和の攻撃は単発だった。後半はほとんどチャンスを作れていない。激しさを増した横浜FMの連動を前に、常に後手に回った。とりわけ浦和の左サイドは横浜FMの"狩場"になっていた。

 55分、浦和は敵陣まで攻め込んだものの、呆気なくカウンターを食らい、ラインが破られる。先制点と同じく、帰陣していない左サイドバックが空けたスペースにボールを流し込まれた。その折り返しを相手のサイドバックに決められたのだ。

 3-0とリードされた後も、狙いをつけられた左サイドは炎上同然だった。にもかかわらず、ロドリゲス監督は何の指示も出していない。開幕以来、左の攻撃力はチームの武器になりつつあったが、裏返しにされたら弱点になることはスカウティング段階でわかっていたはずだが......。

「(試合を通じて)マリノスの方が上回っていたのは事実だろう。しかし我々が敵陣でプレーし、ラインを破る場面もあった。改善が見られた部分もあり、その質を上げていきたい」(浦和・ロドリゲス監督)

 浦和が1、2点取っていてもおかしくはなかったが、横浜FMがもう4、5点取っていてもおかしくない試合だった。ロドリゲス浦和の完敗だ。

 プレーモデルの確立は一朝一夕ではいかない。有力な外国人選手が不在な状況も、大きなアゲインストと言える。浦和はしばらく、"ベター"を探りながら、着地点を見つける戦いが続くだろう。少なくとも個人任せだった昨シーズンよりも、戦いのデザインは伝わってきた。

 次節は中2日の3月17日、ホームでコンサドーレ札幌との戦いになる。