KO-D6人タッグ王者としてリングに上がる彰人には、もう1つの肩書きがある。それはCyberFight取締役副社長。裏方としても会社を支える彼の怒涛の1週間が始まる。3.9後楽園「まっする4東京公演」、3.12新宿「ALL OUT解散興行『…

KO-D6人タッグ王者としてリングに上がる彰人には、もう1つの肩書きがある。それはCyberFight取締役副社長。裏方としても会社を支える彼の怒涛の1週間が始まる。3.9後楽園「まっする4東京公演」、3.12新宿「ALL OUT解散興行『ALL OUT FINAL FIGHT』」、そして3.14後楽園大会「Day dream Believer 2021」でKO-D6人タッグの防衛戦。そんな多忙を極める彼の素顔に迫る。今回は後編。


<前編はこちらから>


--ところで副社長として経営側のことも考える彰人選手は、今回のコロナ禍をどのように捉えていますか?
彰人:メチャクチャ厳しいですよ、コロナは。昨年4〜5月に出た緊急事態宣言の時は、全ての機能が停止しました。興行が出来ないことで、会社としての売上げが1/10以下に落ちました。
でも高木さんが「これはチャンスだ、辛いのはウチだけでない。これをチャンスに捉えれば一気にステップアップ出来る。DDTは他にはないことを考えて乗り越えてきた団体だから何か考えよう」と。
興行が再開しても、お客さんを半分しか入れることができない。満員になっても、コロナ前の半分にしかならない。その分を何でカバーすればいいのか…そこでオンラインを強化しよう、と言うことになりました。オンラインサイン会やオンラインでのグッズ販売、オンラインレッスンやオンライン配信を充実させました。
飲食も、お店を開けられなかったら売上げが落ちます。そこで飲食もオンライン化できないかを考え、オンライン営業やUber Eatsを開始しました。ECサイトやWRESTLE UNIVERSEを強化したことで、コロナ禍でも何とかやれている感じです。

--僕はDDTを見ていて思うのは、「火事場のくそ力」ではないですけど追い詰められた時の強さというか…
彰人:逆境に立たされた時の高木社長の強さがすごくてGOサインが出た時、一致団結するパワーは驚きますね。
ただ、このコロナが収束して試合会場にお客さんが戻るまで1〜2年かかると思います。仮に収束したとしても、文化としてオンラインは残す。あとはWRESTLE UNIVERSEの会員数を増やす、ですかね。

--ここで頭をレスラーとしての彰人選手に切り替えて頂きたいと思います。3月9日後楽園ホールで「まっする4 東京公演」が行われます。坂井選手のTwitterを拝見しているので進捗状況は切羽詰まっていますね(苦笑)。
彰人:実は2.28後楽園大会の後、「まっするミーティング」が行われたんですよ。坂井さんは新潟にいるのでリモート参加。僕らの手元には台本はなく、A4用紙が2枚届きまして、「今出ているアイデアは、こんな感じです。どうしよう?」と(苦笑)。

--公演まで10日切ってますよ(苦笑)。
彰人:それで、みんなで「こんなのどうですか?」「あんなのもいいですよね」とアイデアを出し合いました。だから今ごろ必死で台本作成していると思います。公演3日前くらいに台本が出来上がるイメージですね(笑)。

--3日前で2時間分の台本を覚える方は大変ですね(苦笑)。
彰人:芸能関係や演劇関係の方が観に来てくれますが、内情を話すとビックリされますね。通常は2、3ヶ月練習期間があって、1ヶ月前にはキッチリした台本が出来上がる。そして地方何ヵ所何十公演行ったりしますよね。
でも僕たちは、練習期間3日くらい、それも1回だけの公演のために行うんですよ。今回は東京公演と大阪公演2回ありますが、普段は1回だけ。それであれだけのクオリティーのものを出せるのだから、もっと知られても良いと思います。

--前回拝見しましたが、完成度は高いしメチャクチャ面白かったです。坂井さんは、「将来的にロングラン公演をやりたい」と仰ってました。
彰人:ただ、そこに向けて結構な労力を使うため、他の仕事が止まってしまうと言う(苦笑)。

--副社長業もこなす彰人選手の立場、よく分かります(苦笑)。あと2.28後楽園大会、試合後ALL OUTの解散を宣言しました。いつくらいから考えていたのですか?
彰人:僕は昨年12月の時点で解散しようと思っていたんです。しかし飯野(雄貴)くんが欠場中だったため、(飯野が)復帰するまでは残しておきたいと思いました。ただ復帰しても飯野くんが燻っている状態だったら、良い形になるまで見守りたいと。
でも復帰した彼が縦横無尽に戦っている姿を見て、「これはALL OUTとしての役目は無くなった」と自分の中で思いました。現在、メンバーの竹下や勝俣の優先順位として1番目は「DDTサウナ部」だし、僕もKO-D6人タッグで「若手通信世代(※)」と言うのがある。

※2010〜2011年にDDTが開催していた若手選手による興行「月刊若手通信」。各団体から様々な選手が参加していた。彰人選手は、その時の中心メンバーの1人。

ALL OUTの僕らの中での存在意義、DDT内部やお客さんの中でも「ALL OUTって何のためにあるんだろう?」と言われた時に、「なかなか答えを出しにくいよね」と言うのがありました。
もちろん4年間やっていたので、解散を口にするのも言いにくいですし、それで残して置くものでもない。「このタイミングだな」と思い、切り出しましたね。
ALL OUTのメンバーでチリ人のディエゴがいるので、残すことも考えたけど、そのためだけに残すのも違う気がして。区切りを付けたいというがありました。もちろん賛否があると分かった上で、どこかでピリオドは絶対に必要だから終わらせようと思いました。

--彰人選手はこれから「若手通信世代」に力を入れて行くのですか?3.14後楽園ホールでの防衛戦の相手がDAMNATIONです。
彰人:DAMNATIONは単純に強く、3人の戦闘力がハンパないですからね(苦笑)。
若手通信世代は、ベルトを落としたら平田一喜、翔太、彰人のメンバーと組むことは2度とないと思います。翔太さんは「ガンバレ☆プロレス」の選手なのでベルトを落としたらDDTに出場することはない。負けたら、そこで僕たちのタッグは終わってしまう。ベルトが繋いでくれているメンバーです。だからこそ躍起になってベルトを守るんですけどね。
かといって「若手通信世代」というユニットを作ろうかとなると話は別になる。そうなると高尾蒼馬が必要です。だから高尾が、僕たち側に来てくれるならユニット化しようと思っています。
今所属で残っている若手通信世代って、平田・高尾・彰人だけです。この3人が組んだ時に「若手通信世代」というユニットが組めるんですよ。だから、この3人が組まないのに「若手通信世代」を名乗るのは嘘かな、というのが僕の中にはありますね。

--そうなると3.14後楽園大会がKO-D6人タッグ戦だけではなく、高尾蒼馬選手の動向も気になりますね。
彰人:仮に僕らが防衛して、高尾がこちら側に来なくてもKO-D6人タッグ王者として平田・翔太・彰人で組んで防衛していくつもりです。でもユニット化するかと言ったら難しい。現状では「イエス」にならないですね。

--3.12新木場でALL OUTの解散興行が行われて、3.14後楽園でベルト防衛戦が行われます。そこで勝って、もし仮に高尾選手が若手通信世代に合流したら、DDTの中でも存在感を増しそうですね。
彰人:僕らの中では、高尾はDAMNATIONの中に居て、「イマイチ、パッとしないな」と思っているので、「いつでもこちら側に来て欲しい」と思っています。彼は佐々木大輔と組んでKO-Dタッグ王座を保持し最多防衛記録(9回)を持っているのに、お客さんがピンと来ていない。それは、なぜかというと佐々木大輔のイメージが強いから。
高尾は自己主張が強くないから、「勿体ない」と僕らの中で話をしています。だったら僕らと組んだ方が伸び伸びとプロレスが出来るのではないかと思うんです。

--ベルトの行方であったり、高尾選手の動向であったり、ユニット化するのか等、楽しみな3.14後楽園大会ですね。ところで3.9後楽園「まっする4東京公演」、3.12新木場「ALL OUT解散興行」、3.14後楽園大会「KO-D6人タッグ戦」と濃密な約1週間になりそうですね。
彰人:ここ半年で1番忙しくなるんじゃないかと思っています(苦笑)。裏方としてもそうだしプレイヤーとしても。逆に考えるとCyberFightらしい期間になると思います。
DDTだけでいうと、この6日間だけでも様々なDDTの側面を見られます。追い切れないかも知れないけれど、是非全部見て欲しいですね。DDTプロレスを見たことがない人でも引っかかるものが、その中にあると思います。DDTは苦手だけど「まっする」は好き。プロレスは見られなくても「DDT」は見られるという人がいると思うので、経営者目線で言うと何かしら見て欲しいと思いますね。

--4年間続けてきたALL OUT解散興行について、もう少しお話を聞かせてもらえますか。
彰人:この解散興行は急遽決まりました。本音を言えば「ALL OUTといえば…」という選手を呼びたかった。ALL OUTといえばセンダイガールズプロレスリング(以下 仙女)と#STRONGHEARTSとの抗争だと思うんですよ。
ただ3.12、#STRONGHEARTSは新宿FACEで興行があるし、仙女も宮城で興行がある(笑)。これは別の切り口で興行しなければ行けない。縁とかゆかりのある選手は呼べないけど、最後までALL OUT(全力)できる興行を目指します。
ALL OUTは自主興行の時には、各選手2試合行います。自分たちのやりたい試合とALL OUTとしてのユニットの試合。1日2試合というフォーマットを自分の中で崩さずにやろう、と決めているので最後も各々2試合行うマッチメイクにしようと考えています。

--今、サラッと言いましたが1日2試合はキツくないですか(苦笑)。
彰人:メチャクチャしんどいですよ。3.12 ALL OUT解散興行で2試合行って、3.14後楽園大会でKO-D6人タッグ戦、相手はDAMNATIONですから(苦笑)。
でも、それがALL OUTらしさかな、と思っています。色々な分野のアスリートを集めて始めたALL OUT。全力を出して燃え尽きる姿を会場で見て欲しいです。

 

<インフォメーション>

彰人選手、怒涛の6日間!3.9後楽園ホール「まっする4東京公演」、3.12新木場1stRING「ALL OUT解散興行『ALL OUT FINAL FIGHT』」、3.14後楽園ホール「Day dream Believer 2021」でKO-D6人タッグの防衛戦を行います。詳細はDDTプロレスリング公式サイトをご確認下さい→https://www.ddtpro.com

また3.9後楽園ホール「まっする4東京公演」、3.14後楽園ホール「Day dream Believer 2021」は動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで生配信されます。→https://www.ddtpro.com/universe

彰人 Twitter →https://twitter.com/akitonsgk

取材・文/大楽聡詞
写真提供/DDTプロレスリング