ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 3歳クラシックの前哨戦、トライアル戦が真っ盛り。今週もオープン特別の…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
3歳クラシックの前哨戦、トライアル戦が真っ盛り。今週もオープン特別のアネモネS(3月14日/中山・芝1600m)、GIIフィリーズレビュー(3月14日/阪神・芝1400m)と、GI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)のトライアルレースが東西で行なわれます。
そんななか、今週から開幕する中京では注目の古馬重賞が開催されます。GII金鯱賞(3月14日/中京・芝2000m)です。
今回、世間からも大きな注目を集めている理由は、昨年の三冠牝馬デアリングタクト(牝4歳)が出走するからです。
牡馬のコントレイル同様、無敗で牝馬三冠を遂げた同馬。GIジャパンC(11月29日/東京・芝2400m)では、三冠牝馬の先輩アーモンドアイ、コントレイルとの夢の対決を果たしました。結果は3着と無敗は途切れてしまいましたが、牡馬や古馬相手にも通用する能力があることを示しました。
今回、金鯱賞を始動戦に選んだ理由のひとつは、左回りの走りを確認しておきたい、という点があるようです。確かに初めての敗戦となったジャパンCでは、勝ってきたレースでは見せなかった、モタれる面や最後に苦しがるところがあったので、陣営としては課題を突きつけられた気持ちかもしれません。
とはいえ、負けた相手はアーモンドアイとコントレイルだけ。「同世代の牝馬相手に勝っただけで、牡馬や一流の古馬には通用しない」といった一部の批判的な声を黙らせるには十分な走りを見せたと思います。
それでも、あえて左回りの金鯱賞から始動するということは、陣営はすでに秋のGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)やジャパンCを見据えているのかもしれませんね。
距離、コース、馬場、展開を問わず、必ず直線で伸びてくるのが、デアリングタクトの強み。ジャパンCでモタれたのは、左回りが苦手だからではなく、強い相手と本気で走って疲れてしまったからだと、個人的には見ています。中京という舞台は、デアリングタクトの末脚を見せつけるには最適だと思います。
ちなみに個人的には、デアリングタクトは2400mくらいの距離がぴったりの馬で、2000mはやや短め、マイルの桜花賞などは能力の違いで勝ったと思っています。引退後に振り返ってみれば、アーモンドアイも似たような距離適性でした。
だからといって、今回の条件が合わないとは思いません。中京コースはタフな馬場になりやすいので、2000m戦でも長めの距離に適性のある馬にとっては対応しやすい舞台です。
鞍上の松山弘平騎手もGI秋華賞(京都・芝2000m)の際には早めにマクる競馬を見せるなど、デアリングタクトとのコンビでは一戦ごとに乗り方がうまくなっている印象があります。今回は順当に結果を出してくれるはず、と思っています。
相手となる有力候補としては、グローリーヴェイズ(牡6歳)を挙げたいと思います。同馬は2400m以上の中・長距離をより得意としているタイプですが、こちらも距離以上のスタミナや総合力が問われる中京コースなら問題ないでしょう。
昨秋のジャパンCは5着。三冠馬3頭のワンツースリーは後世に語り継がれていくと思いますが、大逃げを打ったキセキ、三冠馬3頭の叩き合いに最後まで食い下がったカレンブーケドールとともに、早めに抜け出して一瞬「やったか」と思わせたグローリーヴェイズも、伝説のレースの盛り上げにひと役買って、非常にいい競馬を見せてくれました。ここでも上位争いが期待できます。
その他、転厩初戦のキセキ(牡7歳)、ペルシアンナイト(牡7歳)といったGI馬も気になる存在ですが、今回の「ヒモ穴馬」にはこれら実績馬以上にこの舞台が合いそうな、ブラヴァス(牡5歳)を取り上げたいと思います。

勝負根性が魅力のブラヴァス。金鯱賞での奮闘が期待される
GI出走経験はなく、GIIに挑戦するのも今回が初めてという立場ですが、過去3戦はGIIIで3連続連対(2着、1着、2着)。クラシックで活躍した母ヴィルシーナと違って、条件戦から地道に実績を積み上げた馬です。
昨年の4歳シーズンは、5戦すべてが芝2000m戦。左回りのGIII新潟記念(9月6日/新潟・芝2000m)で重賞初勝利を飾りました。中京コースはデビュー戦(3着)以来となりますが、そうした結果から条件は合うのではないか、と踏んでいます。
勝つ時も、負ける時も接戦というタイプで、同馬を管理する友道康夫厩舎の見解も報道で読みましたが、勝負根性やパワーがブラヴァスの魅力と見ているようです。こういう馬は自分より格上の馬がいるレースで、強い馬に食い下がって実力以上の走りを見せてくれるもの。GI馬との対決を経験することで、さらなる成長が見込めると思います。
2000mの距離にこだわっていることからして、このあとはGI大阪杯(4月4日/阪神・芝2000m)が視野に入っていると思いますが、今年の大阪杯はコントレイル、サリオス、そしてグランアレグリアら、すでに超豪華メンバーが集うことがわかっています。
それを考えると、ここである程度の結果を残さなければ、大阪杯では勝負にならないでしょう。GI馬の間隙を突く、大駆けを期待したいと思います。