2018年の夏、弓波英人はジョージアサザン大学入りを実現した。手にしたのは奨学金がつかないウォークオンとしての立場。シェ…

2018年の夏、弓波英人はジョージアサザン大学入りを実現した。手にしたのは奨学金がつかないウォークオンとしての立場。シェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)がジョージア工科大学在籍時に置かれていた立場と同じということになる。
文/柴田 健(月バス.com) 

 

「ちょっと無理かな…」と思ったディビジョンI入りだったが、歓喜のときはやってきた(写真=AJ Henderson/Georgia Southern Athletics)

 

しぶとくつかみ取ったウォークオンのスポット

 

 パインレイク・プレップ高校でバックコートの中心的存在として活躍してきた弓波だったが、小さな頃から夢見てきたNCAAディビジョンIのカレッジでプレーするという夢は、簡単に手にすることができるものではなかった。
「本当に最後の最後まで決まらなくて、ようやく得られた今の立場は奨学金のないウォークオンです。身長が168cmでスキルや身体能力も抜きん出ているわけではないですし。ただ高校のコーチが以前ディビジョンIのコーチだったので、いろいろなコネクションがありました。コーチからは『絶対にお前は(ディビジョンIの)どこかでやれる』と言われていました」
 学業も優秀だった弓波にすでに言葉の壁はない。バスケットボール面の実力はコートで示し、実績も残してきた。それでも、バスケットボールのエリートの世界から、積極的なお呼びの声はかからなかった。
「ディビジョンIでやることが一つの夢でした。でも正直、自分でもちょっと無理かな…とも思いましたし、両親にも学業で良い大学に入るように言われていました」
 ただ、それでも最後まで粘っていた弓波に、パインレイク・プレップ高校のコーチ陣は手を差し伸べた。どんな形でも…――それまでチームを支えてきた功労者のそんな思いと努力を買ってくれていたのだ。
「スカラシップのプレーヤーが決まった後にウォークオンを探す期間があるのですが、その時期にコーチがいろんな大学のコーチに『ウチにいいヤツがいる』と連絡をしてくれて。いくつか話があったのですが、本当に『ウォークオンで入っていいよ』と言われたのがジョージアサザン大学(以下GSU)でした」
 GSU入りを知らせる連絡は、高校でスペイン語の授業を受けていたときに電話でもたらされた。奨学金を得られるかどうかはそのときの弓波には問題ではなかった。NCAAディビジョンIでプレーすること。それが実現するのだ。「アシスタントコーチから電話がかかってきて、『ウォークオンのオファーをあげるよ』と言われて、ソッコーで、親にも連絡する前に『行きます』と言いました! そのあと授業を抜け出して連絡を入れましたが、スペイン語の先生もそういう状況をわかってくれていて、『入れた!』と伝えたら一緒に喜んでくれました」
 晴れて2018年の夏、NCAAディビジョンIのバスケットボール・プレーヤー、弓波英人が誕生する。

NCAA公式戦デビューはフレッシュマンシーズン初戦

2年次には2ケタ得点も記録

 

 GSUは、フロリダ半島北部と境界を接するアメリカ南部ジョージア州の、フロリダ州との州境に近いステートボロという町にある。「とにかく田舎なんです。本当にもう、何もないので、家にいるか、クラスにいるか、体育館にいるかで、正直バスケをやるには最高の環境ですね」と弓波は町とキャンパスの雰囲気を説明した。そこで弓波は一人暮らし。両親はノースキャロライナ州にとどまっているという。
 ジョージアサザン大学が属するサンベルト・カンファレンスのバスケットボールは、アメリカ南部の7州にある12大学が東西2つのディビジョンに分かれてリーグ戦を行い、シーズンの最後にカンファレンスチャンピオンシップで王座を決めるのが通例。今シーズンのGSUは2月13日現在で6勝7敗(ノンカンファレンスを含めると12勝10敗)の成績で、イーストディビジョンの6チーム中4位だ。弓波の出場機会は多くはないが、コートに立つたび堅実なプレーぶりを見せている。
 奨学金がつかないウォークオンの立場での入学だったが、両親は全力でサポートしてくれている。渡米自体も我が子の夢を後押しすることを最優先に考えた決断だったが、GSU進学後もそのスタンスは変わっていない。「僕をすごくメインにしてくれる両親なので、本当にありがたい環境です。僕がバスケットボールをしたいと言ったからアメリカに来たので、頭が上がらないですね、両親には…」
 入学後の弓波は、2018年11月7日のカーヴァー大学との試合で実戦デビューを果たす。弓波お気に入りのGSUキャンパスにあるホームアリーナ、ハナー・フィールドハウスで行われた2018-19シーズンの開幕初戦。1,214人の観衆が見守る中、弓波は4分間コートに立ちフィールドゴール3本中2本成功による4得点にリバウンドとアシスト1本ずつを記録。139-51の圧勝に貢献した。
 この日の試合を含め、弓波はフレッシュマンだった2018-19シーズンに8試合に出場して平均1.0得点(FG60.0%、FT100%)、0.5リバウンドのアベレージを残した。
 続く2シーズン目には9試合に出場して1.7得点(FG42.9%、FT100%)、0.2リバウンド。2019年12月6日のこれもカーヴァー大学との試合では、10分間の出場でキャリアハイの11得点も記録した。この試合での弓波は3Pショット3本とフリースロー2本のすべてのショットアテンプトを成功させてみせた上に1リバウンド、2アシスト、2スティールという活躍ぶりだった。そして現在進行中の2020-21シーズンは2月13日現在で4試合に出場して2.8得点、0.8リバウンドと、アベレージとしてキャリアハイの数字を記録しているところだ。
 また、弓波はフレッシュマンのときからチームが試合前にコートに入ってくる際に先頭を切って走ってくる。小柄なウォークオンがファイトする姿勢はコーチングスタッフとファンの心をつかんでおり、ウォークオンという言葉のイメージからは想像できないような信頼と愛着を得ているのだ。
 オフコートでの弓波は、学業成績優秀者として表彰されるディーンズリストに過去2年連続して選出されている。この出来事はアメリカにおける“ホーム”ノースキャロライナのローカルメディアがニュースとして伝えていた。高校までの弓波を知る現地の人々にとって、弓波が期待の存在であることがわかるエピソードだ。
 弓波はまた、サンベルト・カンファレンスのコミッショナーズリスト(満点を4.0とするアメリカの学業評価基準GPAで3.5以上を達成した学生アスリートに対する表彰)にも2年連続で選ばれている。(パート3に続く)

☆パート1から読む

 

GSUのコート入りは弓波が先頭。チームに勢いをもたらす存在になっている


(月刊バスケットボール)