新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、日本はもちろん、世界のサッカー界のスケジュールが大幅な変更を余儀なくなれた。…

新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、日本はもちろん、世界のサッカー界のスケジュールが大幅な変更を余儀なくなれた。W杯予選が中断し、日本代表の活動も限られたものになった。それでも、昨秋に欧州でトーレニングマッチを実施。3月末にはW杯アジア2次予選も再開される予定だ。そこで、かつて日本代表で活躍し、先ごろ書籍『徹する力』を出版した明神智和氏(ガンバ大阪アカデミーコーチ)に、現在の日本代表について話を聞いた――。



明神氏が高く評価する遠藤航。昨秋の親善マッチでは攻守で活躍した

 コロナ禍のなか、今まで当たり前にあった日本代表の試合をなかなか見ることができなくなってしまいました。そんな状況になってみると、代表戦が今まで以上に楽しみで待ち遠しい。そういう気持ちを、ものすごく強く感じるようになりました。        

 昨秋、日本代表がヨーロッパで約1年ぶりに親善試合を行ないましたが、ファンの人たちもみんな、同じ気持ちだったと思います。

 昨年、私はガンバ大阪ジュニアユースのコーチとして中学1年生を指導していましたが、彼らはキラキラした目で「今日は日本代表の試合があるよ。誰が出るかな」などと言いながら、本当に楽しみにしていましたし、試合が終われば、「誰々のあのプレー見た?」と盛り上がっていました。

 ただ、日本代表の選手やスタッフにとっては、チーム作りにおいて難しさがあるだろうと想像していました。限られた活動時間のなかで、パッと集まってパッと試合をするのは簡単ではないだろうな、と。

 その意味では、昨年の10、11月に行なわれた4試合は正直、「思ったよりもできるんだな」というところを感じることのできた試合でした。

 海外組だけでチームを編成し、試合をすることになった結果、移動時間が短く、時差もない。チームとしてというより、選手個々がベストに近いコンディションでできたことが大きかったのではないでしょうか。日本は今までどちらかというと、1対1で戦えるかどうかという部分で弱いと言われてきましたが、コンディションが整えば、その部分でも結構戦えるという印象が強かったです。

 もちろん、そこには選手個々の能力が上がっていることも理由としてあると思います。ですが、それ以上に海外でプレーする選手が増え、普段から同じような対戦相手とプレーしているから、海外選手を相手にしてもまったく違和感を覚えていないのが大きい。

 選手たちは所属チームでいろんな監督の下でプレーし、いろんなものを吸収して刺激を受け、自分たちが成長したなかで集まっているから、短期間でもチームとしてやるべきことのすり合わせができる。選手個々がたくましくなっているのを感じました。

 結果に関しては、やはり日本代表として日の丸を背負い、あのブルーのユニフォームを着る以上、常に求められるものです。メキシコに0-2と完敗を喫したことの残念さはありますし、選手も責任を感じていると思います。

 しかしながら、チームを作っている段階では、結果だけでは見えない部分もあります。

 おそらく森保一監督はひとつかふたつ、この2試合ではここを、この2試合ではここをというように、その遠征ごとのテーマを設定していたと思います。自分たちが何を求めていて、何ができたのか。そういう内容の部分では成果があったのではないかと思っています。

 昨秋のヨーロッパ遠征での4試合で特に目が行った選手は、ボランチの遠藤航選手。それから、センターバック(CB)の吉田麻也選手、冨安健洋選手です。

 まずCBのふたりに関しては、プレーのレベルが非常に高かった。CBはずっと日本が弱いポジションだと言われてきましたが、あのふたりは高さで負けていないし、1対1の守備でも能力の高い海外のストライカーに対応できる。なおかつ、ビルドアップもできるのだから、改めてスゴいなと思いました。

 そして遠藤選手ですが、何より表情や姿勢を見ただけで、自信を持ってやっていることがすぐにわかりました。

 所属クラブでコンスタントに試合に出場することで力をつけ、それがそのままプレーに出せているのでしょう。日本にいるときはDFもやっていましたし、守備のイメージが強かったですけれど、今回は攻撃の印象もかなり強かったです。

 遠藤選手がDFとFWとをつないで、攻守において連動性を生み出せるのは大きいと思います。それは前と後ろだけでなく、右と左をつなぐのもそうです。それゆえ、試合を見ていてもボールの動きに変なストレスを感じない。それはたぶん、やっている選手たちも感じていることだと思います。

 言い方を変えると、遠藤選手が出ていない試合を見ているときに、むしろ彼の存在感が高まるというか。遠藤選手が出ているのと出ていないのとでは、試合の締まり具合が違う。昨秋のヨーロッパ遠征では、そんなことを感じました。

 このときの試合は、日本からの海外渡航制限の影響で海外組だけでの試合となりました。Jリーグにも本来であれば呼ばれたであろう選手はいると思うので、そういう選手は正直、ストレスを感じていたと思います。その部分では国内組に少しハンデがあるとは思いますが、代表にふさわしい力があれば、どこでプレーしているかは関係ない。国内組もがんばってほしいです。

 Jリーグを見ていて気になる選手は......、やはり川崎フロンターレの選手が多くなります。今注目されている三笘薫選手もそうですが、家長昭博選手がすごくいいプレーをしています。今年35歳ですが、年齢は関係なく、Jリーグであれだけすばらしいパフォーマンスをしているのだから、代表でも見てみたいなと思います。

 自分と同じボランチで言えば、今年から海外へ行ってしまいましたが、守田英正選手は代表でも問題なくやれると思いますし、大島僚太選手もちょっとケガが多いのが気になりますが、昨季の戦いを見ていて、改めていい選手だなと思いました。

 あとは、(自らが所属する)ガンバ大阪の選手だからとかは関係なく、井手口陽介選手。もともと代表に入っていた選手ですし、そこでスタメンを張る力は十分あると思います。ぜひ代表でも見たいです。

 そして、ガンバからもうひとり、CBの昌子源選手。ここ数年はケガの影響で苦しんでいましたが、本来は代表でやれる選手。吉田選手や冨安選手に勝負していく姿を見てみたいです。

 ちょっと心配なのは、今後の試合日程です。3月に予定されていたW杯アジア2次予選のひとつ、ミャンマー戦が開催延期となりましたし、その後のスケジュールも見通せない状態にあります。

 とはいえ、代表戦がないことで選手のモチベーションが低下することはないと思います。選手各々が所属クラブでしっかりとリーグ戦を戦っていますから。

 ただ、最初にも言いましたが、やはり代表活動の機会が限られ、集まったときに短時間でチームを作っていかなければいけない難しさは、コロナ禍にあって、今後さらに強まるかもしれません。そんな状況のなか、いかに短時間でチームとして、あるいはグループとして、意思疎通を図れるかが大切になってきます。

 今まであれば、練習でトライしたことを試合でトライして、それでも合わなかったら、次の練習で合わせられるようにしよう。そういうことができました。でも、その時間がなくなってしまうと、例えば、わずか3日間で今まで以上に濃いサッカーの話をして、コミュニケーションをとっていかなければいけないでしょう。

 そんななかでも守備はかなりよくなっていると思うので、その守備を生かしつつ、ここからどう点を取っていくか。そこを楽しみにしています。

 3月に開催予定となっているW杯アジア2次予選のモンゴル戦(3月30日)は、もしかすると、国内組だけで日本代表を編成することになるかもしれません。

 もしそうなったら、それはそれでものすごく楽しみです。昨秋のヨーロッパ遠征ではチャンスがなかったJリーグでプレーする選手には、「海外組には負けてられない。今度はオレたちがやってやる!」という気概は絶対にあると思いますし、そういう気概も含め、そこで実際に力を出せる選手というのが、海外組に混じってもやっていける選手だと思います。

 無事にモンゴル戦が行なわれてほしいと思いますし、誰が選ばれるのか、選手選考も含めて楽しみにしています。

明神智和(みょうじん・ともかず)
1978年1月24日生まれ。兵庫県出身。現役時代は柏レイソル、ガンバ大阪、名古屋グランパス、AC長野パルセイロでプレー。日本代表でも活躍し、2002年W杯に出場。2019年に現役を引退し、2020年から古巣ガンバのアカデミーコーチを務める。