当たり前の話だが、プロサッカー選手にとってサッカーは仕事。少年時代から夢中になったスポーツをそのまま職業にできたのだか…

 当たり前の話だが、プロサッカー選手にとってサッカーは仕事。少年時代から夢中になったスポーツをそのまま職業にできたのだから、これほど幸せなことはない。ただその一方で、サッカーを仕事にしたことで、サッカーは遊びではなくなった。息抜きの時間はサッカー以外のことで過ごす必要もある。

 では、サッカー選手は日頃どのようなことをして仕事で溜まったストレスの解消や気分転換をしているのか? 

 まず、ポピュラーな趣味としてよく知られているのがカーコレクションだ。大金を稼ぐスポーツ選手の典型的な趣味であり、高級車のコレクターはサッカー界に多い。



サッカー界有数のカーマニアとして知られるクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)

 サッカー界きってのセレブとして知られるデイビッド・ベッカムはその典型だ。現役時代からポルシェ911、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、ジャガー、シボレー、アストンマーチンなど、自宅"ベッキンガム宮殿"の巨大なガレージに数十台の高級車をズラリと並べていたのは有名な話だ。

 現役選手で有名なのは、やはりユベントスのクリスティアーノ・ロナウドだろう。マンチェスター・ユナイテッド時代には愛車のフェラーリを大破させる事故を起こしたこともあったが、1台10億円以上するブガッティを筆頭に、現在は所有台数がわからないほどのカーマニアとして知られている。

 アーセナルのピエール=エメリク・オーバメヤンは、スピードスターらしくスーパーカーを多く所有する。限定生産のコレクターアイテムとして有名なフェラーリ社の「LA FERRARI」を筆頭に、2台のランボルギーニ、ポルシェ、レンジ・ローバーなど、その総額は約4億5000万円ともいわれる。その他、レアル・マドリードのカリム・ベンゼマ、ミランのズラタン・イブラヒモビッチ、意外なところでは韓国代表ソン・フンミンもサッカー界屈指のカーマニアとされている。

 稼いだお金を競走馬に投資し、馬主になった選手もいる。サッカー界屈指の名馬主とされる元イングランド代表のマイケル・オーウェンは、元馬主だった父親の影響で18歳の時に競走馬を初めて購入。現在は自身の厩舎に多くの競走馬を保有する。他にもウェイン・ルーニー、ライアン・ギグス、ガリー・ネヴィル、ポール・スコールズら元プレミアリーグの選手には馬主が多い。

 最近では2年前にフランス代表としてW杯を制したばかりのアントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ)が保有する競走馬「Tornibush」がレースで4連勝を飾ったことが話題となった。少年時代から大の馬好きというチリ代表アルトゥーロ・ビダル(インテル)も、地元のチリでこれまで百数十頭にもおよぶ競走馬を保有し、数々のレースで勝利を収めている。

 投資という意味では、ワインに情熱を傾けるケースもある。日本のサッカーファンにも有名なのはヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタの所有するワイナリーだろう。現在ユベントスの指揮を執るアンドレア・ピルロも、現役時代の趣味が高じて引退後に自身のワインブランドを展開。日本でも購入できるというイタリア産オーガニック・ワインは、職人肌のピルロらしい深い味わいが評判だ。

 ちなみにワイン王国フランスでは、古くからサッカー監督がワイナリーを所有するケースが多く、ジャン・ティガナ、アーセン・ベンゲル、あるいはフィリップ・トルシエなどがオーナーとして知られている。

 庶民的な趣味としては、日本のアニメが大人気だ。その筆頭作品は長きにわたって世界中のサッカー少年を夢中にさせる『キャプテン翼』で、その知名度と影響力は絶大。特にイタリアでは多くのアニメオタクが存在し、ファビオ・カンナバーロ、フィリッポ・インザーギ、アルベルト・ジラルディーノらが熱烈な『キャプテン翼』ファンとして知られ、現役選手ではアルゼンチンのアレハンドロ・ゴメス(アタランタ)が右の脛に大空翼のタトゥーを入れている。

 『ドラゴンボール』や『ワンピース』なども世界中のサッカー選手からも愛される人気アニメで、いかに日本のアニメ文化がワールドワイドであるかがわかる。

 また、最近は息抜きの時間をテレビゲームやオンラインゲームで過ごす選手も急増中だ。

 現役では、チーロ・インモービレ(ラツィオ)、アレッサンドロ・フロレンツィ(パリ・サンジェルマン)、メスト・エジル(アーセナル)、マルコ・ロイス(ドルトムント)、イブラヒモビッチなど、例を挙げればきりがない。著名ゲーマーとしてはリオネル・メッシ(バルセロナ)やネイマール(パリ・サンジェルマン)も名を連ねるほど、サッカー界に浸透している。

 特にコロナ禍のなかではサッカー選手がeスポーツのオンライン対戦をしたことが話題になるなど、今後もゲーム人気が衰えることはなさそうだ。

 趣味ではないが、サッカー以外の時間を学業に費やすアカデミックなタイプの選手も意外と多い。

 去年の8月に現役を引退して監督業に専念することになった元ベルギー代表ヴァンサン・コンパニが、マンチェスター・シティ時代、英国の名門アライアンス・マンチェスター・ビジネス・スクールを卒業し、経営学修士(MBA)を取得したことは有名だ。

 また、ポーランド代表のロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)は、サッカーと学業を両立させて2007年にワルシャワ体育大学に入学。その後はプロサッカーに専念したことで休学を余儀なくされたが、2017年に無事卒業した。

 現役中にイタリアの名門トリノ大学を卒業し、経済学と商学の学士号を取得しているジョルジョ・キエッリーニ(ユベントス)、マドリード工科大学でジャーナリズムを専攻し、カミーロ・ホセ・セラ大学ではスポーツ科学とマーケティングの学位を取得したフアン・マタ(マンチェスター・ユナイテッド)......。2018年に現役を退いた元ロシア代表のアンドレイ・アルシャビンは、地元サンクトペテルブルクの大学でファッションデザインの学位を取得し、卒業後は自身のブランドを立ち上げて女性服やスポーツウェアなどを展開している。

 サッカー選手の趣味は多岐にわたり、息抜きの方法も人それぞれ。サッカー以外のオフの時間をいかにして有効に過ごすかが、ハイパフォーマンスの持続につながっているのかもしれない。