オーストラリア・メルボルンで開催されている全豪オープン(1月16~29日/ハードコート)で、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)が、ドローの上半分と下半分の山からそれぞれ一つ、また一つと勝ち上がり、ついに決勝ま…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている全豪オープン(1月16~29日/ハードコート)で、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)が、ドローの上半分と下半分の山からそれぞれ一つ、また一つと勝ち上がり、ついに決勝までたどり着いた。いま世界中のテニスファンは、この続きが見たくて仕方がないだろう。  ふたりのグランドスラムでの最後の決勝対決(2011年全仏決勝)から、ほぼ6年が経っている。フェデラーは35歳となり、ナダルも30歳となった。

 ふたりはもう一度、トップレベルで戦うことができるのだろうか。  フェデラーとナダルはそれぞれ準決勝で、厳しい5セットマッチを戦い抜かなければならなかったが、その試合内容はファンをまったく失望させなかった。世界1位と2位のアンディ・マレー(イギリス)とノバク・ジョコビッチ(セルビア)が大会一週目で敗れたとき、ファンたちが望んでいたドリームマッチが、今夜、ロッド・レーバー・アリーナで実現する。  この試合にかかっている何か----フェデラー対ナダルという華やかなカード、あるいは全豪オープン・タイトルよりも大きいそれとは、いったい何だろうか? そこには目指してプレーする価値のある歴史がある。

 もしもフェデラーが勝てば、彼はすでに歴代1位のグランドスラム・タイトル最多記録「17」に、もうひとつタイトルを加え、ライバルたちとの差を広げることになる。

 一方で、もしもナダルが勝てば、彼はフェデラーに次ぐグランドスラム・タイトル数「14」にもうひとつ加えて「15」とすることになり、ピート・サンプラス(アメリカ)を追い越して、2位の座を独占するばかりか、フェデラーの17タイトルに、気を揉ませるほど近づくことになる。  「その試合の歴史的背景、次のグランドスラム大会が全仏というときに、それが17-15になるのか、あるいは18-14になるのか、というのは両選手にとって本当に大きな違いだ」と言ったのは、元全米チャンピオンのアンディ・ロディック(アメリカ)だ。  「歴史という意味で言えば、これは全豪オープン史上、ともすればグランドスラム史上、もっともビッグな試合と言えるかもしれない。この試合にかかっているものは、どんなプレーヤーも理解しうるもので、ともするとそれを超えている」  この試合がもたらすマグニチュード(震度)は本人たちも感じている。  「ラファは間違いなく僕に、テニスにおける最大のチャレンジを突きつけた」と、フェデラーは昨年の全米チャンピオンであるスタン・ワウリンカ(スイス)を倒した準決勝のあとに言った。

 「僕らが何年にもわたり、いくつかの“武勇伝的なバトル”を繰り広げてきたことをうれしく思っている。そしてもちろん、ここで彼とまたプレーするというのは“超現実的な感じ”がする出来事だ」  ナダルは、彼自身が左手首、フェデラーが膝を故障して長い休養をとったあとで、今揃って戻ってきたことについて、ふたりともが今年の最初のグランドスラム大会で決勝に進出できるなど、想像もしていなかっただろうと言った。昨シーズンの終盤は故障の影響で休養をとったことで、ふたりともランキングが落ちて、この全豪では厳しいドローを引き当てていた。  「僕にとってこれは名誉なことだ」とナダルは言った。「僕ら双方が困難を経験した数年のあとに、グランドスラム大会の決勝にふたたびたどり着いて、お互いにまた競い合うチャンスを手に入れたというのは非常に特別なこと」。  ナダルは、キャリア全体の対戦成績で23勝11敗とフェデラーを圧倒し、またグランドスラム大会での11対戦のうち9対戦に勝っている。  しかしフェデラーは、今年の全豪オープンのハードコートは彼のチャンスを少し広げているかもしれない、と感じているようだ。彼は今年のサーフェスは過去数年よりも速く、それがナダルのプレースタイルより、自分のスタイルのほうに適していると信じている。  またフェデラーは、この大会期間中にコート上で費やした時間がナダルよりも短く(ナダルの19時間に対してフェデラーは13時間と40分)、理論上は、決勝でより活力があるのは自分のほうだと考えている。ふたりとも今大会で2度の5セットマッチを生き延びたているが、ナダルのほうが、より長く、より体力を消耗させるものだった。  フェデラーはさらに、自信という意味でも幾分優位な可能性がある。ナダルの戦績はここ数年劇的に落ち、彼はトッププレーヤーに対してよいプレーができずに苦しんできた。彼はまた、2014年全仏以来、グランドスラム大会で準々決勝を超えられていない。2014年全仏は彼が優勝した最後のグランドスラム大会でもある。  そうはいってもナダルが健康であれば、テニス界でもっともフィットネスレベルが高い選手のひとりであることは間違いなく、失望を誘った敗戦の年月のあとだけに、間違いなくグランドスラム大会での成功に飢えている。  誰が勝とうと試合はきっと思い出深いものになるだろう。大会主催者は7500席あるマーガレット・コート・アリーナを、巨大スクリーンで試合が見られるようにファンのために開放することを決めた。おそらく今夜のメルボルン・パークには、おびただしい数の観客が押し寄せることになるはずだ。  「テニス界でもっとも偉大なふたりが対決することになる」。グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)は、準決勝で5時間近い戦いの末にナダルに敗れたあとこう言った。

 「それはきっと素晴らしい試合になるだろう。もちろん皆がその試合を見るはずだ、僕も含めてね」(C)AP(テニスマガジン)