J1の舞台に帰ってきた天才が語る思い 2月26日に2021シーズンのJリーグが開幕する。スポーツチャンネル「DAZN」の…

J1の舞台に帰ってきた天才が語る思い

 2月26日に2021シーズンのJリーグが開幕する。スポーツチャンネル「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との企画で、今年から北海道コンサドーレ札幌に復帰を果たした小野伸二選手が「THE ANSWER」のインタビューに応え、プロ24年目のシーズンについて「いろいろな意味でワクワクしている」と語った。(取材・文=THE ANSWER編集部)

 ◇  ◇  ◇

 2021年1月1日、FC琉球をすでに退団していた小野伸二の北海道コンサドーレ札幌への加入が発表された。「新しいチャレンジをさせてもらえる環境をコンサドーレが提供してくれた」と移籍理由を語ったが、小野の復帰にファンは何より、彼がピッチで見せる心躍るプレーを楽しみにしている。プロ生活24年目、41歳。プロ選手として競技の第一線で戦い続けることは、決して簡単なことではない。

「僕自身、周りには見えない浮き沈みはもちろんあります。でも、『サッカーが好きという気持ち』『サッカー以外、僕にはない』という、確固たるものが自分のなかにあるんです。それが、自分をいつまでもサッカーに向かわせる原動力なんじゃないかなと思います。好きなことを職業としてできるありがたみを常に感じてやっています。

 でもね……、僕なんてって感じですよ(笑)。カズ(三浦知良)さんを見ていたら、僕らなんてまだまだひよっこみたいなものですから。三浦知良さんという選手を、僕らの世代もそうですし、若い世代もそうですけど、見習ってやっていかないといけないと思います」

 さらにキャリアを重ねても、サッカー選手としての欲も変わらないという。

「試合に出ることを、まずは最初に考えないといけないことですが、試合に出るからには結果を残したいという気持ちはプロであるべき以上は持つべきものです。それがゴールであり、アシストであり、目に見えて結果として現れるものや周りが評価するものは、大事にしなきゃいけないって思います。それはもうずっと感じていますね」

 チームは1月中旬から沖縄での1次キャンプ、2月中旬からは熊本での2次キャンプを行った。「初日からみんなで気持ち良く楽しくトレーニングできていますね」と手応えを感じている様子だが、いつものように若手選手と積極的にコミュニケーションを図る小野の姿があったという。

「僕が経験したいろいろなことだとか、一つひとつのプレーの大事さについて、ピッチ上で気になったときに伝えていますね。ただ、僕が伝えていることのすべてが正しいわけではないので、個々の選手たちが必要であれば吸収すればいいですし、必要じゃなければ新しいものを別の選手から吸収すればいいと思うんです。ピッチ外では、何気ない会話から選手とたくさんコミュニケーションを取って、常にチームがいい状態でいられるように気配り・目配りをしています」

子どもの頃のヒーローだったマラドーナから影響を受けたもの

「誰からも憧れられる、そんな人物像かな」

 小野は自身が考えるヒーロー像について、そう語った。そして自分自身については、「ヒーローという言葉が合うのかどうかは分からないですけど、子どもたちが自分のプレーを真似したりすると言ってくれるのはうれしいですね」と謙遜した。

 柔らかいボールタッチと高いテクニック。何よりも、楽しそうにボールと戯れる姿に自然と観客にも笑みがこぼれる。そんな小野が子どもの頃からずっと憧れていたヒーローは、昨年11月に亡くなったディエゴ・マラドーナだ。

「見ているだけでワクワクする。うまいとか、下手とかではなくて、マラドーナがボールを持つだけで、なんでこんなに心がワクワクするんだろう?って、そう思わせてくれる。もうずっと憧れの存在でしたね」

 マラドーナと言えば、1986年のメキシコ・ワールドカップ準々決勝のイングランド戦で華麗なドリブルで5人を抜き去りゴールを決めた“5人抜き”や“神の手”でのゴールが伝説となっているサッカー界のスーパースターだ。多くのサッカー少年たちがそうであったように、小野少年もまたマラドーナの真似をした。

「伝説の5人抜きぐらいから、僕もマラドーナの真似をしていたと思うけど、ボールを持ったら全員を抜いていくという気持ちでプレーしていましたね」

 そしてもう一人、Jリーグに目を向けると、「同じような感覚ですごく人を魅了するというか、すごく楽しいプレーをされていて、世界観に引き込んでくれた」とヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)時代の中心選手としてJリーグ創生期の黄金時代を支えたラモス瑠偉氏の名前を挙げた。

開幕戦の相手・横浜FCは「J2のときと比べものにならないぐらい質が高い」

 9年ぶりに北海道コンサドーレ札幌は開幕戦をホームで迎える。迎え撃つのはJ1最年長の三浦知良を始め、中村俊輔、南雄太ら経験豊富な選手を擁する横浜FCだが、「対戦相手がどうとかってことよりも、自分たちがどうあるべきか。開幕戦に向けてどう調整できるかが大事なこと」だと考えている。

 小野自身、2019年にFC琉球への移籍後、J2時代の横浜FCとの対戦経験がある。しかし、「J2のときと全然比べものにならないぐらい質が高くなっている」と指摘する。

「攻撃に対する速さとか、一人ひとりの技術の高さも変わっているし、能力の高い選手がいるチーム。新しい選手も加入していて、どういう選手が試合に出てくるのかも分からない状況なので、相手がどうとかよりも、自分たちがいい準備をして、自分たちらしいプレーができれば勝つことができるんじゃないかなと思うので、そこを目指してやっていきたい。それにカズさんもいますし、俊輔くんも、同級生の雄太もいます。簡単な試合にはならないので、いい準備をしていきたい」

 旧知の仲間たちとの対戦も楽しみの一つなのかもしれない。それでも、やはりワクワクするのは41歳で迎えるJ1の舞台だ。

「新しいチャレンジとして、J1の舞台に帰って来られたことは自分のなかでもうれしいです。ただ、それに満足することなく、自分がピッチに立って、少しでもチームの勝利に貢献できるように頑張っていく、それだけです」

 小野にとって、プロ24年目のシーズンがついに幕を開ける。変わらないサッカーへの情熱と勝利への執念を携えて、再びJ1の舞台に“僕らのヒーロー”が帰ってくる。

■小野伸二(おの・しんじ)
1979年9月27日、静岡県生まれ。清水商業高校(現・清水桜が丘高校)卒業後の1998年に浦和レッズに加入、Jリーグ新人王とベストイレブンを受賞。翌年にはナイジェリアで開催されたワールドユース選手権(現FIFA U-20ワールドカップ)に出場し、キャプテンとして準優勝に貢献した。2001年にオランダのフェイエノールトへ移籍し、UEFAカップで優勝すると、ドイツのボーフム、オーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズFCなどでプレーした。また18歳で日本代表デビューを飾ると、2002年日韓大会、2006年ドイツ大会とワールドカップにも出場した。(THE ANSWER編集部)