ホークスのエースとして期待のかかる23歳。一昨季は13勝、そして昨季は14勝。勝ち星だけを見れば、すでにチームのエースと言われてもおかしくはない。ただ、名実ともに「エース」と呼ばれるには、越えなければいけない壁があるだろう。果たしてエースの…

ホークスのエースとして期待のかかる23歳。一昨季は13勝、そして昨季は14勝。勝ち星だけを見れば、すでにチームのエースと言われてもおかしくはない。ただ、名実ともに「エース」と呼ばれるには、越えなければいけない壁があるだろう。果たしてエースの定義とは何だろうか。

■ホークス「エース」への道、乗り越えるべき壁とは

 14勝8敗、防御率2.95。ソフトバンクの武田翔太投手が挙げた昨季の成績である。自身初となる2年連続の2桁勝利を達成し、キャリアハイとなる勝ち星も挙げた。オフの契約更改では、5000万円増の大幅アップの評価を受け、大台に到達する推定年俸1億2000万円で2017年の契約を結んだ。順調にキャリアのステップを踏んでいる。

 ワールドベースボールクラシックの候補選手に名を連ねている武田。このオフはハワイ、福岡県筑後市のファーム施設「ホークスベースボールパーク筑後」、地元の宮崎と場所を移しながら、自主トレのペースを上げている。22日に宮崎で行った中学生対象の野球教室では、145キロを計測したという。順調に状態を上げているようである。

 ホークスのエースとして期待のかかる23歳。一昨季は13勝、そして昨季は14勝。勝ち星だけを見れば、すでにチームのエースと言われてもおかしくはない。ただ、名実ともに「エース」と呼ばれるには、越えなければいけない壁があるだろう。

 果たしてエースの定義とは何だろうか。武田は以前にこう語っていたことがある。「信頼じゃないですかね。コイツに任せておけば、大丈夫みたいな」。言うなれば、大事な試合を任せ、その投手で負けたら仕方がない、というようなチーム全体からの全幅の信頼感を得た投手ということだろう。

■武田が絶対的エースへ成長するための課題とは

 その点から言えば、武田はもう一皮剥けることが求められる。まず、昨季の武田の成績をパ・リーグの対戦チーム別に見てみよう。

楽天 6試合4勝0敗 防御率1.02
オリックス 6試合2勝4敗 防御率2.13
西武 5試合4勝1敗 防御率3.28
ロッテ 4試合2勝1敗 防御率5.40
日本ハム 3試合0勝2敗 防御率6.23

 見て分かる通り、楽天、そして入団以来圧倒的な相性の良さを誇る西武に無類の強さを誇り、計8勝を挙げた。その一方でオリックス、そして逆転で優勝をかっさらわれた日本ハムとの相性の悪さが目立つ。

 オリックス戦には、7、8、9月の勝負所で4試合に登板して4連敗を喫した。日本ハムからは1勝も出来ず、天王山と言われた9月22日のヤフオクドームでの試合で5回3失点で黒星。チームが苦しいとき、そして勝負所で勝ち切れない印象を残した。

■もう1つの課題…、和田も期待する右腕の能力

 そして、右腕には、もう1つの課題がある。好投していながら、突如として乱れることがある点だ。例えば、8月16日の西武戦(ヤフオクD)。3回まで5三振を奪い、チームも3点を先制する理想的なゲーム展開だった。暗転したのは4回。先頭の秋山翔吾に四球を与えると、そこから3連続長短打を浴び、さらに四球、四球、押し出し死球を与え、一挙4点を失った。

 この時のように、突如として姿を変え、制球を乱すことがある。繊細なメンタルが影響していることもあるだろうが、そうなっていては全幅の信頼感を得ることは難しい。

 36歳のベテラン、和田毅は勝負の夏場の日本ハム戦で4戦3勝するなど、ここぞの場面で勝負強いことを印象付けた(シーズン終盤は左肘痛で離脱してしまったが)。実績から来る部分もあるが、現時点での信頼度ではやはり武田よりも和田に軍配が上がる。

 その和田は常々、武田がエースにならなければいけないと口にしている。その秘めたる能力はチームの大先輩も認めるところ。ソフトバンクにとって、V奪還が至上命令となる2017年のシーズン。武田がエースと呼ばれる活躍を見せてくれることを期待したい。