3月7日、兵庫県淡路市・兵庫県立淡路島公園内ニジゲンノモリにおいて開催された「Parkour Top of Japan 2021 in 淡路島 presented by Xperia」(以下、「Parkour Top of Japan」)。…
3月7日、兵庫県淡路市・兵庫県立淡路島公園内ニジゲンノモリにおいて開催された「Parkour Top of Japan 2021 in 淡路島 presented by Xperia」(以下、「Parkour Top of Japan」)。
淡路島に集結した国内のトップトレーサーによる、フリースタイル王者の座をめぐる熱戦の様子をFINEPLAYがレポートする。
優勝者・朝倉聖&永井音寧の決勝でのムーブクリップも掲載。今最も注目を集めるアーバンスポーツ・パルクールの熱気を感じてほしい。
国内トップトレーサーが淡路島に集結
泉ひかり / photo by Kazuki Murata
「Parkour Top of Japan」は兵庫県淡路市・兵庫県立淡路島公園内ニジゲンノモリ 水の遊び場にて開催。
遊具を生かしたオブスタクルが設置された特設会場を舞台に、全国から集結した精鋭のトレーサー同士の熱戦が繰り広げられた。
海外の大会では既にあるモノを活用したコース作りは稀であるとのこと。
今大会の新たな試みに対して、泉ひかりは「遊具やオブスタクルを使っていかに自分らしいスタイルを見せるか」を考えて大会に臨んだという。
開会前の練習時間、会場では遊具を生かしたフローの構築をトレーサーたちがお互いに相談をする姿も見られた。
会場の様子 / photo by Kazuki Murata
写真左から実況・北條瑛祐、解説・YUUTAROU、特別ゲスト・ZEN / photo by Kazuki Murata
巨大なゴジラが見守る会場では、Red Bull DJのDJ ZEROがプレイ。音楽でも会場を盛り上げる。
大会の模様はSPORTS BULLでLIVE中継が実施されたが、現地にも多くの観客が詰めかけた。健康チェックや距離の確保、消毒やマスク着用の徹底をはじめとする厳重な感染対策を実施し、トレーサー待望のリアルな現場での大会開催が実現した。
ジャッジ(写真左から荒本英世、TEN、898) / photo by Kazuki Murata
ラストアイドル(写真左から岡村茉奈、大森莉緒、山本愛梨) / photo by Kazuki Murata
ジャッジは日本体操協会でのジャッジ資格を持つ898、TEN、荒本英世の3名が担当。北條瑛祐が実況を務め、解説は日本のパルクールシーンを築き上げてきたYUUTAROUと特別ゲストのZENという豪華ラインナップ。インタビュアーとしてラストアイドルから山本愛梨、大森莉緒、岡村茉奈の3名も登場し、会場を大いに盛り上げた。
予選はリトライ連発で波乱の展開 多様な個性のトレーサーがしのぎを削る
塩幡睦大 / photo by Kazuki Murata
男子11名、女子4名のトップトレーサーが各地から集結。男女それぞれのカテゴリで決勝出場を決める予選が行われた。
今大会では、90秒以内で各選手パフォーマンスを行い、ジャッジの3名の採点により順位を決定。
採点項目は安全性や流れ、熟練度を測る「実施」、コースやオブスタクルの使用度やつなぎを加味する「構成」、トリックの多様性やひとつひとつのトリック、全体的な活動量を重視する「難度」の3つ。
高得点を獲得するためには、会場内に散らばったオブスタクルをバランスよく活用して難度の高いトリックを決めていく必要がある。競技時間が長いほど得点も高いが、難度の高いトリックを決めながらの長時間の演技はスタミナ切れによる演技全体の流れ・フローへの影響も大きくなるため注意が必要だ。
予選では各選手1度だけ演技をやり直しできるリトライ制度が設けられているが、リトライをすれば他の選手よりも競技回数が多くなるため、決勝進出時の演技にも影響しかねない。
鈴木智也 / photo by Kazuki Murata
男子予選では、曇りだした空による気温低下の影響のためかリトライを申告するトレーサーが続出。
結果選手たちのスタミナを奪う波乱の展開となる。90秒を動ききるスタミナが、決勝進出と予選敗退の運命を分かつ大きな分岐点となった。
鈴木智也は「一発勝負の現地大会は1年ぶり。何度もテイクを収録できるオンライン大会に慣れてしまっていたこともあり、ミスへのプレッシャーもあった」と予選を振り返る。
野村大志 / photo by Kazuki Murata
また女子予選では、遊具をうまく活用したフローを構築し、疾走感のある演技で会場の歓声を誘った泉ひかりや、滑らかで流れるようなフローに観客の多くが見惚れた山本華歩が注目を集める。
男子予選では、トリッキングと呼ばれるアクロバットと武術の動きを組み合わせたエクストリームスポーツを吸収して自身のスタイルとしている大貫海斗や、ブレイキンのムーブを取り入れたスタイルを武器とする野村大志といった個性的なトレーサーが活躍。
十人十色の個性的なトレーサーのスタイルを目の当たりにした会場からは時にどよめきが起こる。そしてトリックを決めたトレーサーには惜しみなく拍手と歓声が送られた。
決勝を制したのは優勝を誓い合った朝倉聖&永井音寧
永井音寧/ photo by Kazuki Murata
女子決勝へ進んだのは、2019年に行われた「第1回パルクール日本選手権」優勝の実力を持つ永井音寧と山本。両者ともに迫力のある好演技で会場からは歓声が飛ぶ。演技ラストで大技「キャスト」を成功させた永井に1点差で軍配が上がり、永井は見事チャンピオンの称号を獲得した。
朝倉聖 /photo by Kazuki Murata
男子決勝へは朝倉聖、鈴木智也、勝乗志音、鍬崎竜也、大貫海斗 、牧野晃樹の6名が進出したが、牧野は予選の怪我によって棄権。5名で決勝が争われた。
各選手個性的なスタイルで、予選とは打って変わった好演技が連発。優勝争いの行方はジャッジの審査となる。
2位の鈴木、3位の勝乗はともに21点。演技ラストで得意技「トリプルコーク」を成功させた朝倉が1点差の22点で競り勝ち、チャンピオンとなった。
写真左から優勝:朝倉聖、永井音寧 /photo by Kazuki Murata
優勝者インタビューにおいて、朝倉は永井との同時優勝を「大会前から約束していた」と明かした。
永井も「絶対に一緒に優勝したい」と思っていたという。優勝を誓いあった2人は約束を果たし、見事W日本一を達成した。
笑顔の大会 それぞれがパルクールに込める想い
鍬崎竜也 / photo by Kazuki Murata
大会自体がなかなか開催できない状況下にあって、トレーサーにとっては久しぶりの大会となった「Parkour Top of Japan」。演技するトレーサーたちの顔は皆一様に明るかった。
「楽しかったが一番。お客さんの声が力になった」と大会を振り返るのは鍬崎。オンラインにはない会場の雰囲気やオーディエンス声援のありがたさを再び噛み締めたという。
勝乗も「今回久しぶりにみんなが集まって大会ができることに感謝している」と競技終了後の弾んだ息で語った。
トレーサーの誰もが、インタビューの第一声に「楽しかった」と笑顔で答えた。
勝乗志音 / photo by Kazuki Murata
今大会では特別ゲストとして解説を務めた日本人初のプロパルクールアスリート、現在は日本体操協会パルクール委員会委員長も務める日本パルクールシーンのパイオニア・ZENは大会を振り返って次のように語る。
「今回の大会では日本のパルクールシーンとして、進むべき一歩を踏めたと思っています。けれども今後のオリンピックを含めた大舞台へ向けての準備が整ったかといわれれば、決してそうではないと思っています」。
アーバンスポーツの盛り上がりの中にあって、日本のパルクールシーンの「成長速度」に他のスポーツとのギャップを感じていたというZENは「運営側のノウハウ」の「蓄積」など、「課題」もあったと考える。
そういった「状況」の中で今回の大会は「日本のパルクールシーンが初めて一体となって作り上げることができた大会」であるという。
「ふさわしい形でふさわしいところまで行けるように、パルクールらしいスポーツ運営」を引き続き進めていきたいと真剣な目で語るZENの瞳には、パルクールの未来がしっかりと見据えられている。
トレーサーたちが「楽しかった」と口ぐちに話した様子を伝えると、「よかった」と嬉しそうに目を細めた姿もまた、印象的だった。
泉ひかり / photo by Kazuki Murata
今大会では惜しくも3位となったが、スピードランの分野で世界で活躍する泉は「状況が落ち着いたら、海外のいろいろな大会へ出場して、もっとパルクールを盛り上げていきたい」と目を輝かせて語る。
対して今大会2位であった山本は「今大会では次の世代の子にバトンタッチをするような気持ちで挑んだ」のだという。今後はコーチとして、新世代の育成に力を注ぐそうだ。
山本華歩 / photo by Kazuki Murata
アーバンスポーツの盛り上がりの中にあって、パルクールシーンもまた大きな拡大の時期を迎えている。
さまざまなトレーサーの想いが交差した「Parkour Top of Japan」。
日本のパルクールシーンは今、未来へ向けた大きな一歩を踏み出した。
優勝者コメント
男子優勝:朝倉聖朝倉聖 / photo by Kazuki Murata
嬉しいというか、ホッとしています。運もあったとは思いますが、音寧ちゃんと一緒に1位になろうという約束も果たせましたし、いろいろな人に1位になって帰ってきますと言っていたので、有言実行できて嬉しいです。
今の状況ではまだ難しいかもしれませんが、しっかり日本で準備をした上で、今後は海外でも積極的に活動していきたいと思っています。
また、この大会に携わってくださった皆さんには本当に感謝しています。ありがとうございました。
永井音寧 / photo by Kazuki Murata
これまでオンライン大会が多かった中で、リアルな大会が開催されることを聞いて、「頑張りたい」という気持ちと「みんなに会える」という気持ちの両方を感じました。
勝ちたいという気持ちもありましたし緊張もしましたが、まずは楽しんでやろうと思っていました。最後まで満足する演技ができて良かったです。
もともと聖くんとは、「一緒に出る次の大会では絶対一緒に優勝しようね」と話していたので、今回の大会で一緒に出場することがわかって「絶対一緒に優勝するぞ」と思いました。
なので聖くんが1位だと聞いて、思わず「よっしゃー!」と心の中で叫んでしまいました。
出場選手コメント
野村大志野村大志/ photo by Kazuki Murata
純粋に楽しかったです。パルクールの仲間たちと久しぶりに生で顔を合わせることができたので非常に良かったと思います。
パルクール自体大きいカルチャーではないので、今はアスリートをしながらコーチングをして、パフォーマンスもするという2足3足の草鞋を履いています。
今後はアスリートやパフォーマンスの活動に重点を置いて、個人のメディアを利用してパルクールを広めていきたいです。
鍬崎竜也 / photo by Kazuki Murata
「楽しかった」という気持ちが一番ですね。お客さんの声が力になりました。緊張もなく楽しくできました。
1年前まではケガのために出場ができなかったのですが、怪我からの復帰後の成長が大きいと思います。他の誰よりも練習しているという自負はありました。
人がしない動き、見たことのない動きをしたいと思っています。
今大会では体力的な面で強化の必要があると感じたので、持久力をもっと高めていきたいです。
鈴木智也 / photo by Kazuki Murata
国内大会で2位を取ったことがなく、3位が最高順位であったので、嬉しいです。
最近のオンライン大会では何テイクもやり直しができるので、一発勝負の現地大会は1年ぶり。オンライン大会に慣れてしまっていたので、プレッシャーもあったのかなと思います。しかし、決勝では一発で決め切ることができたので良かったです。
今後はジムのコーチを続けながら、大会にもバンバン出ていきたいと思っています。
勝乗志音 / photo by Kazuki Murata
前回の2019年第1回パルクール日本選手権も予選1位通過であったので、今回も同じパターンになりそうな予感がありました。むちゃくちゃ悔しいですが、大会を通して緊張もなく、走り切ることができました。
今回久しぶりにみんなが集まって大会ができることに感謝しています。
大会は楽しかったですね。自分の今できる全力のバランスが出せたのでそこが良かったと思います。
今後もどんどん大会に出ていきたいです。初心に帰って自身の技術を確かめながら、これからもパルクールを楽しみたいと思います。
山本華歩 / photo by Kazuki Murata
自分の強みである、流れるような移動系のフローをしっかり出せて良かったです。
次の世代の子も育ってきているので、今大会では次の世代の子にバトンタッチをするような気持ちで挑みました。
今後はコーチングを中心に、未来の人材の育成に力を入れていきたいと思っています。
泉ひかり / photo by Kazuki Murata
お疲れ様でした! 1年以上ぶりの現地の大会で、たくさんの仲間と会うこともできてとても楽しかったです。
今回は自分の得意なスピードランではなく、フリースタイルの大会だったので、遊具やオブスタクルを使っていかに自分らしいスタイルを見せるかを考えました。
結果、自分らしくミスもなく演技を終えることができたので、3位でしたが満足です。
コロナについてもこれからどうなるかはまだわかりませんが、ゆっくりいろんなものが回復してくると思うので、海外の大会などのいろんなところに行って、パルクールを盛り上げていきたいです。
ラストアイドル 大森莉緒 コメント
ラストアイドル 大森莉緒(写真左) / photo by Kazuki Murata
パルクールを間近で見ることができて、すごくカッコいいと思ったし、みなさんが頑張っている姿を見て、私たちも頑張らないとなと思いました。
選手のみなさん、本当にお疲れ様でした。
特別ゲスト ZEN コメント
ZEN(写真右) / photo by Kazuki Murata
パルクールシーンがスポーツとして徐々に盛り上がり、ここ数年ではFISEをはじめ世界的な大会が日本で行われることも多くなってきました。
しかし、この状況はある意味で日本のパルクールシーンの歩む速度よりも早すぎる状況だとも感じていました。
国内のトレーサーたちがこれまで海外の大会に出場するスタンスしかなかった時期のことを考えれば、現在の状況は環境的に恵まれているということもできます。
ですが、ある意味で選手のモチベーションの部分が追いついていなかったり、運営側のノウハウも蓄積できていないという課題もまたありました。
そういった意味では、今回の大会はYUUTAROUをはじめとする日本のパルクールシーンが初めて、一体となって作り上げることができた大会なのではないかと思います。
日本のパルクールシーンとして、進むべき一歩を踏めたと思っています。
フリースタイルに関しては国内大会を開くことができました。けれども今後のオリンピックを含めた大舞台へ向けての準備が整ったかといわれれば、決してそうではないと思っています。
ふさわしい形でふさわしいところまで行けるように、選手たちやサポートしてくださる方と一体となって、引き続きひとつひとつ、パルクールらしいスポーツ運営を進めていきます。
大会結果
男子写真左から3位勝乗志音、4位鍬崎竜也、6位牧野晃樹、2位鈴木智也、優勝朝倉聖、5位大貫海斗 / photo by Kazuki Murata
1位:朝倉聖 22点
2位:鈴木智也 21点
3位:勝乗志音 21点
4位:鍬崎竜也 19.5点
5位:大貫海斗 16点
6位:牧野晃樹 棄権
写真左から2位山本華歩、優勝永井音寧 / photo by Kazuki Murata
1位:永井音寧 22点
2位:山本華歩 21点
大会概要
朝倉聖 / photo by Kazuki Murata
大会名:Parkour Top of Japan 2021 in 淡路島 presented by Xperia
主催:東京都体操協会
主幹:株式会社CB(LIVE-link)
特別協賛: Xperia
特別協力:株式会社パソナグループ
協賛: 株式会社アミューズ、イフイング株式会社、KDDI株式会社、株式会社ストラグル、株式会社アール・シイーテイー・ジャパン、株式会社オフテクス、日建総業株式会社、株式会社BLAN、株式会社フリーエージェント、株式会社BLUE OCEAN INT.、ほけんの窓口グループ株式会社、明和地所株式会社
後援:国土交通省観光庁、兵庫県
競技運営:株式会社PKM
開催日時:2021年3月7日(日)13時~15時予定
開催地:兵庫県立淡路島公園 ニジゲンノモリ 水の遊び場
解説/実況:YUUTAROU(pkm)/北條瑛佑(ABCテレビアナウンサー)
競技種目:パルクールフリーラン
参加選手:男子 12名 / 女子 5名(招待選手)
ゲスト:ZEN(LDH JAPAN)/ ラストアイドル(山本愛梨、大森莉緒、岡村茉奈)
判定:パルクール審判(3名)により勝敗を決定
女子は予選上位2名で決勝。男子は予選上位4名で決勝。
優勝賞金:男女共 優勝10万円 / 2位6万円 3位4万円
オンライン中継:SPORTS BULLにてLIVE中継
auスマートパスプレミアムでの後日マルチアングル配信を予定
photo by Kazuki Murata
text by 金子 修平
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