『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』Jリーグ監督列伝(2)2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今年のサ…
『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』
Jリーグ監督列伝(2)
2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今年のサッカー観戦が面白くなる、熱くなる記事を、随時配信。さまざまな視点からJリーグの魅力を猛烈アピール!
今回は「Jリーグ監督列伝」の外国人監督編。なかでも旧ユーゴスラビア諸国出身監督の、「強いクセ」について紹介します。
ある時は、記者仲間で何を聞きたいのかを打ち合わせておいて、ひとりの質問にオシムが答えたあと、もうひとりがフォローの質問をするといった連係プレーも必要だった。
オシムが日本代表監督に就任してから、僕は彼に対する質問の仕方がだいぶわかってきた。ポイントがズレた質問をすると、オシムは「そうじゃなくてな......」とこちらの間違いを指摘するのだ。そこで、その習性(?)を利用して、ある試合の前日練習のあとの会見でトレーニングの内容についてこう聴いてみた。
「今日の練習は、守備面のこういうところがポイントだったんですか?」と。
するとオシムは「そうじゃなくてな」と話を始めた。
「あのトレーニングは守備面よりも、攻撃側が重要で......」と、その内容を説明してくれたのだ。こちらは「やった!」と小躍りしたいくらいだった。
しかし、オシムのほうもすぐに「しまった。引っかかった」と気づいたのだろう。僕の顔を見てニヤッと笑ったのだった。
ドラガン・ストイコビッチ(J1通算103勝)は、旧ユーゴスラビア諸国出身の監督にしては、口数が少ないほうだったが、辛辣なことを言ってみたり、ジョークを言ってみたりと、やはり話は面白い監督だった(ちなみに、ストイコビッチはオシムがイタリアW杯でユーゴスラビア代表監督だった時のチームの中心選手だ)。
2012年に名古屋グランパスが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場した時のことだ。オーストラリアのチームとの試合で、名古屋が長めのいわゆる「深いパス」を使って、相手の守備ラインをうまく下げさせたので、試合後にそのことについて質問してみた。
「それは狙いだった」と説明してくれたのだが、記者会見が終わってからストイコビッチはわざわざ僕のところに歩み寄ってきて、スーツの内ポケットからメモ用紙を取り出したのだ。
「ほら、これが試合前に選手に指示を出すためにつくったメモだ。さっき言った内容が書いてある」と自慢げに見せて、ピクシーは茶目っ気たっぷりの笑顔を浮かべた。「たまたまうまくいったのではなく、本当に試合前から狙っていたんだゾ」と言いたかったのだろう。
その英語のメモは、じつに几帳面で読みやすい文字で書かれていた。