連載「松井大輔のベトナム挑戦記」第2回、コロナ感染者が出たことで旧正月のバカンスは中止に 多くのアスリートが人生の節目に…
連載「松井大輔のベトナム挑戦記」第2回、コロナ感染者が出たことで旧正月のバカンスは中止に
多くのアスリートが人生の節目に進むべく道を決断していく。40歳を機にユニフォームを脱ぐ選手もいれば、40歳を前に新天地を求めて新たな旅路に向かう選手もいる。プロサッカー選手・松井大輔は12クラブ目となる新天地に、ベトナムを選んだ。
39歳の今も、チャレンジし続ける松井のベトナム生活を、自らの言葉で綴る「THE ANSWER」の連載「松井大輔のベトナム挑戦記」でお届けする。第2回はついに開幕したベトナムリーグとベトナムでの生活についてお伝えする。
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皆さんお元気ですか。サイゴンFCの松井大輔です。
日本では一部地域に緊急事態宣言が発令されているということで、先行きの見えない毎日に不安を抱いている人が少なくないかもしれません。新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいるとはいえ、しばらくは世界的に難しい時期が続きそうです。自分自身と、そして周囲にいる大切な人を守る行動を心がけてほしいと思います。
実は、僕が住んでいるベトナムのホーチミン市でも1月下旬から感染者数が増え、2月に入ってからは都市によってはロックダウンのような状況になってしまいました。だから2月12日のテト(いわゆる旧正月)を迎えても身動きが取れない人が多く、その時は飲食店も営業していなかったので街全体が少し静かでした。
ちなみにベトナム人はビールが大好き。休みの日は道路の脇にパイプ椅子を置いて、みんなひたすらビールを飲んでいます。それから乾杯も大好きのようで、乾杯したらグラスに入っているビールを飲み干して、すぐに注いでまた乾杯して(笑)。それを延々と繰り返す明るい日常が早く戻ってくればいいなと思っています。
僕はというと、旧正月のオフ期間を利用してバカンスに出かける予定でした。でも国外はもちろん、生活している地域から出ると戻ってきた時に隔離生活になる可能性がある。日本からベトナムへ来た時に隔離生活の難しさを体感しているし、チームにも迷惑をかけることになってしまうので、総合的に考えてホーチミン市に残ってトレーニングを続けることにしました。
1月に開幕したベトナムリーグ(Vリーグ)は、旧正月による中断期間が明けて2月の最終週からリーグ戦が再開する予定だったけど、コロナ禍の影響によって日程が一度白紙に戻ってしまいました。前回も話したように感染者が出てしまった時の対応は厳しく徹底されているので、今はしっかりと感染を抑え込むフェーズを過ごしています。
そこで今回は、1月に開幕して3試合を戦ったVリーグで感じたことを中心に話をしたいと思います。
3試合を終えたベトナムリーグで感じたレフェリングでの戸惑い
所属するサイゴンFCはここまで2勝1敗という成績で、僕は勝利した開幕戦と第3節で先発しました。システムは4-4-1-1みたいなイメージで、僕は1トップの下に入って自由にプレーさせてもらいました。守備でエネルギーを使うよりも攻撃でアクセントになることを求められていると強く感じています。
ただチーム全体の技術レベルが高いわけではないので、前線で待っていてもなかなかボールに触ることができないジレンマがある。開幕戦は自分がポジションを下げてゲームメイクにも関わろうと思ったけど、そうすると前線の枚数が足りなくなってしまう。ある程度は我慢することが必要かなと試行錯誤して、第3節は相手があまりプレッシャーをかけてこなかったのでビルドアップも安定していました。それなら僕は高い位置で違いを作ることに専念できるので、今後もバランスを考えながらプレーすることが大切になります。
リーグ中断はちょっぴり残念だけど、まずは1月に戦った3試合でベトナムサッカーを肌で感じることができたのは大きなプラスだと思っています。J1とJ2でさまざまな違いがあるように、日本サッカーとベトナムサッカーも違う。僕の場合は、まずサイゴンFCをもっと理解しなければいけないし、その次に相手チームの特色を知る必要がある。それからレフェリングの基準やピッチコンディション、スタジアムの雰囲気や環境といったことをできるだけたくさん頭に入れておきたい。そうすることで自分のプレーに余裕が生まれるので、やはり知ることはとても大切。9月まで続くリーグを戦っていく基準を自分の中に作ることができたのはポジティブだったと思います。
最も戸惑いを感じたのはレフェリングの部分でした。ベトナムサッカーの特徴として感じたのは、とにかくファウルが多いということ。これは技術の問題も大きく関係していて、クオリティが低いからボールをしっかり奪うことができず、レイトタックル気味になれば当然ファウルが増えてしまう。僕が出場した第3節はボールを持ってもほとんどファウルを受けて、最後は顔面にエルボーを食らったのにもかかわらず、その選手に対して警告は出なかった(苦笑)。
ベトナムのレフェリーはファウルの笛は吹いてもイエローカードを全く出そうとしない。これではファウルの数が一向に減らないし、悪質なタックルが増えてしまえば選手が負傷するリスクも高まる。最近はJリーグでも欧州を見習ったジャッジをするようになっていて、正当なフィジカルコンタクトならばプレーを続行させる傾向があるはず。反対に言えば、正当ではないチャージにはしっかりと笛を吹き、必要に応じてイエローカードを提示する。それがサッカー全体のクオリティ向上につながると思う。
フィジカルコンタクトについて僕の見解を述べさせてもらうと、ベトナム人は細くて小柄な体型の人が多い。だからコンタクトプレーの弱さは否めないし、体をぶつけ合った時に踏ん張り切れないことが多いように感じる。これに関しては食生活が大きく関係しているような気がします。
ベトナム料理はヘルシーで痩せる? ベトナムでの体づくり
僕がベトナムに来た当初、昼と夜にベトナム料理を食べていました。香辛料を含めた味付けは日本人の口に合っていて、栄養価の高いサラダがあって魚料理や豚肉料理、それからスープの種類も豊富です。だから全く苦にならない食生活だったけど、しっかりと食べていたつもりでも体重が徐々に減って、2~3キロ痩せてしまいました。量は十分に食べていたので、そこで気づきました。ベトナム料理はヘルシーなのかもしれない、と。
その後、パスタやピザ、あとは日本食も織り交ぜた食生活に変えると、すぐに体重を元に戻すことができました。ひと昔前は日本人も体が小さかったけど、欧米の食文化を取り入れたことで体格差が少しずつ縮まっていったという歴史があります。もしかしたらベトナムもそういった食文化を学ぶことが必要だろうし、牛肉の価格が高いことで手を出しにくい状況になっていることも影響しているのかもしれません。
そんなことを想像しながらも、まずは僕自身がもっとコンディションを上げてリーグ再開を迎えたいと思っています。12月にベトナムへやってきて2週間の隔離生活を余儀なくされ、そこから試合を戦える体を作るのが本当に大変でした。これまでJリーグでは、1月の始動からシーズン開幕を迎えるまで少なくとも約6週間は準備期間があったのに、今回は隔離生活を強いられた上に練習再開から開幕まで2週間ぐらいしか時間がなかったので、開幕戦は何もできなかったのが本音です。第3節からはようやく体が元通りになってきたとはいえ、隔離が想像以上に大変ということを思い知らされました。
35歳を過ぎた選手は、3日間何もしなければ一般人の体に戻ってしまいます。筋力は使わなければどんどん落ちていくもので、若い時は何もしなくてもすぐに元通りになったけど、今の年齢になってからは維持するために体をしっかり動かさないといけない。一番シンプルなのは試合に出て試合の筋肉を取り戻すことで、そうすれば自然と持久力もついてくるし、試合勘も養われていく。
2月28日に組まれていたリーグ戦がコロナの影響で延期になり、公式戦が再開するのは今のところ3月中旬以降の予定です。ちょっとイレギュラーな出来事ではあるけど、個人的には自分のコンディションを上げるために有効活用したい。“一人合宿”みたいな感じでしっかりと走り込み、リーグ戦再開を今度こそトップコンディションで迎えたいという気持ちです。
ベトナムでプレーしている僕はあくまでも“助っ人”という立ち位置です。チームと仲間にしっかりと認めてもらえるようなパフォーマンスを見せなければいけないし、過去の海外移籍で経験したことを生かしたい。もうすぐ練習開始の時間なので、そのあたりの経験談など詳しい話は次回以降にしたいと思います。
では、また来月お会いしましょう。松井大輔でした。
■松井大輔
1981年5月11日、京都府生まれ。サッカーの名門、鹿児島実業高校を卒業後に京都パープルサンガ(現・京都サンガ)でプロキャリアをスタートさせる。2004年にフランス、ル・マンへの海外移籍を皮切りに、ロシア、ブルガリア、ポーランドでプレーし、Jリーグではジュビロ磐田、横浜FCでプレーした。日本代表としても活躍し、ベスト16に輝いた2010年南アフリカワールドカップにも出場(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)