今年も3月2日から始まるプロ野球オープン戦は、各チームの選手が状態を確認する重要な場。特に新外国人選手にとっては日本野…

 今年も3月2日から始まるプロ野球オープン戦は、各チームの選手が状態を確認する重要な場。特に新外国人選手にとっては日本野球へのアジャストと、首脳陣にアピールする機会でもあるが......今年はコロナ禍による入国制限により、3月1日時点で大多数の新外国人選手がチームに合流できていない。



2015年に日本ハムに入団した、ブランドン・レアード(左)とジェレミー・ハーミッダ(右)

「今年の助っ人は大丈夫なのか?」と、不安と期待を抱きながらオープン戦をチェックする楽しみは今のところなくなってしまったが、過去にオープン戦の成績でファンを惑わせた外国人選手たちを振り返ってみよう。

 来日1年目のオープン戦で不調→シーズンで活躍した助っ人の好例は、2020年に日米通算2000安打を達成したDeNAのホセ・ロペスだ。巨人に移籍した年(2013年)のオープン戦の成績は、打率.220、1本塁打、4打点。しかし、開幕戦に7番・一塁でスタメン出場すると、初打席で初本塁打と絶好のスタートを切った。

 故障で離脱する期間はありながら、121試合に出場して打率.303、18本塁打、55打点をマーク。守備でも安定感を見せ、ゴールデングラブ賞を獲得した。さらに同年の楽天との日本シリーズ第6戦では、シーズン24勝無敗の田中将大から一時同点となるホームランを放っている。DeNAに移籍した2015年からも攻守でチームに貢献し、昨季まで主力として活躍した。

 阪神で「ゴメちゃん」の愛称で親しまれたマウロ・ゴメスも、来日1年目(2014年)のオープン戦では結果が出ず、開幕前は不安視された。家庭の事情でキャンプへの合流が遅れ、調整不足からオープン戦は終盤の4試合のみ出場。打率.143、0本塁打、0打点と低調だったが、シーズンに入ると見事にアジャストした。

 開幕戦に4番・一塁で起用されると、来日初安打・初打点をマーク。以降もコンスタントに打ち続け、阪神の助っ人として初めて、開幕戦から10試合連続安打を達成した。さらに、開幕から27試合連続で出塁し、それまで和田豊が保持していた24試合連続出塁の球団記録を更新。シーズンを通しても打率.283、26本塁打、109打点と堂々たる成績を残し、打点王にも輝いた。

 三振が多いなど安定感を欠きながらも主軸を担い、3年目の2016年もチームトップの22本塁打、79打点を記録したが、その年限りで自由契約に。ドミニカウィンターリーグなどを経て2018年には所属球団なしとなり、同年にはジェフリー・マルテとの契約交渉でドミニカ共和国に派遣された阪神担当者の"ボディーガード"兼運転手を務めたことも話題になった。

 投手では、来日1年目(2018年)に13勝(2敗)で最高勝率のタイトルを獲得し、「ボル神ガー」と称された元ロッテのマイク・ボルシンガーも同様だ。日本の柔らかいマウンドに苦労し、オープン戦4試合に登板して1勝1敗、防御率8.36。制球を乱す場面が散見されたが、シーズンが始まると安定。縦に大きく速く変化するナックルカーブ、縦と横に変化する2種類のスライダーを織り交ぜ、内野ゴロを量産した。

 常日頃から「テンポよく投げて、試合時間を短くしたい」と言っていたとおりテンポがいい投球で11連勝をマーク。本拠地ZOZOマリンスタジアムの強風も完全に味方につけ、同球場では開幕から7連勝するなど、首脳陣やファンの期待に応えた。翌年は20試合に先発して4勝6敗、防御率4.63と成績を落とし、同オフに退団。現在は球団に所属しておらず、再来日を含め可能性を探っている。

 一方、オープン戦で好成績→シーズンで活躍できなかった助っ人も多い。BCリーグでの活躍後、テストを経て2016年オフにDeNAへ入団した、アウディ・シリアコもそのひとりだ。2017年のオープン戦17試合に出場し、打率.375、1本塁打、6打点、OPS.956と躍動。オープン戦の首位打者に輝くと、開幕戦では5番・三塁でスタメン出場し、長打力と確実性を兼ね備えた打者として期待された。

 しかし、開幕4試合で打率.077と振るわずに2軍落ちすると、ジョー・ウィーランドやスペンサー・パットン、エドウィン・エスコバーら他の外国人が好調だったこともあり、1軍での出場機会はほとんど得られなかった。

 結局、シーズンを通じてわずか12試合の出場にとどまり、打率.074、0本塁打、0打点。シーズン終了後に自由契約となり、その後はカナディアン・アメリカン・リーグなどにプレーの場を移すことになった。助っ人は枠の問題もあるため、一度チャンスを逃すと状況はたちまち厳しくなる。

 2017年、ロッテの主軸として期待されたジミー・パラデスとマット・ダフィーは、オープン戦でともに好成績を残した。パラデスは17試合に出場し、打率.304、1本塁打、5打点。ダフィーは16試合に出場し、打率.298、4本塁打、15打点。シーズンでも同様の活躍が期待され、ともに開幕スタメンに名を連ねるも、パラデスは打率.130、0本塁打、1打点と深刻な打撃不振で4月21日に登録抹消。ダフィーも攻守で精彩を欠き、4月29日に登録を抹消された。

 パラデスは夏場以降に当たりが出た時期もあったが、89試合出場で打率.219、10本塁打、26打点。ダフィーは54試合出場で打率.201、6本塁打、18打点と結果を残せず。クリーンナップ候補が揃って日本野球にアジャストできなかったことが大きく影響し、チームは球団ワーストを更新する87敗を喫した。

 同オフに2人とも自由契約になり、パラデスは韓国リーグへ(その後、アメリカの独立リーグでもプレー)。ダフィーは球団を通して、「もっと自分がチームに貢献できればよかった。申し訳ない気持ちでいっぱい」というコメントを残して日本をあとにした。

 メジャー通算65本塁打の長打を期待され、2014年オフに日本ハムへ入団したジェレミー・ハーミッダも、オープン戦では期待どおりの活躍を見せた。オープン戦12試合で打率.303、2本塁打、6打点。規定打席には届かなかったものの、出塁率は.439をマークした。

 だが、5番・右翼で開幕を迎えるも、打撃不振のため5月25日に登録抹消。再昇格するも、6月6日の阪神戦で左手を骨折して長期離脱を余儀なくされた。結局50試合の出場で、打率.211、1本塁打、18打点、OPS.607と期待に応えられず。同年に入団した、メジャー通算わずか6本塁打ブランドン・レアードが34本塁打と活躍した一方で、ハーミッダは1年で自由契約になった。

 今季は、新外国人たちの合流は開幕後になる見通しで、"ぶっつけ本番"になることが濃厚。ただ、オープン戦の成績は「水物」とも言われ、助っ人たちはそれが顕著なだけに、ファンや首脳陣も惑わされずに済むかも?