柏レイソルが今季初勝利を手にした。 J1開幕戦でセレッソ大阪に0-2、ルヴァンカップのグループリーグ初戦では横浜FCに…

 柏レイソルが今季初勝利を手にした。

 J1開幕戦でセレッソ大阪に0-2、ルヴァンカップのグループリーグ初戦では横浜FCに0-1といずれも完封負けを喫し、連敗スタートとなっていた柏。しかし、湘南ベルマーレをホームに迎えたJ1第2節で2-1と勝利し、ようやく勝ち点3を手にした。

 柏が先制するも湘南が追いつき、再び柏が勝ち越す。スコアの推移と同様、内容的にも一進一退の攻防が繰り広げられたなかで「今後リーグ戦を戦っていくために非常に重要な勝利」(柏・ネルシーニョ監督)だった。



2ゴールを決めてチームの勝利に貢献した呉屋大翔

 そんな厳しい試合で柏に勝利をもたらしたのが、柏の背番号19、FW呉屋大翔である。

 1点目は頭で、2点目は左足で、どちらも右サイドからのクロスにうまく合わせ、チームの全得点を決めた。殊勲の2ゴールにも、呉屋は落ち着いた口調で語る。

「開幕戦はアクシデントがあって(前半途中で)代わったし、ルヴァンカップもこれといったチャンスはなかった。ボールさえ合えば(ゴールを)決められる感覚はあったので心配はしていなかった」

 だが、呉屋の働きは点を取ったことだけではないと話すのは、ネルシーニョ監督だ。

「今日(湘南戦)に関しては点を取ってくれたが、点を取れないときでも戦術的に非常に重要な役割を担っている。今までもしっかりやってくれているが、これからも引き続きチームのために、点を取ることもそうだし、戦術的なところも遂行してもらいたい」

 前線からボールを追い、湘南の攻撃を制限する積極的な守備を仕掛け、マイボールとなったあとは相手DFに競り勝って、カウンターの起点となり続ける。

「今日に関しては1トップだったので、特に前半は、僕が起点にならないと攻撃が始まらない」

 そう語った呉屋は、汗かき役としての仕事にも労を厭わなかった。

 呉屋は2016年に関西学院大からガンバ大阪入りするも、思うような出場機会を得られないまま、徳島ヴォルティスやV・ファーレン長崎でJ2を経験。2019年に長崎で22ゴールを記録し、昨季、柏に加入した。

 柏での1年目は、20試合出場4ゴールと十分な結果は残せなかったが、貴重なFWの控えとして数字以上の仕事をこなした。それについては、指揮官も「昨季は、出場試合や出場時間は少しだったが、出た試合ではいい働きをしてくれた」と語っているとおりだ。オールラウンドなFWとして堂々とプレーする姿は、身長177cmとは思えないほど大きく見えた。

 そして迎えた今季、柏の浮沈を占ううえで、呉屋の出来はひとつの注目ポイントと言っていい。なぜなら彼には、チームの中にぽっかりと開いた大きな穴を埋めることが期待されているからだ。

 大きな穴とは言うまでもなく、昨季J1の得点王にしてMVP、FWオルンガが抜けた穴、である。

 昨季、J1開幕戦での2ゴールを皮切りに、32試合出場で28ゴールを量産したオルンガは、まさに柏の屋台骨を支える存在だった。いい守備からいい攻撃へ。そんな考え方をベースにカウンターを武器とした柏において、このケニア代表FWは不可欠な存在だった。

 少々アバウトなボールであろうと、奪ったボールを相手DFラインの背後へ送ることさえできれば、オルンガは類まれなスピードと桁違いのパワーでボールを収め、相手ゴールへ向かうことができた。チームは7位に終わったが、それでもオルンガがMVPに選ばれたあたりに、彼の活躍がいかに特別なものだったかがうかがえる。

 Jリーグ史に残るほどの優れた点取り屋がチームを去ったとあれば、その穴を簡単に埋められるはずがない。味方には勇気を、敵には恐怖を与えていたであろうことを考えると、彼が存在するだけで、柏に有形無形の大きなアドバンテージとなっていたはずだ。身も蓋もない言い方をすれば、穴を埋められるかどうかを議論すること自体、ナンセンスとすら言ってもいいだろう。

 幸いにして、と言うべきか、呉屋自身は「周りの人は(オルンガがいなくなったことを)意識すると思うが、僕としては自分ができるプレーをやるだけ。(オルンガとは)また違うプレーができると思うので、あまりプレッシャーかかり過ぎずにやれている」と語る。

 求められるゴールについても、「(ゴールを取ることが)プレッシャーというより、ゴールを取らないと楽しくないという感覚のほうが大きい。過度に『取らなきゃ』という(意識)より、楽に考えている」と言う。

 柏に加入して以降、呉屋は間違いなくいい働きをしている。1.5列目で巧みにチャンスメイクするFW江坂任との連係が良好なことも、柏の最前線に立つにあたっては重要な要素だ。オルンガの穴を埋めるという意識が強すぎないことも、今のところはプラスに作用しているのかもしれない。

 とはいえ、呉屋の言葉にもあるように、今季の柏は望むと望まざるとにかかわらず、オルンガの影がつきまとう。昨季よりも得点が減れば、オルンガと関連づけて語られるに違いない。

 新外国人選手がまだ来日していないという事情はあるにしても、おそらくこの課題はすぐには解決しない。ネルシーニョ監督が心なしか、これまで以上に「まずは守備」を強調するのも、オルンガの"一発"に頼れない以上、チームとして堅実な戦いを突き詰めいくしかないという側面もあるのだろう。

 Jリーグで活躍した外国人選手が、中国や中東のクラブに引き抜かれる例は珍しくないが、その活躍が際立てば際立つほど、皮肉なことに失うリスクも高めてしまう。無名で来日し、日本でブレイクを遂げたアフリカンストライカーは、強烈なインパクトとともに大きな穴を残していった。