過去から現在を含めた日本人サッカー選手で、各ポジションでナンバーワンと言える選手は誰なのか。トップレベルを経験した元選手が語る。今回はボランチのランキングを発表。元ジュビロ磐田の福西崇史さんに、これはという10人を選んでもらった。4位 山口…

過去から現在を含めた日本人サッカー選手で、各ポジションでナンバーワンと言える選手は誰なのか。トップレベルを経験した元選手が語る。今回はボランチのランキングを発表。元ジュビロ磐田の福西崇史さんに、これはという10人を選んでもらった。

4位 山口素弘(元横浜フリューゲルスほか)

 モトさんは、日本で守備的MFが、「ボランチ」と言われるようになってきた時代の選手の走りですよね。ボランチの位置からの展開力やいいタイミングで飛び出す攻撃参加のセンスで、流れのなかの要所で存在感を発揮。チームに影響力を与えられる存在でした。

 また、ダブルボランチやアンカー(守備的MF1枚)など、その時々に求められるバランスをうまく取って、今、チームの重心がどこなのかを決めることができる、バランス感覚に優れた選手でもありました。

 モトさんと一緒にプレーした経験はないんですが、対戦した時はよく目が合いましたね。「ここにもいるな」とか、「ここも意識されているな」とか、こっちが仕掛けにいこうとする時、いつも"見られている"というのを感じていました。攻撃だけではなく、守備においても非常に視野の広いボランチでした。

3位 稲本潤一(SC相模原)

 彼は"ダイナミックなボランチ"というイメージがピッタリの選手ですよね。守備ではボールを取り切れる1対1の強さがあって、攻撃でも得点能力が高い。ランニング距離の長さや、飛び出すタイミングのうまさもありました。ロングフィードの精度も高くて、いろんなことをダイナミックにできる選手です。

 ボランチの攻撃参加は結構体力を使うので、僕は極力抑えるタイプでした。でも彼はハードな守備をしたあとに、何度でも前線に飛び出していけるんですよ。対戦する時はそれについていかなければいけないので、守る側としては本当に厄介でした。

 そして日韓W杯後にアーセナルに移籍した時は「うわ、すげえな」と単純に驚きましたね。当時は海外に移籍すること、しかも若いうちから行くのが少ないなかで、あれだけのビッグクラブに引き抜かれたのは衝撃でした。世界からも認められたボランチです。



名波浩の味方も相手も見えている視野の広さに、福西氏は驚いた

2位 名波浩(元ジュビロ磐田ほか)

 名波さんはあの左足やゲームメイク、FKなど、攻撃に関しては言うまでもありません。ジュビロや代表で周りに非常に気を使ってくれて、僕らがプレーしやすい環境をつくってくれるボランチでした。

 ジュビロでは僕の性格とかできること、やりたいことを理解してくれて、今、僕がなにをしてほしいかをすぐに察知して、気づいた時にはやってくれているんですよね。チームの潤滑油になりながら、引っ張っていってくれるリーダーでした。

 守備に関してあまりイメージはないかもしれないですが、ひとりで取りにいくといより、周りを動かしながらほかの選手に取りにいかせるという判断力が優れていて勉強になりましたね。

 一緒にプレーしてとくに印象に残っているのは、「しゃべらなくていい!」と言われた時です。僕が攻撃参加する時に声を出しながら上がっていたら「もう見えてるから」と。相手に気づかれるから声は出さなくていいと言われました。

 そうした味方だけではなく、相手もよく見えている視野の広さには驚くことが多々ありました。Nボックスでもわかるとおり、ジュビロ黄金期はもちろん、代表でも常に中心選手でした。



福西氏が、能力や存在感など総合的に見て1位に選んだのは、遠藤保仁だ

1位 遠藤保仁(ジュビロ磐田)

 ヤットは一緒にプレーしてやりやすかったし、誰と組んでも一定の力を発揮し合えるサッカー観を持ってるボランチですね。

 ボランチに必要な基本技術のレベルが高いから、安心感があります。あと周りの選手の良さを引き出しながらカバーをすることもできる。もちろん、ゲームメイク能力にも長けているので、チームへの貢献度は非常に高いです。

 チームが良い流れの時は、ヤットの出る幕はあまりないかもしれない。でも何か変化が必要な流れの時こそ、彼の存在感は大きくなります。素早い判断でチームをコントロールしたり、ゲーム自体をコントロールしたり、そうした全体をコントロールして流れを引き戻す能力が本当に優れていますね。

 実際に対戦する時もすごく嫌な存在でした。ひとりで何かをしてくるタイプではないんですけど、決定的な場面のどこかで関わってくる。ラストパスもそうだし、代名詞のFKも本当に脅威でした。守備でも複数で取りに行く時に彼のコントロールは利いていましたし、攻守にわたって要所に必ず彼が立ちはだかってきましたね。

 そして代表で歴代トップの152試合出場は、本当に偉大な数字だと思います。どの監督になっても必要とされる選手で、その期待に応えるパフォーマンスを発揮し、なおかつコンディションを維持してきたということ。

 ケガをせず、41歳になった今でも現役でいられるのはすばらしいですね。能力や存在感など、総合的に見てもヤットが歴代1位のボランチだと思います。

福西崇史
ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県出身。新居浜工業高校から1995年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、チームの黄金期の主力としてプレーした。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場7得点。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、2009年に現役引退。現在は解説者として活躍中。