昨季は優勝争いに加わることができないまま8位でシーズンを終えたサンフレッチェ広島だったが、個人的に今季のこのチームには…

 昨季は優勝争いに加わることができないまま8位でシーズンを終えたサンフレッチェ広島だったが、個人的に今季のこのチームには小さくない期待感を抱いていた。

 3−4−2−1から4−2−3−1にシステムを変え、より攻撃的なチームへと進化を遂げようとする姿勢を示していたし、経験値を高めた森島司や浅野雄也らのさらなる飛躍も望まれた。そして、なによりジュニオール・サントスの加入が大きい。



浅野雄也の2学年上が兄・拓磨

 昨季、横浜F・マリノスで見せたパフォーマンスは圧巻だった。22試合で13得点という成績もさることながら、驚きなのは圧倒的なスキルの高さだ。速さがあり、強さもあり、テクニックもある。機動力と献身性も備えるので、高い位置での守備が求められる広島に打ってつけの人材と言えた。

 ところが、強い風と雨が降りつけた鹿島アントラーズのアウェーゲームに、このストライカーはケガのため不在だった。そして新たなエースを欠いた広島は、攻撃的とは程遠い姿を晒してしまうのだ。

 もちろん、ジュニオール・サントスの不在が痛かったのはたしか。開幕2試合連続ゴールと早くも結果を出している得点源を欠けば、攻撃性が薄まるのは致し方ない。

 ただし、原因はそれだけではないだろう。30分に浅野のゴラッソで先制するまではよかったが、それ以降、重心が下がって後方で耐えしのぎ、ただ長いボールを前線に蹴り出すことしかできなくなってしまった。その戦いぶりは「ひとつのチームはサッカーをしようとして、ひとつのチームはサッカーをしていなかった」と、鹿島のザーゴ監督からも皮肉られるほど。

 当然、リードしているのだから、勝つためには守りを固めるのも戦略である。しかし、あまりにも早い時間帯から守勢に回れば、耐えきれなくなるのは必然だ。後半はまさに防戦一方となり、69分に失点し、1−1の引き分けに終わっている。

 今季の広島はこの鹿島戦も含め、開幕からすべての試合で先制している。しかし、逃げ切れたのは前節の北海道コンサドーレ札幌戦の1試合のみ。ベガルタ仙台との開幕戦では、数的優位を手にしながらも土壇場で追いつかれ、第2節の横浜FM戦では2点のリードを守り切れなかった。

「鹿島の試合の入りは非常にいいので、そこに負けないように我々もいい入りができた。今季は入りは悪くない」と城福浩監督が振り返るように、いい形で試合に入り、先制点を奪えているのは好材料ではある。

 しかし、次第に消極的となってボールを前に運べなくなるのは、相手が退場者を出した仙台戦を除けば、何とか逃げ切った札幌戦も含めてすべてが同じ展開である。

「守備の時間が長いと危ないシーンも出てくる。もう少し相手陣内でボールが持てるような状況を作れるようにしないといけない」

 指揮官は課題を認識しているが、連戦が続くなか、うまく修正できていないのが現実だろう。

 看過できないのは、被シュートの多さだ。札幌戦、鹿島戦と2試合連続で21本のシュートを浴びている。

 逆の見方をすれば、「よくぞ耐えきれた」とも言える。GKの大迫敬介をはじめ、CBの佐々木翔、荒木隼人、あるいは新加入の今津佑太も含め、守備陣の実力はリーグ屈指だろう。だからこそ、求められるのは攻撃の時間を増やすことだが、現時点ではその課題に解決の糸口は見えていない。

 広島の狙いとしては、まずシンプルに前に蹴り込んで、相手のラインを下げる。その後の選択肢としては、以下の3つになるだろう。

(1)CFのドウグラス・ヴィエイラが収める。
(2)セカンドボールを回収する。
(3)高い位置からプレスをかけてショートカウンターに持ち込む。

 何とか敵陣で試合を運びたい意図は見えるが、セカンドボールが拾えない。あるいはプレスのハマりが悪ければ、相手にボールを持たれ、必然として押し込まれることとなる。押し込まれれば、後方で耐えるしかなくなり、両サイドハーフも最終ラインに組み込まれてしまう。

 鹿島戦では、6バックのように守る時間帯も見られた。そのポジションを担った森島も、エゼキエウも、目立ったのは攻撃ではなく、むしろ守備面。前の人数を増やすことを目的としたシステム変更は、現時点ではうまくいっていない。

 そんななかでポジティブな材料を探すなら、浅野の存在だろう。

 鋭い突破が武器のサイドアタッカーだが、ジュニオール・サントスが不在だったこの試合ではトップ下としてプレー。スピードを生かした裏抜けや、狭い局面でも失わないドリブルで局面を切り拓き、得意とするエリアから強烈な一撃も叩き込んでいる。

「一番はゴールを意識しています」と本人が口にするように、得点に対する意識も高まっている。24歳のアタッカーが兄・浅野拓磨(現パルチザン)のようなブレイクを実現すれば、広島の未来には希望の光が差し込んでくるはずだ。

 いい状態ではないにもかかわらず、ここまで負けていないことも前向きに捉えられるかもしれない。課題が明白なぶん、修正も図りやすいだろう。新たなチャレンジには相応の時間がかかるもの。その意味で、期待感はまだ薄らいではいない。