佐々木隆道は厳しめの採点をした。
「40点くらい、ですかね」
 1月28日、福岡・レベルファイブスタジアムでおこなわれた入替戦。日本代表として13キャップを重ね、サントリーサンゴリアスで中心選手として10年間活躍してきた佐々木を今季の新戦力とした日野自動車レッドドルフィンズは、コカ・コーラレッドスパークスに挑むも、22-32で敗れた。わずか10点差。昨季までトップイーストの中位以下だったチームが、初めてトップリーグ昇格へのチャレンジマッチと入替戦に出場し、スコア的にも、内容的にも“健闘”と言えるものだった。なのに、佐々木は「正直、悔しさしかないです」と言った。

「日野の選手たちにとっては勉強になったと思うし、すごくいい経験をしたと思います。たくさんチャレンジして、たくさん通用する部分が見えて、こっちが自信を持たせてもらうような試合になったので、日野の一歩としてはすごく誇らしい」

 でも、勝ちに行ったのだ。
 互いに強みとしていたスクラムで、日野自動車は何度も優勢になった。モールも通用し、ディフェンスでも、接点のボール争奪戦でもコカ・コーラを苦しめた。だからこそ、悔しいのだ。
「フィジカルとかコンタクトで勝ちながら、ゲームに勝てないというのは、やっぱり(評価の)点数は低くなります。ゲームの理解度が十分ではない。まだ経験不足だったということです。悔しい気持ちが、みんなが変わるきっかけになればと思います。明確に、自分たちはどうなっていかなければいけないのかというのを、みんなで意識して……。これで、より激しいことをやらせられるな(笑)。このままでいいわけがない。変えるべきことをしっかり変えて、日野が大事にしてきた、僕が入る以前のもっともっと昔から積み上げてきたもの、日野の歴史というのをつないでいくという意味でも、もっともっといいクラブにしたい。みんなに注目してもらえるようなクラブになっていく、きっかけになった一日だと思います」

 数週間前の、トップチャレンジを戦っていた頃の日野自動車とは大きく変わっていた。三地域リーグの2位チームによる総当たり戦では圧倒したものの、1月3日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれたトップチャレンジ1の第1節でNTTドコモに12-68と惨敗し、目が覚めた。佐々木はこう振り返る。
「NTTドコモさんと試合をしたときに、自分たちとしてすごく恥ずかしい試合をしてしまった。勇気のないプレーとか、チームマンじゃないようなプレーがたくさん見受けられて……。そこからみんなの意識も変わりましたし、それまで試合に出られなかった選手が次にチャンスをつかんだときにすごくいいパフォーマンスをして、今日のような結果につながった。虎視眈々とみんながいい準備をしてくれたからこそ、どんどん変わっていったと思います」

 佐々木隆道が加入する前の日野自動車は、全員が本気でトップを目指してやっているチームではなかった。高校時代から日本一を争うようなトップチームでプレーしてきた佐々木にとって、当たり前と思っていた環境がない世界に入って、最初は理解できないことが多かったという。
「マインドセットのところから、プレーのどういうところを大事にしなきゃいけないのか、とか。ホント、最初にチームに入ったときは、そういうものがまったくなかった。選手としての自分が背中で見せられること、言葉で気づかせてやれること、スタッフとコミュニケーションをとって、いろいろ試行錯誤しました。練習のなかから少しずつ、選手側の意見をスタッフに取り入れてもらって、細谷さん(監督)を中心としたスタッフがいい練習を組み立ててくれて、少しずつ、日々の練習や生活でも変わっていったと思います。でも、まだまだですね(笑)。ホントに、トップリーグでプレーするにふさわしいマインドセットとか、準備を、これからやっと、みんな本気になれると思います」

 細谷直監督は佐々木について、「影響力はものすごく大きい。グラウンドで身体を張り続けるところ。規律正しいプレーをしっかりやるところ。トップリーグであれだけ実績を残している人間が、ごくごく当たり前のことを100%やり切るところ。そして、それをやらなかったことに対しての厳しさというところを、改めて選手たちが感じたと思います。お手本です」と評価する。キャプテンの廣川三鶴は、「ハードワークを絶対に怠らない。(佐々木のことを)非常に尊敬する選手も多いし、グラウンド内外で非常に影響を与えていい方向にチームを動かしてくれたと、キャプテンとしても非常に頼りがいのある存在です」と語った。

 コカ・コーラとの入替戦でも、FLの佐々木がプレーや態度で仲間を鼓舞したシーンは多かった。WTB篠田正悟が決めたチーム最初のトライは、ガツンとぶつかっていった佐々木の勇気ある前進がきっかけとなり、NO8千布亮輔の突破とオフロードパスが続いて生まれたものだった。ハーフタイム前に挙げた2本目のトライは、その前に佐々木がボールを持った選手にからんで相手の反則を引き出し、スクラムを選択して得点につながった。佐々木はこの試合、ブレイクダウンで4回ターンオーバーする活躍だった。
「ボールを獲ることが自分の仕事なので。いいファイトができたんじゃないかなと思います。でも、それもこれも、周りがロータックルしてくれるからこそなので、みんなで戦っているという感じですね」
 母校・早稲田大学の後輩であるコカ・コーラのFL山下昂大キャプテンが「隆道さんに対していいアプローチができなかった。隆道さんのところはもっと僕がケアしなければいけなかったので、そこは一選手としてもっと成長したい」と試合後の会見で語ったことを伝えると、ニッコリ笑い、「彼も僕にとってはかわいい後輩です」と言った。

 日野自動車は来季、新設される「トップチャレンジリーグ」で戦う。今回の入替戦で敗れたチームを含む、三地域リーグ(イースト、ウェスト、キュウシュウ)の上位8チームが混在し、これまでよりもレベルの高いリーグで競うのだ。
「いいことだと思います。本当に。プレッシャーがないなかで気持ちいいラグビーをしていてもしょうがないので」と佐々木は言う。楽しみだ、と。日野自動車は、しっかりフィジカルを強化して、ラグビーというゲームそのものへの理解度を上げて、また、挑む。「みんなが誇りに思えるような最後を描きながら、来年も、ハイ。気持ちがもう来年に行っちゃってますね(笑)」